著者
中川 義章 野口 雅滋 竹村 匡正 吉原 博幸
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.511-518, 2009-03-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

DPC調査提出用データを有効利用する形で新たに開発した経営分析システムを用いて、中核市中病院Aが診断群別包括制度 (DPC) となる前後の分析を行った。病院A (一般病床数535床) ではDPC参入にあたり、経営戦略として病床稼働率にこだわらず病床回転率の上昇を単純な目標として掲げた。その結果、2005年と2006年10月の単月比較で病床稼働率が86.9%から75.0%へ減少したが病床回転率が1.6から2.0となり、平均在院日数も18.8日から15.5日へと短縮された。結果として一人一日入院単価が50,540円から53,313円へと増加し、材料費が年間8.5%縮減出来た。単年度病院医業収支は約0.5億円の赤字から約2.2億円の黒字となった。今回この収益構造の変化ともいえる大幅な変化の分析を試みたところ、黒字化した主たる要因は「病床回転率の向上」が副次的にもたらした診療形態の変化であり、外来誘導化であったことが明確となった。
著者
岡本 和也 内山 俊郎 竹村 匡正 足立 貴行 粂 直人 黒田 知宏 内山 匡 吉原 博幸
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.40-47, 2011-02-10 (Released:2011-12-13)
参考文献数
30

A DPC code expresses a primary disease, a complication, and procedures, etc. In 2010, 1334 hospitals use DPC codes for calculations of medical fees. Since, in the hospitals, the medical fee of each case is calculated based on one DPC code, each case must be classified into one DPC code. However, the classification is difficult in some cases because patients sometimes have various conditions. Therefore, automatic DPC code selections using machine learning are being studied. Suzuki et al. evaluated automatic DPC code selections from discharge summaries using a vector space method. However, there are general machine learning methods except for the vector space method. Hence, we must evaluate other machine learning methods exhaustively for improvement of accuracy of automatic DPC code selections. Therefore, we evaluated automatic DPC code selections from discharge summaries using naïve Bayes method, SVM, concept base method, and another vector space method which is different from the vector space model used by Suzuki et al. We considered these machine learning methods as general ones. We also focus on characteristics of each machine learning methods on automatic DPC code selections and we utilize a method which combines some machine learning methods. First, the combining method estimates confidences of the machine learning methods bases on classification scores that the machine learning methods regard as classification evidence. Next, the combining method adopts the method whose confidence is highest. We compared accuracy of the methods using discharge summaries created in 2008 fiscal year in Kyoto University Hospital. As a result, SVM classified 72.2% of the cases into correct DPC codes though the vector space model utilized by Suzuki et al. classified 64.8% into correct DPC codes. Moreover the combining method classified 76.1% into correct DPC codes. In conclusion, we achieved significant improvement.
著者
廣瀬 昌博 花田 英輔 竹村 匡正 吉原 博幸 今中 雄一 岡本 和也 中林 愛恵 本田 順一 江上 廣一 津田 佳彦
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

各医療機関には膨大なインシデントレポートデータが蓄積されているが、インシデントによって発生するあらたな医療費、とくにその多くを占める転倒・転落事例とともに一般事例についても追加的医療費を算出するとともに疫学的側面を明らかにすることができた。また、機械学習法を繰り返すことで、インシデントレポートの自動分類や最適に分類される精緻化が可能であることが分かった。
著者
梅田 麻希 藤田 さやか 那須 ダグバ潤子 陶 冶 竹村 匡正
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.135-149, 2021 (Released:2021-10-13)
参考文献数
22

目的  2018年6月に発生した大阪北部地震災害(震災)において、在留外国人(外国人)が直面した困難や支援ニーズを記述すること、その結果に基づき災害時に求められる外国人支援を円滑にするための具体的な方策を提示することを目的とした。方法  本研究は、半構造化面接により収集したデータを用いた質的記述的研究である。対象は、大阪府北部地震発生時に関西地方に居住していた在留外国人(9名)とその支援者(6名)である。逐語録に起こしたインタビューデータを読み、意味のまとまり毎にコードをつけて、発災時の困難や必要な支援に関する情報を抽出した。これらのコードに共通するカテゴリーから、さらに上位のテーマを抽出した。結果  在留外国人のインタビューからは、«経験した困難»«地震災害に対する準備性に影響を与える要因»«災害時情報ニーズ»の3テーマが抽出された。外国人と日本人との間には、地震経験など震災に対する準備性に影響を与える要因の違いが存在し、外国人が災害時に状況を理解したり、対処したりする際に困難を生じさせていた。また、災害情報に関するニーズが挙げあられ、ITを活用した情報提供が望まれていた。支援者のインタビューからは«実際に行った支援»«支援を行う際の困難や障壁»«求められる支援・対策»の3つのテーマが抽出された。支援者らは、直接的な情報提供や相談支援だけでなく、多機関間のコーディネートを担っていた。災害時に円滑に支援を行うためには、平常時の訓練や機関間協定が役に立つ事が示された。支援・対策の課題としては、効果的な情報伝達や日本人と外国人とのコミュニュケーションの促進、文化的多様性への対応などが挙げられた。これらの課題に取り組むためにも、日頃から当事者、支援者双方の災害に対する関心を高め、災害対応の体制を構築しておく必要があるとの認識が示された。結論  本研究の結果から、外国人は、震災が発生した際に、状況や対処方法の理解に関する困難に直面し、災害情報に関する支援ニーズを有することが明らかになった。外国人の支援ニーズに応えるためには、災害経験や文化の多様性を前提とした情報伝達やコミュニケーションを促進すること、多様な機関が円滑に連携するための体制を構築することなどが必要だと考えられる。
著者
黒田 知宏 佐藤 純三 矢崎 晴俊 竹村 匡正 長瀬 啓介 加藤 康之 吉原 博幸
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.157-164, 2010

電子カルテ上で定型データの入力を行う際のツールとして,テンプレート機能が広く利用されている.テンプレート上で入力された情報をカラムに切り分けしてデータベースに蓄積すれば,電子カルテ利用の向上と臨床研究の効率改善に寄与することが期待される.<br/> 京都大学病院では,電子カルテ導入時に,電子カルテ上にテンプレートを用いて入力された情報をデータベース化する仕組みの導入を行った.導入の結果,がん登録や臨床研究データ入力などに加え,医事会計算定のための情報検索など広くテンプレートが利用され,多くの情報が蓄積された.一方,臨床研究などのための出力作業は,人手による情報出力サービスを提供していることなどもあり,広く利用されるには至らなかった.今後,利用を拡大するためには,各研究者が有する既存のデータベースとの相互接続性を高めたり,アクセスを容易にしたりするなどの工夫が必要であることが示唆された.
著者
川上 洋一 松村 泰志 笹井 浩介 安永 晋 稲田 紘 木内 貴弘 黒田 知宏 坂本 憲広 竹村 匡正 田中 博 玉川 裕夫 仲野 俊成 朴 勤植 平松 治彦 宮本 正喜
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.421-429, 2006-06-20
参考文献数
8
被引用文献数
3

近年,セマンティックウェブ技術を医療支援に応用するための技術が注目されている.本研究では,過去の画像診断レポートから抽出された症例データをエレメント化し,RDF(Resource Description Framework)で関連づけた症例データベースから支援情報を提供することができるシステムの実現可能性を見極めることを目的とした.<br/> 兵庫医科大学病院のMRIにおける脳血管障害のレポートを利用し,部位や基本所見,診断といったデータエレメントを抽出し,それぞれのデータエレメントを関連付けて症例データベースを構築した.その症例データベースから読影するレポートに応じた支援情報を適切に提供できるかについて過去のレポートから推定した結果,作成できるレポートの範囲およびレスポンスについて概ね満足できる見込みを得た.また構造化したデータモデルが胸部CRにも応用できることを大阪大学医学部附属病院のレポートから推定した.
著者
芦田 信之 竹村 匡正
出版者
甲子園大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

平成18年度、19年度に引き続き、認知症高齢者の専用フロアをもつ精神科病棟にて、認知症高齢者の意思決定代理人のインフォームドコンセントによる許可を得たのち、施設利用者および介護職員(フロア担当者等、昼夜交代あり)にICタグを装着して、行動観察を行った。居住スペース内のベッド、トイレ、廊下、いこいの場などにトリガー領域を設置し、長期間、昼夜24時間連続モニタリングを実施し、行動観察をおこなってきた。利用者の毎日のベッド内滞在時間、トイレ回数、歩行距離などの行動パターンと病態との関係を把握することが可能となり、徘徊行動のおこるパターン解析、徘徊行動をおさえるための介入研究をおこなった。また、1日の行動記録の自動化を試み、自動日報作成のための生活行動分類をおこなった。また、介護者の行動の記録をとるために、ICレコーダで介護行為を記録することとした。しかしながら、現在の音声認識技術では、会話文の自動テキスト化は困難であったので、介護者と利用者の会話を定型化することを考えて、介護現場で必要な「声掛け運動」を提唱し、いろいろな場面での会話を体系化した。このことは、単に、自動記録ができるだけでなく、介護者と利用者のコミュニケーション(必要な場面で、必要な言葉をかける)のに役立ち、さらに、介護者が質の高い介護を実践するための研修にも役立つことがわかった。