著者
西脇 英樹 浅井 毅 曽和 融生 梅山 馨
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.984-989, 1989

レーザー組織血流計を用いた胃粘膜血流量測定について検討した.肝硬変症例13例を対照として,レーザー組織血流計ALF2100(Advance社,東京)を用いて内視鏡下に胃体部,前庭部粘膜血流量,血液量を測定する一方,同症例に水素ガスクリアランス法電解式で測定し両者の比較を行った.胃前庭部,体部各7カ所で測定した血流量では変動係数CV0.03±0.01,0.16±0.04を示し,ほぼ再現性のある測定値が得られた.また,平均血流量は前庭部18±6ml/min/100g,胃体部23±8ml/min/100gと前庭部に比し体部で高値の傾向が認められた.一方,血液量の攀動係数では前庭部0.09±0.05,胃体部0.08±0.05とともに再現性のある値が示された.レーザー組織血流計と電解式組織血流計の測定値の検討では,電解式に比ベレーザー組織血流計では明らかに低値を示したが,両者に有意の相関は認められず,共にml/min/100g単位の測定値であるが測定原理の違いや穿刺法と接触法による差も考えられた. 以上,レーザー組織血流計は瞬時に連続測定が可能であり,胃粘膜血流量測定に有用な点も認められるが,他の方法で得られた粘膜血流量との比較検討など今後さらに,検討すべき点も考慮された.
著者
芳野 裕明 山下 隆史 田中 俊司 金 義哲 藤本 泰久 宋 星胎 紙野 建人 梅山 馨
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1471-1476, 1985

胆嚢癌は一般に進行癌でみつかることも多く,予後不良症例が多いことから,早期診断の必要性が強調されている.最近,超音波検査が有用であった早期胆嚢癌2例を経験したので報告する.<br> 症例1は, 76歳の女性, 10年前より胆石を指摘されており,主訴は右季肋部痛.超音波検査で,肝内部エコーより軽度エコーレベルの低い腫瘤が,胆嚢底部で不整形に突出し,頸部では内腔に充満したように認められ,悪性腫瘍が疑われた. ERCPにて,胆管膵管合流異常は認めなかった.摘出標本では,胆嚢頸部から底部に散在性に多発した乳頭状腫瘤を認め,混合石10個が存在した.病理組織学的には,高分化型腺癌で一部筋層まで浸潤を認めたが,リンパ節転移はなかった.<br> 症例2は, 35歳の男性,主訴は右季肋部痛.超音波検査で,胆嚢内によく動く結石数個と頸部に体位変換にて動かない2×1.5cm大のやや不整形の腫瘤エコーを認めた.腫瘤の内部エコーは,比較的均一であるがややhyperechoicで, acoustic shadowは認めなかった.腫瘤の大きさや,不整形であることより,腫瘍を疑った. DICでは,胆嚢内に結石と頸部に不明瞭ながら隆起性病変を認めるも,質的診断はなしえなかった.摘出標本では,頸部に乳頭型の腫瘤と混合石1個,ビ系石5個を認め,病理組織学的には , papillotubular adenocarcinomaで,粘膜内に限局していた.リンパ節転移も認めなかった.<br> 早期胆嚢癌の定義はいまだ一定の見解はないが,胆嚢の解剖学的特性や予後より,筋層までにとどまるものを早期癌としている報告が多い.今回の2症例も,早期胆嚢癌と考えられたので,診断ことに超音波検査の有用性,ならびに治療についても若干の文献的考察を加え報告した.
著者
前田 清 吉川 和彦 寺尾 征史 山本 祐夫 梅山 馨
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.1525-1531, 1990
被引用文献数
12

大阪社会医療センターにて過去5年間に経験した10例の赤痢アメーバ症の臨床的検討を行つた. 性別は全例男性で, 平均年齢は41歳であつた. 既往歴では海外渡航歴は全例認められず, 7例 (70%)に男性同性愛好者を認めた. 各種血清学的検査ではアメーバ抗体 (ゲル内沈降反応) 100% (6/6), 梅毒反応 (TPHA法) 60% (6/10) の陽性率を呈したが, AIDS抗体は0% (0/3) であつた. 赤痢アメーバの検出率は便中で70% (7/10), 肝膿瘍膿汁中で50% (2/4), 直腸生検粘膜で25% (1/4) であつた.<br>以上, 本症の診断には血清アメーバ抗体の測定が有用で, また, 感染経路としてホモ行為による感染が疑われた.