著者
大森 純子 梅田 麻希 麻原 きよみ 井口 理 蔭山 正子 小西 美香子 渡井 いずみ 田宮 菜奈子 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.121-128, 2019-03-15 (Released:2019-03-26)
参考文献数
48
被引用文献数
1

目的 日本公衆衛生学会に設置された「公衆衛生看護のあり方に関する委員会(第6期)」では,「実践で活用できる」コミュニティ・アセスメントの新しいモデルを考案した。本モデルを公衆衛生活動に適用可能な「活動展開技法モデル」(以下,モデル)と位置づけることにより,保健師が経験的に蓄積してきた実践手法の理論化とその手法の共有を試みた。方法 平成26年10月から平成29年9月の3年間に7回の委員会を開催し,以下の4つのステップに沿ってモデルの検討と検証を行った。ステップ1では,コミュニティ・アセスメントの定義や手法についてブレーンストーミングを行いながら,文献検討の枠組みを検討した。ステップ2の文献検討では,コミュニティ・アセスメントに関する既存の理論や知見,実践に関する情報を収集・整理した。次のステップでは,これらの情報と委員会メンバーの実践経験を照らし合わせながら,モデルを作成した。最後のステップでは,作成したモデルの汎用性を行政および産業における保健師に参照して,本モデルの公衆衛生活動への適用について検証した。活動内容 本委員会では,コミュニティ・アセスメントを「QOLの向上をめざすすべての活動場面においてPDCAサイクルを駆動するために用いる実践科学の展開技法」と定義し,包括的または戦略的な意図により,2つに類型化した。作成したモデルでは,コミュニティ・アセスメントは,あらゆる公衆衛生活動のPDCAサイクルにおいて継続的かつ発展的に実施されていること,地域住民の「QOLの向上」を志向して行われていることを示した。また,アセスメントを行う者の経験的科学的直観と倫理的感受性がコミュニティ・アセスメントの質を左右する要因であることを示した。結論 本委員会が保健師の実践に沿って作成した活動展開技法モデル「コミュニティ・アセスメント」は,公衆衛生活動における事業や地区活動など多様な実践に適応できる可能性があることが示唆された。
著者
山村 奈津子 梅田 麻希
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.251-261, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
参考文献数
37

目的 平成30年7月豪雨災害に伴う被災市町村の要介護認定率の変化を推定するとともに,被災状況や地域特性と当該変化の関連を検討することを目的とした。方法 災害救助法を適用された108市町村を対象とし,2016年7月から2019年7月までの計37か月の月別要介護認定率のデータから,要介護認定率および軽度要介護率(要支援1~2),中度要介護認定率(要介護1~3),重度要介護認定率(要介護4~5)の災害後の変化を分割時系列分析により推定した。災害後の要介護認定率のトレンドの変化傾向と被災状況(住家被害棟数,死者・行方不明者数),地域特性(高齢化率,人口密度,課税対象所得,保健師1人当たり人口,介護保険施設定員数,病院病床数,診療所数,特定健診実施率,特定保健指導実施率)との関連を検討するため,多項ロジスティック回帰分析を行った。結果 要介護認定率および軽度要介護認定率は発災当月,災害後のトレンドの変化ともに有意な上昇が見られた。中度要介護認定率の災害後のトレンドの変化は有意に下降していた。重度要介護認定率は災害当月のみ有意な上昇が見られたが,災害後のトレンドには有意な変化が見られなかった。中度要介護認定率のトレンドの下降変化は,高齢化率と負の関連,診療所数と正の関連が見られた。要介護認定率,軽度要介護認定率,重度要介護認定率については,被災状況,地域特性に関するいずれの変数とも有意な関連は見られなかった。結論 自立度が比較的高い軽度要介護高齢者において,災害により介護保険サービスの需要が高まる可能性が示唆された。
著者
梅田 麻希 藤田 さやか 那須 ダグバ潤子 陶 冶 竹村 匡正
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.135-149, 2021 (Released:2021-10-13)
参考文献数
22

目的  2018年6月に発生した大阪北部地震災害(震災)において、在留外国人(外国人)が直面した困難や支援ニーズを記述すること、その結果に基づき災害時に求められる外国人支援を円滑にするための具体的な方策を提示することを目的とした。方法  本研究は、半構造化面接により収集したデータを用いた質的記述的研究である。対象は、大阪府北部地震発生時に関西地方に居住していた在留外国人(9名)とその支援者(6名)である。逐語録に起こしたインタビューデータを読み、意味のまとまり毎にコードをつけて、発災時の困難や必要な支援に関する情報を抽出した。これらのコードに共通するカテゴリーから、さらに上位のテーマを抽出した。結果  在留外国人のインタビューからは、«経験した困難»«地震災害に対する準備性に影響を与える要因»«災害時情報ニーズ»の3テーマが抽出された。外国人と日本人との間には、地震経験など震災に対する準備性に影響を与える要因の違いが存在し、外国人が災害時に状況を理解したり、対処したりする際に困難を生じさせていた。また、災害情報に関するニーズが挙げあられ、ITを活用した情報提供が望まれていた。支援者のインタビューからは«実際に行った支援»«支援を行う際の困難や障壁»«求められる支援・対策»の3つのテーマが抽出された。支援者らは、直接的な情報提供や相談支援だけでなく、多機関間のコーディネートを担っていた。災害時に円滑に支援を行うためには、平常時の訓練や機関間協定が役に立つ事が示された。支援・対策の課題としては、効果的な情報伝達や日本人と外国人とのコミュニュケーションの促進、文化的多様性への対応などが挙げられた。これらの課題に取り組むためにも、日頃から当事者、支援者双方の災害に対する関心を高め、災害対応の体制を構築しておく必要があるとの認識が示された。結論  本研究の結果から、外国人は、震災が発生した際に、状況や対処方法の理解に関する困難に直面し、災害情報に関する支援ニーズを有することが明らかになった。外国人の支援ニーズに応えるためには、災害経験や文化の多様性を前提とした情報伝達やコミュニケーションを促進すること、多様な機関が円滑に連携するための体制を構築することなどが必要だと考えられる。
著者
梅田 麻希
出版者
東京大学医学系研究科健康科学・看護学専攻
巻号頁・発行日
2013-03-25

報告番号: ; 学位授与年月日: 2013-03-25 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(保健学) ; 学位記番号: ; 研究科・専攻: 医学系研究科健康科学・看護学専攻