著者
岡野 友美 角 玄一郎 梶本 めぐみ 吉村 智雄 杉本 久秀 髙畑 暁 安田 勝彦
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.119-125, 2017

<p>漢方薬は西洋薬に比べて胎児への影響が少ないと考えられ,妊娠時にしばしば投与される.胎児への影響に関しては漢方薬の胎児への移行の有無や程度を理解しなければならない.しかし,漢方薬の胎児移行についてはわれわれの調べた範囲ではこれまでに報告がない.今回,初めて漢方薬由来成分の胎児移行を確認したので症例の臨床経過を文献的考察も含めて報告する.症例は35歳の初産婦,妊娠39週6日で女児3222gを自然分娩した.妊娠前からうつ,てんかん,橋本病があり,妊娠21週3日から分娩まで抑肝散,リスぺリドン,レボチロキシンの3種薬剤を継続服用していた.分娩後に当院で基本検査として実施している臍帯血検査でCRPは正常範囲内にもかかわらず,白血球増多症(26000/µl),好中球増多症(18070/µl),高コルチゾール血症(269 ng/ml)がみられた.しかし,無治療で分娩119時間後(出生5日目)には白血球,好中球,コルチゾールは全て正常化した.漢方薬の甘草由来成分のグリチルレチン酸による白血球増多症,好中球増多症ならびに高コルチゾール血症が疑われたため,検査機関に依頼したところ,液体クロマトグラフィー・マス・マススぺクトロメトリー法にて,臍帯血中にグリチルレチン酸が検出された.漢方薬を服用していない母親から生まれた児の臍帯血3例を対照として検査したところ,3例ともグリチルレチン酸は検出されなかった.また,本症例の血中グリチルレチン酸は分娩119時間後には検出されなかった.これらのことから,グリチルレチン酸が白血球増多症,好中球増多症,高コルチゾール血症に関与した可能性が示唆された.〔産婦の進歩69(2):119-125,2017(平成29年5月)〕</p>
著者
梶本 めぐみ 原田 直哉 延原 一郎 春田 典子
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.24-28, 2011

一般に変性が少ないとされる富細胞平滑筋腫が,嚢胞変性をきたし腫瘍マーカーの上昇をも伴ったため,卵巣癌などの悪性腫瘍との鑑別に苦慮した症例を経験した.症例は46歳の2回経産婦.全身の倦怠感および腹部膨満感を主訴に近医内科を受診.骨盤内の腫瘤およびCA125の高値(111 U/ml)を指摘され,婦人科疾患を疑われ当院へ紹介受診となった.骨盤内には子宮または付属器と思われる可動性のやや不良な超新生児頭大の腫瘤を触知し,両側子宮傍組織は軟であった.初診時の採血結果は,Hb 9.7g/dl,Ht 31.5%,plt 40.9×10<sup>4</sup>/μl,LDH 182IU/l,CA125 235.8U/ml,CA19-9 5.4U/ml,CEA 0.8ng/ml.MRIでは骨盤内を占拠する15cm大の多房性の嚢胞性腫瘤を認め,内容液はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号であった.腫瘤の1/3程度にT1強調像で低信号,T2強調像では一部高信号の混在も認めるものの不均一な低信号を呈する充実性の部分を認め,造影により著明に濃染され,拡散強調像では高信号を呈した.少量の腹水貯留も認めた.以上のことから卵巣原発の漿液性または粘液性腺癌を第一に疑い,子宮肉腫または変性した子宮筋腫などを鑑別疾患とした.開腹所見にて嚢胞変性を伴った子宮腫瘍であることが判明し,両側付属器は嚢胞変性した子宮体部に付着していたため,子宮とともに両側付属器も摘出した.病理所見では富細胞平滑筋腫と診断した.術後の経過は良好で,CA125も速やかに陰転化した.嚢胞変性を伴う富細胞平滑筋腫は悪性腫瘍との鑑別が困難なことがある.〔産婦の進歩63(1):24-28,2011(平成23年2月)〕
著者
田中 法博 梶本 めぐみ 富永 昌治
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.92-101, 2001-06-01
被引用文献数
8

本論文では、自然環境下における光源の全方位分布をカラーカメラがら推定する方法を提案する。全方位計測系として、鏡面の金属球を用いて、それに写りこんだ画像を解析することにより光源の方向と輝度を求める。鏡面球の使用は、いくつかの全方位計測方式の中では一度に計測できる視野範囲が最も広いという利点がある。鏡面球のほぼ全周囲360度の範囲に存在する光源の空間分布を知ることが可能である。光源推定のおおよその原理は以下のようである。光源からのビームが太陽光のように平行と仮定すると、カメラから鏡面球への視線方向ベクトルが球表面で正反射する方向がわかれば、球への入射光ビームの色度、輝度、方向を推定できる。これを画像として観測できる球面全体について調べれば、全方位の光源分布がわかる。光源の空間分布を表示する画像として、我々は2種類の画像を求める。まず、球中心から全周囲を観測した画像で、光源の空間分布は球中心を原点とする極座標系として求める。次に、人間が見る写真と同様な画像として、画像の射影方式を平行投影法で変換する。最後に、自然環境下で実験を行い、提案手法の妥当性を示す。