著者
加納 裕也 井上 裕康 櫻井 圭太 吉田 眞理 三浦 義治 中道 一生 西條 政幸 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.750-755, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

75歳男性.構音障害,左口角下垂で受診.頭部MRIで右中心前回に拡散強調画像で高信号病変を認め,脳塞栓症として入院したが,症状は悪化し画像でも病変の拡大も認めた.髄液JCウイルス(JCV)-DNA PCR検査は4回施行し陰性だったが,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)に矛盾しない経過と画像であり,初診から2ヶ月後に脳生検を行いdefinite PMLと診断した.基礎疾患は特発性CD4陽性リンパ球減少症のみで,非HIV-PMLとしてメフロキンとミルタザピンの併用療法を行い,初診から約29ヶ月という長期生存の転帰であった.髄液JCV-DNA PCR検査が繰り返し陰性でも,脳生検が診断に有用なことがある.
著者
荒川 いつみ 小栗 卓也 中村 友紀 櫻井 圭太 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.22-26, 2022 (Released:2022-01-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

73歳女性.夜間睡眠中の大声の寝言や日中覚醒時の異常言動,会話中に急に反応が乏しくなるエピソードが月単位で相次いで出現.他院にてレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies,以下DLBと略記)と診断されるも,これらの頻度が徐々に増加したため,当院にて精査入院.終夜睡眠ポリグラフィの“筋活動の低下を伴わないレム睡眠”および18F-FDG PETの辺縁系糖代謝亢進より,レム睡眠行動異常症を合併した辺縁系脳炎と診断.ステロイドパルス療法2コース実施後,症状は徐々に軽減した.本例は後に血清抗voltage-gated potassium channel(VGKC)複合体/leucine-rich glioma-inactivated protein 1(LGI1)抗体陽性が判明した.本抗体関連辺縁系脳炎は臨床像がDLBに重なることがあり,診断に際し注意が必要である.
著者
津田 曜 小栗 卓也 櫻井 圭太 梶口 智弘 加藤 秀紀 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.504-508, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
4

71歳男性.異常言動と全身性痙攣にて入院.高次脳機能障害を認めたが初回頭部MRIは異常がなかった.血中LDH・可溶性IL-2受容体高値より悪性リンパ腫を疑ったが,初回骨髄穿刺と皮膚生検では腫瘍細胞を認めなかった.10日後の頭部MRI磁化率強調画像(susceptibility-weighted image; SWI)で大脳皮質・皮質直下に異常低信号域が出現,ステロイドパルス療法を行うも無効であった.後に胸部単純CTで両肺にスリガラス影が出現,経気管支肺生検と骨髄穿刺再検にて血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B cell lymphoma; IVLBCL)と診断した.本疾患では脳梗塞様変化を呈することが多いが,本例ではむしろ大脳のSWI低信号域が主たる所見であり,中枢神経病変による出血性変化と推測された.
著者
森本 悟 髙尾 昌樹 櫻井 圭太 砂川 昌子 小宮 正 新井 冨生 金丸 和富 村山 繁雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.573-579, 2015 (Released:2015-08-21)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は62歳の女性である.頭痛で発症し,3ヵ月にわたって進行する認知機能障害,発熱および炎症反応の持続を呈した.頭部MRI画像で皮質および白質に多発性病変をみとめ,造影後T1強調画像にて脳溝や脳室上衣に沿った造影効果をみとめた.認知機能障害およびMRI所見が急速に進行したため脳生検を施行.クモ膜下腔に多数の好中球浸潤および多核巨細胞よりなるリウマチ性髄膜炎類似の病理像をみとめるも,関節リウマチの症状はなかった.各種培養はすべて陰性で,抗菌薬,抗結核薬および抗真菌薬治療に反応なく,経口ステロイド療法が奏功した.2年後の現在も寛解を維持している.