著者
梅澤 昭子
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.37-46, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
1

腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)は標準的な手術になったが,一方で,重大な合併症は一定の確率で起こり続けている.Lap-Cによる血管胆管損傷は最も避けるべき合併症のひとつであり,その予後は不良である.胆管損傷を回避するための解剖学的事項すなわちランドマークを理解し,危険回避手技を励行することが大切で,特にCritical View of Safety(CVS)の成立は誤認損傷の回避に有用である.また,急性胆嚢炎などの炎症性変化によりCalotの三角が線維化瘢痕化して剥離が困難になり,CVSを成立させることが不可能な,いわゆるdifficult gallbladderにおいては,胆嚢亜全摘術に代表される危険回避手術,特にfenestrationを積極的に選択すべきである.ランドマークを理解し危険回避手技と回避手術を自在に活用することが,安全なLap-Cの完遂につながる.
著者
関 洋介 笠間 和典 中神 朋子 岩本 安彦 清水 英治 吉川 絵梨 中里 哲也 園田 和子 根岸 由香 梅澤 昭子 黒川 良望
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.282-287, 2011 (Released:2011-05-11)
参考文献数
18

症例は41歳,男性.体重132 kg, BMI 52.2 kg/m2. 2型糖尿病,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症,睡眠時無呼吸症候群を有し,肥満に対し数回の入院を含め18年にわたる内科的治療を行うも奏効しなかった.糖尿病細小血管症の進行,肥満随伴疾患の増悪を認めたため外科的治療目的で当院初診し,腹腔鏡下スリーブバイパス術を施行された.術後より経口血糖降下剤を中止したが,HbA1cは低下,5%台(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53: 450, 2010))で経過.術後6ヶ月目に施行した75 g経口ブドウ糖負荷試験では正常型を示した.術前認められた尿蛋白は術後6ヶ月目以降陰性化し,術後1年目には単純網膜症のグレードが低下,肥満随伴疾患も改善,術後14ヶ月目の体重は63.5 kg, BMI 25.8 kg/m2である.内科治療抵抗性高度肥満2型糖尿病において外科治療による減量や代謝異常改善の短期的効果は極めて良好であった.今後,外科治療の長期的効果や安全性を注意深く観察する予定である.