- 著者
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佐々 恭二
山岸 宏光
福岡 浩
千木良 雅弘
丸井 英明
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2000
21世紀において地すべり危険度の軽減と人類の文化・自然遺産及びその他の脆弱な宝の保護の問題は重要性を増しており,そのための研究、調査の拡大・強化に向けた世界的な協力が緊要である.1999年12月,ユネスコ事務総長と京都大学防災研究所長の間で合意覚え書き「21世紀の最初の四半世紀における環境と持続できる開発のための鍵としての地すべり危険度軽減と文化・自然遺産保護のための研究の推進に関する協力」が交わされた.この合意を推進するため,以下の研究を実施した.1.岡山県高梁市の国史跡・備中松山城の変形し始めている基礎岩盤に差動トランス型伸縮計とクラック変位計を開発・設置し,岩盤変位の精密計測を開始した.2.ユネスコ世界遺産の中で最も著名で,大規模な岩盤崩壊の地形の真上に位置し,クラックや小崩壊などの危険な兆候を示しているペルーのマチュピチュ遺跡の調査と斜面変動の高精度計測のため簡易伸縮計を開発し,11月に現地に持ち込み設置した.3.日本学術会議において2001年1月15日〜19日にかけて,UNESCO/IGCP Symposium on Landslide Risk Mitigation and Protection of Cultural and Natural Heritageを開催し,19カ国,57名が参加し,研究発表・研究推進の打合わせを行った.国際的な地すべり研究の枠組み設立のための「2001年東京宣言:Geoscientists tame landslides」を採択した.佐々が報告したマチュピチュ遺跡の地すべり調査結果と伸縮計観測結果は英国BBC,米国CNN,ロイター通信社,読売新聞等で世界的に報じられ,地すべりの危機に晒される文化遺産に対する国際的な関心を高めることに寄与した.なお,同シンポで発表された論文の中で優れたものを編集しSpringer Verlagより単行本として出版予定である.