著者
桜井 陽二
出版者
明治大学政治経済研究所
雑誌
政経論叢 (ISSN:03873285)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.11-48, 1971-12

戦後、フランス語に新たに加えられた言葉に、ゴーリズムGaullismeがある。これは、文字通りに訳せば、「ドゴール主義」ということになるであろうが、その意味内容は、これまでのところ、必ずしも明確にされている訳ではない。試みにGrand Larousseを繙いてみても、『ゴーリスム、男性名詞、ドゴール将軍の主張する思想」としか書かれていない。このように、ゴーリズムという語が単にドゴールの思想だけを指すのであれば、別にさしたる困難はないだろう。しかし、それが、ドゴールの思想のみならず、一九四〇年の「自由フランス」から一九六九年のドゴール退陣に至るまでに現われた、ドゴール派の運動、制度、政策、支持層等の多面にわたる政治現象の根底に横たわる、本質的なるもの、ないし原理的なるものを指すものとするならば、それを把握することは、なかなか容易なことではない。
著者
桜井 陽二
出版者
明治大学政治経済学部
雑誌
政経フォーラム
巻号頁・発行日
no.1, pp.90-92, 1993-03-31

外池力君が、このたび、われわれ政治経済学部の専任講師として、スタッフに加わることになったことは、誠によろこばしく、政経学部、ひいては明治大学の若返りと活性化のためにも、期待がふくらむ思いです。外池君は、東京外国語大学ロシヤ語科の出身で、明治大学では養成することのできない本格派のロシア屋であり、明治大学の学問の多様化と豊かさに寄与してくれるものと思います。時は今、冷戦構造の崩壊によって、一国の国際関係も大きく流動化し、変動する兆しが見えてきていますが、学問の世界でも、今や欧米偏重の在来の構造は古くさくなってきています。私は常日頃、学問は「全方位」でなければならないと考えており、日本が今や世界中の「隣人」たちとつきあわないことはできない状況に置かれている以上、世界中の「隣人」たちのことを良く知り、その結果を学生たちに、社会に、そして世界に伝えてゆく仕事の前衛に立たねばならないと考えています。
著者
桜井 陽二
出版者
明治大学政治経済研究所
雑誌
政経論叢 (ISSN:03873285)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.203-246, 1974-03

一九五八年、ドゴールの政権復帰が成り、彼の政府の下で新憲法が起草されることになったとき、新憲法下の大統領の政策決定過程における役割が前共和制下のそれとは全く異なるものになるだろうということは誰の目にも明らかであった。なぜなら、ドゴールは、すでに一九四六年のバイユーでの演説以来、著作、演説、記者会見などの機会を通じて、伝統的共和制の欠陥を攻撃し、その対案を訴えていたからである。ドゴールが一九四七年、自らの構想に基づく国家機構改革を第一目標に掲げて開始した「フランス国民連合RPF」運動は、結局失敗した。しかし、五八年憲法では、あたかも、第五共和制の本質、すなわち、国民と「救国の英雄」の同盟を象徴するかのように国民主権の宣言(第一章)の直後に大統領に関する規定(第二章)が置かれ、前共和制憲法とは全く逆に、大統領は諸制度の筆頭に据えられることになった。
著者
桜井 陽二
出版者
明治大学政治経済研究所
雑誌
政経論叢 (ISSN:03873285)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.71-99, 1971-10

「体制」とは、なによりもまず、ひとつの「スタイル」である。このことは、他のいかなる体制にもまして、フランスの第五共和制について良く云いうるところであろう。とくに、一九五八年の第五共和制の成立から一九六九年四月のドゴール退陣に至る十一年間のフランスの政治は、「ドゴールの共和政」と呼ばれるように、ドゴールのパーソナリティーおよび彼の政治スタイルと切離しては考えられない。このドゴール体制は、いわゆる「イモビリスム」を特徴とした第四共和制のスタイルとその政策を真向から拒否した「革命」から生まれたものであり、一言で云えば、いわゆるドゴールの「大構想」にあわせて編成された体制であったと云ってもよい。