著者
青江 誠一郎 野崎 聡美 菊池 洋介 福留 真一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.20-25, 2018 (Released:2018-03-12)
参考文献数
21

【目的】小麦全粒粉パン摂取後の血糖値上昇が,小麦粉パン摂取後と比較して抑制されるか検証する。【方法】空腹時の血糖値が正常な成人19名(男性10名,女性9名)を試験対象とした。糖質 50 gを含む小麦全粒粉パン(試験食)または小麦粉パン(対照食)を摂取し,摂取前および摂取後15分,30分,45分,60分,90分,120分の血糖値を測定した。試験はプラセボ対照無作為化単盲検クロスオーバー試験とし,主要評価項目はGlycemic Index(GI値),副次評価項目を各時点の血糖上昇値,最大血糖上昇値,血糖値上昇曲線下面積(IAUC)とした。【結果】グルコース溶液を基準とした場合,小麦全粒粉パンのGI値は65.2,小麦粉パンのGI値は73.0であり,小麦全粒粉パンは小麦粉パンよりもGI値が有意に低かった。小麦全粒粉パンを摂取した場合,小麦粉パンを摂取した場合と比較して最大血糖上昇値が有意に低く,IAUCが有意に小さかった。【結論】小麦全粒粉パンの摂取は,小麦粉パンの摂取と比較して健常者の食後血糖値の上昇を抑制する効果が確認された。
著者
小原 仁 冨手 保果 中村 茂祐 矢田 充男 長谷川 祐子 大志田 和子 網谷 美千枝 遠藤 孝 菊池 洋子 中村 幸夫 土肥 守
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.342-346, 2007-05-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
25

日本におけるNutrition Support Team (NST)活動は主に急性期病院で行われている. NSTの効果に対する報告は, 急性期病院における報告が多く, 療養型病院における報告は少ない. 本研究は, 療養型病院におけるNSTが臨床面および経営面に及ぼす効果を明らかにするめに, 独立行政法人国立病院機構釜石病院リハビリテーション科に入院中の慢性期リハビリテーション患者を対象として, NST設立前後における栄養状態, 誤嚥性肺炎の発生, 褥瘡の発生および治癒, 医薬品消費額および特別食加算による診療報酬額を評価した.NST稼働1年後の血清アルブミンは, 開始時に比べて有意に高値を示した. 低アルブミン血症および低体重の患者の割合はNST活動によって減少した. 同様に, 誤嚥性肺炎の発生日数も減少した. NST活動によって褥瘡の発生率は減少し, さらには, 褥瘡の治癒は促進された. 医薬品消費額については, NST開始1年後は開始時に比べて, 年間1人あたり1万円の減少となった. 特別食加算による診療報酬額は, NST開始1年後は開始時に比べて, 年間200万円の増加となった.以上の結果より, NST活動は臨床成績を向上させ, 病院経営における収支を改善させたことから, 療養型病院においてもNSTが有効であることが示唆された.
著者
田上 恵子 内田 滋夫 菊池 洋好 小暮 則和
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.405-411, 2018-07-05 (Released:2018-08-08)
参考文献数
20
被引用文献数
5

希土類元素の工業利用の増加に伴い,その環境負荷が増える可能性がある.将来,人への希土類元素の移行を推定するためには,土壌から農作物への移行係数(TF=可食部中濃度[mg kg−1-dry]/土壌中濃度[mg kg−1-dry])を求めておくことが有用である.本研究では特に水田土壌から玄米への移行に着目し,希土類元素としてLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,LuについてTFを求めた.日本全国から98地点の水田土壌-玄米試料を収集し,土壌,玄米及び糠の元素濃度測定を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で行った.その結果,土壌から玄米への希土類元素のTFの幾何平均値の範囲は(0.42〜6.9) × 10−4であり大きな差は見られなかった.玄米中においては,軽希土類元素の方が糠に多く分布する傾向があることがわかった.
著者
菊池 洋一
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会誌 (ISSN:00214787)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.91-98, 1976-02-05 (Released:2011-08-05)
参考文献数
4
著者
寺川 貴樹 石井 慶造 古本 祥三 菊池 洋平 松山 成男 酒見 泰寛 山崎 浩道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

陽子線治療と腫瘍血流遮断剤を併用する新規治療法の開発を目的とし,マウス固形腫瘍による治療実験を実施した.本研究の高精度照射のために、マイクロパターンガス検出器による新規ビームモニターの開発に成功し治療実験に用いた。治療効果を[18F]FDGと[18F]FMISOを用いた超高分解能PETと、腫瘍増殖遅延測定から評価した。その結果、単回併用治療において、腫瘍増殖遅延に相加的効果があるだけでなく、腫瘍中心部の広範囲に細胞死が誘発されたが、腫瘍の辺縁部に低酸素状態を含む腫瘍細胞の生存領域が認められた。よって、単回治療後の2回目の併用治療が腫瘍細胞を完全に死滅されるために必要であることが示唆された。
著者
菊池 洋 田中 照通 梅影 創
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

遺伝子発現が関連する難病の治療薬として人工的な小分子RNAなどが期待されている。しかし、現在のRNA合成法は、手間やコストがかかり、創薬という点で問題がある。本研究は、意図したとおりの配列をもつ人工RNAを微生物により生産させることを目指し、圧倒的な低コストでの高機能RNA医薬の製造法を開発しようとするものである。本研究では、自然界で自身のRNAやDNAを培地に放出する性質をもつ海洋性光合成細菌、Rhodovulum sulfidophilumを操作し、機能をもつ人工RNAアプタマーをこの菌の培地中に生産させることに世界で初めて成功した。
著者
菊池 洋 梅影 創
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ランダム配列のRNA集団の中から生体分子に特異的に結合できるRNA分子を選択増幅し、得ることができ、この分子を丁度抗体のように利用できる。この分子をRNAアプタマーという。RNAアプタマーを開発するためには、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法を中心とする人工進化系が採用されるのが一般的である。本手法は、一度の操作で複数のRNAアプタマーを取得しようとするものである。これまでに、ヒト前立腺癌細胞の可溶性タンパク質を標的としたSELEX法を実施した結果、昨年度問題となった非特異的RNA結合タンパク質の存在によるSELEXの進行阻害の問題が本年度はある程度解決され、(1)SELEXのターゲットが複数存在しても人工進化させることが可能であること、(2)特異的な結合能を有するRNAアプタマーの選択が可能であることが示された。このような、網羅的なアプタマー創製に関する報告はこれまでなされておらず、当研究室オリジナルの手法であると自負している。特許出願を念頭に実験系の改良を行っているところである。また、本年度、網羅的に得られるRNAアプタマーのターゲットタンパク質を網羅的に同定するために、網羅的ノースウエスタン法を考案した。この手法は、網羅的なタンパク質ターゲットサンプルをメンブレン状に固定化し、蛍光ラベルした網羅的RNAアプタマーを結合させ、イメージアナライザーによって検出しようとするものである。この手法は予備的な段階であるので、まだ改良の余地が残されているが、特異的なアプタマーの結合が観察されており、メンブレンからRNAアプタマーを回収し、RT-PCRによって増幅可能であることも確認している。