著者
安江 健一 高取 亮一 谷川 晋一 二ノ宮 淳 棚瀬 充史 古澤 明 田力 正好
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.12, pp.435-445, 2014-12-15 (Released:2015-05-19)
参考文献数
28

本研究では,侵食速度の指標として,環流丘陵を伴う旧河道(以下,環流旧河谷)に着目した.環流旧河谷は,分布が乏しい流域があるものの,日本列島の各地に分布し,様々な比高を持つことから,侵食速度を算出する際の有効な指標になると考えられる.この環流旧河谷を用いた事例の研究を,熊野川(十津川)の中流域において行った結果,旧河床堆積物を覆う角礫層は,赤色化していることから最終間氷期以前の堆積物と考えられ,旧河床堆積物の離水年代は12.5万年前かそれより古いと考えられる.角礫層に含まれるK-Tz起源の粒子は,角礫層の堆積時に降下し,希釈されたものであり,角礫層を覆う表土に含まれるK-Tz起源の粒子は角礫層の離水後に斜面から再移動したものと解釈すれば,赤色化に基づく角礫層の年代観に矛盾はない.この離水年代と旧河床堆積物の現河床からの比高から算出した下刻速度は,約0.9 m/kyかそれより遅い可能性がある.このように,環流旧河谷は,河川の上流や西南日本などの内陸部における河川の下刻などの侵食速度の指標になるとともに,隆起速度を推定する際の有効な指標になる可能性がある.より確度の高い侵食速度の算出には,環流旧河谷に分布する旧河床堆積物や斜面堆積物などを対象とした年代測定が今後の課題である.
著者
山岸 宏光 中筋 章人 野崎 保 平野 吉彦 中川 渉 安田 匡 棚瀬 充史 須藤 宏 三戸 嘉之 永野 統宏 小野 雅弘 安田 幸弘 濱 康之
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.192-202, 2007-10-10
被引用文献数
1 2

平成19年7月16日午前10時13分,新潟県中越沖の深さ17kmを震源とするM6.8の地震が発生し,新潟県柏崎市,長岡市,刈羽村,長野県飯綱町で震度6強の大きなゆれを観測するとともに,各地で大きな被害が発生した.日本応用地質学会では,いち早く先発隊として野崎北陸支部副支部長が17日に現地調査を開始し,22日にはその結果を速報としてホームページ上に公開した.ついで北陸支部(山岸支部長)が主体となり,学会本部の新潟県中越地震による土砂災害研究小委員会(千木良委員長)が支援する形で,現地調査を行うことが決定し,調査団を募ったところ13名のメンバーが参集した.現地調査は,8月3日に猛暑(36℃)の中で行われ,13日にはその成果をホームページに公開した.本報告は,今回行なった現地調査の中から,地震災害の代表的現象である液状化・斜面崩壊・地すべりなどを対象に,その状況と発生メカニズムについて検討した結果を報告するものである.