著者
金沢 孝文 梅垣 高士
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.2, pp.335-338, 1972-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3

乾式合成したβ-リン酸カルシウム,フッ素アパタイト,β-ピロリン酸カルシウム,レナニットおよび湿式合成した水酸アパタイト,リン酸-水素カルシウム二水塩の計6種のリン酸カルシウム塩類を,塩酸,クエン酸液,中性クエン酸塩溶液に投入して溶解熱の測定を行った。β-リン酸カルシウムは同じ程度のpHの塩酸およびクエン酸液に対する溶解発熱量が等しく,水素イオン濃度と溶解熱とは密接な関係がある考えられる。しかし,カルシウム塩類のクエン酸液への溶解のさいには,溶触にいちじるしい特徴が認められず,クエン酸基とカルシウムとの錯形式を熱化学的に検知し論議することが困難であることがわかった。β-リン酸カルシウムの溶解量を変化させても,2%クエン酸液と10%クエン酸液でカルシウム塩溶解量が小さい場合とでは,モル溶解熱がほぼ一定で,発熱量はβ-リン酸カルシウムの溶解重量に比例するとみなせる。0.5%塩酸への溶解のさいの発熱量は,乾式合成試料では,β-リン酸カルシウムがもっとも大きく,ついでレナニット,フッ素アパタイト,β-ピロリン酸カルシウムの順となった。
著者
梅垣 高士 戸田 善朝 鈴木 喬 門間 英毅 安江 任 荒井 康夫
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

リン酸塩類の水和およびその生成物について、研究・調査を行い、下記のような成果を得た。1)ポルトランドセメントや石膏から得られる水和硬化体は、多孔体となるため、曲げ強度が充分でない。リン酸カルシウム類の水和硬化体も同じ欠点を持っているので、硬化体の密度を増加させることと水和生成物粒子同士の結合強度を増加させる目的で、水和反応時に水溶性の高分子化合物を添加して、硬化体の調製を行っている。現在のところ、硬化体の密度の増加は、十分でないものの、曲げ強度は、改善された。(梅垣高士,山下仁大)2)アパタイト水和硬化体を調製する際に、出発物質として、非晶質リン酸カルシウムの利用を試み、また、有機酸を添加してその効果をしらべた。(安江任、荒井康夫)3)骨生理学上重要な各種カチオンを共存させて水酸アパタイトを電析させて、その生成結晶について、詳細な検討を行った。(門間英毅)4)水酸アパタイトを無機イオン交換体への応用についての検討を行った。その結果、鉛、カドウミウムなどの有害イオンを除去できる可能性を認めた。(鈴木喬)5)コバルト、ニッケルなどのリン酸塩類水和物を合成し、顔料として応用の検討を行い、合成法は、簡便で、従来の顔料と比較しても遜色ないものが得られることを認めた。(戸田善朝)