著者
梅影 創 清水 厚志
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.68-74, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
20

疫学研究を進めていくうえで,バイオバンクとコホート研究の質の向上および参加者(検体)数の拡充と,大規模な情報から目的の疾患に関連する要因を見つけだすための遺伝統計学手法の開発は車の両輪の関係にある。本稿では,疫学研究を推進していくためのバイオバンクとコホート研究の現状に触れ,さらに世界最大規模の出生三世代コホートなどを運用する東北メディカル・メガバンク計画の取り組みを紹介する。次いで,疾患関連解析の最大の難問とされる「失われた遺伝率」の問題について触れ,この問題の克服をめざした手法の一つとして,いわて東北メディカル・メガバンク機構で開発したiwate polygenic model(iPGM)を利用した脳梗塞発症リスク予測について述べる。最後に,コホート研究による精神疾患リスク予測に向けたアプローチについて触れる。
著者
菊池 洋 田中 照通 梅影 創
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

遺伝子発現が関連する難病の治療薬として人工的な小分子RNAなどが期待されている。しかし、現在のRNA合成法は、手間やコストがかかり、創薬という点で問題がある。本研究は、意図したとおりの配列をもつ人工RNAを微生物により生産させることを目指し、圧倒的な低コストでの高機能RNA医薬の製造法を開発しようとするものである。本研究では、自然界で自身のRNAやDNAを培地に放出する性質をもつ海洋性光合成細菌、Rhodovulum sulfidophilumを操作し、機能をもつ人工RNAアプタマーをこの菌の培地中に生産させることに世界で初めて成功した。
著者
菊池 洋 梅影 創
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ランダム配列のRNA集団の中から生体分子に特異的に結合できるRNA分子を選択増幅し、得ることができ、この分子を丁度抗体のように利用できる。この分子をRNAアプタマーという。RNAアプタマーを開発するためには、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法を中心とする人工進化系が採用されるのが一般的である。本手法は、一度の操作で複数のRNAアプタマーを取得しようとするものである。これまでに、ヒト前立腺癌細胞の可溶性タンパク質を標的としたSELEX法を実施した結果、昨年度問題となった非特異的RNA結合タンパク質の存在によるSELEXの進行阻害の問題が本年度はある程度解決され、(1)SELEXのターゲットが複数存在しても人工進化させることが可能であること、(2)特異的な結合能を有するRNAアプタマーの選択が可能であることが示された。このような、網羅的なアプタマー創製に関する報告はこれまでなされておらず、当研究室オリジナルの手法であると自負している。特許出願を念頭に実験系の改良を行っているところである。また、本年度、網羅的に得られるRNAアプタマーのターゲットタンパク質を網羅的に同定するために、網羅的ノースウエスタン法を考案した。この手法は、網羅的なタンパク質ターゲットサンプルをメンブレン状に固定化し、蛍光ラベルした網羅的RNAアプタマーを結合させ、イメージアナライザーによって検出しようとするものである。この手法は予備的な段階であるので、まだ改良の余地が残されているが、特異的なアプタマーの結合が観察されており、メンブレンからRNAアプタマーを回収し、RT-PCRによって増幅可能であることも確認している。