著者
奥野 真吾 橋本 健 清水 里恵 高木 えり奈 梶口 智弘
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1510-1514, 2021 (Released:2021-11-03)
参考文献数
11

症例は75歳女性。肺腺がん術後再発に対する抗がん剤治療歴と特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対するHelicobacter pylori除菌治療歴がある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の2週間後に貧血を指摘され,血液・腫瘍内科を受診した。直接・間接クームス陽性の正球性正色素性貧血を認め,LDH・間接ビリルビン・網赤血球が高値であり,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断した。BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の他には明らかな誘因を認めなかった。Prednisolone療法により速やかに病勢の改善が得られた。COVID-19の感染拡大抑制のためワクチン接種が非常に重要であると考えられているが,ワクチン接種の広がりとともにITPの発症・増悪が報告されている。一方でAIHAの報告は希少である。今後のワクチン接種事業の進展に際しAIHAの発症についても注意すべきと考えられた。
著者
奥野 達矢 岩田 哲 早川 浩史 宮尾 康太郎 梶口 智弘
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.184-190, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
13

血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)は稀な節外性B細胞リンパ腫であり,特異的な所見に乏しいため診断に苦慮することが多いが,急速な経過を辿るため診断の遅れは致命的となる。IVLBCLの診断に有用な所見を検索することを目的に,当院で診断されたIVLBCL患者10例について臨床像を検討した。最多の症状は発熱で8例にみられ,次いで呼吸器症状(咳嗽,喀痰,呼吸困難感)が7例にみられた。血液検査所見では血球減少を10/10例,高LDH血症を9/10例に認め,動脈血液ガス分析ではPaO2低下を6/7例に認めた。画像検査所見上は7例に肝脾腫がみられ,9例に胸部異常陰影がみられた。これらの所見は治療により改善した。IVLBCLにおける肺病変の合併頻度はこれまでに報告されている以上に高い可能性が示唆される結果であり,原因不明の呼吸器症状,低酸素血症でもIVLBCLを鑑別に挙げる必要があると考えられる。
著者
津田 曜 小栗 卓也 櫻井 圭太 梶口 智弘 加藤 秀紀 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.504-508, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
4

71歳男性.異常言動と全身性痙攣にて入院.高次脳機能障害を認めたが初回頭部MRIは異常がなかった.血中LDH・可溶性IL-2受容体高値より悪性リンパ腫を疑ったが,初回骨髄穿刺と皮膚生検では腫瘍細胞を認めなかった.10日後の頭部MRI磁化率強調画像(susceptibility-weighted image; SWI)で大脳皮質・皮質直下に異常低信号域が出現,ステロイドパルス療法を行うも無効であった.後に胸部単純CTで両肺にスリガラス影が出現,経気管支肺生検と骨髄穿刺再検にて血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B cell lymphoma; IVLBCL)と診断した.本疾患では脳梗塞様変化を呈することが多いが,本例ではむしろ大脳のSWI低信号域が主たる所見であり,中枢神経病変による出血性変化と推測された.