著者
村林 直樹 上野 慶介 梅垣 敦紀 西村 拓士
出版者
山形大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

主偏極CM型アーベル多様体がある代数曲線のヤコビ多様体となるための必要十分条件を対応するCM体の言葉で書き下すことが本研究のテーマである。そのために、京都大学の塩田氏により証明されたKP方程式に関するNovikov予想に着目し、KP方程式と虚数乗法論の関連を探ろうというのがアイデアである。本年度の目標は、引き続きコンピューターを使ってCM体からつくられるデータ関数のフーリエ係数を高い次数まで計算し、この計算結果とこれまで文献調査を通じて学んだ4つの事:「(1)代数曲線とKP方程式の関係を論じたKricheverの理論;(2)微分方程式の知識を駆使しNovikov予想を解決した塩田の理論;(3)塩田の理論から微分方程式に関するテクニックを極力排除し幾何的な証明を試みたArbarello, Concini, Mariniの理論;(4)KP方程式の解全体が普遍グラスマン多様体を形成するという佐藤理論」を用いて、KP方程式と虚数乗法論の関連、特にKP方程式とアーベル多様体の自己準同形写像との関連に関して深く考察する事であった。この目標についてはあまり著しい結果が得られなかったが、この考察の課程で新たな二つの研究課題:「(A)CM型楕円曲線のmodularityの定義体とその応用;(B)QM型アーベル曲面の場合のclass polynomial」が見つかった。(A)に関しては、「代数体上定義されたCM型楕円曲線はある等分点の座標を添加した体まで係数拡大すると、そこ上必ずmodularとなる」という結果が得られ、現在、それをまとめた論文:「Modularity of CM elliptic curves over division fields」を、Journal of Number Theoryに投稿中である。(B)に関しては、このテーマで平成18年度の基盤研究(C)(一般)に申請中である。
著者
橋本 喜一朗 梅垣 敦紀 小松 啓一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の課題は,「ガロアの逆問題に対する構成的方法」の立場からアーベル方程式を構成する一般的メカニズムを得ることを目標とするものであるが,特にガロア群が巡回群である場合に焦点を絞って研究を進めた.2000-2002年度基盤C(一般)「アーベル方程式の構成とガウス和の数論研究」において,申請者は学院生(修士)星明考君と共同研究で,ガウス周期の関係式の一部を幾何的に一般化し,多変数関数体上の巡回多項式族の構成を行った。本研究はその継続研究であり,ガウス周期の満たすある基本関係式を公理として関数体上で類似物を構成するという幾何的一般化を行ない,これによりガウス周期の既約多項式から巡回多項式族が得られるしくみを明らかにし,パラメータの個数も複数個に増やすことに成功した.すなわちガウス周期y_0,..,y_{e-l}をe個の独立な不定元とみなすと,基本関係式から関数体L=Q(y_0,..,y_(e-l))に成分を持つ行列Cが得られ,これらを全て添加した体K=Q(c_{i, j})は巡回置換によるLの固定体となる.これよりL/Kはe次巡回拡大であり,Cの特性多項式の根体となる.このアイデアに基づいて小さなeに対してパラメータ付きe次巡回多項式族が得られた.特に,この構成から得られた巡回多項式族のパラメータを特殊化し,e=7おいて定数項がn^7である簡単な表示をもつパラメータの族を得た.この結果はLehmerプロジェクトとして知られている研究の一般化を与えるもので,総実代数体の巡回拡大の単数の構成問題などに重要な研究方法を提供するものである.本研究の成果は2002年度春の日本数学会及び早稲田大学整数論シンポジウムを含む幾つかの研究集会で講演発表された.この研究を更に高次の場合に進展させることは重要な課題である.
著者
角皆 宏 都築 正男 梅垣 敦紀 森山 知則 陸名 雄一 星 明考 小松 亨
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ガロア理論とは一言で言えば数の対称性の理論であり、中でも構成的ガロア理論は、狙った対称性を具体的明示的に作ることを主眼とする研究である。特に本研究課題では、非可換な対称性(ガロア群)を持つ場合を取り扱い、幾何的な対称性を利用する手法を中心として、主に5次・6次の多項式に関わる場合に対し、様々な特色ある対称性を持つ多項式を具体的に構成した。得られた多項式が簡潔な表示を持つことも意味があり、それにより幾らかの数論的性質も明らかにすることが出来た。