著者
佐々木 元樹 越後 成志 松田 耕策 安藤 良晴 田原 孝之 斎藤 哲夫 森 士朗 飯塚 芳夫 山口 泰 手島 貞一
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.123-129, 1985-12-31
被引用文献数
1

口腔外科領域の重篤な感染症は, 抗生物質の進歩により減少の傾向にあるが, 今回, 口腔底蜂?織炎より頸部にまで炎症の波及した重篤な1例を経験したので報告する。症例は, 25歳男性, 昭和58年9月15日頃より区部歯肉に落痛, 腫脹を自覚し, 9月21日某歯科にて厄を抜歯されたが, 嚥下障害強度なため, 処方された抗生物質を服用できず, また連休にかかったため, 歯科医を転々と受診した後, 9月25日当科を受診した。左側口腔底蜂軍織炎の診断のともに, 左側顎下部および口腔底に切開を加えたが排膿はなく, また, 抗生物質の点滴静注にもかかわらず, 炎症が右側まで拡大したため, 願下部並びに右側の顎下部, 口腔底にも切開を加えたが, 38〜39℃の弛張熱が続いたため, 敗血症を疑い血液培養を行なったが陰性だった。症状が改善しないため右側頸動脈三角への炎症の拡大を疑い, 胸鎖乳突筋前縁部に切開を加えたところ排膿および同部結合組織の壊死を認め, 切開後は次第に症状は緩解した。本例が重篤な症状を呈するに至った原因として, 炎症の急性期における抜歯と, 抜歯後, 処方された抗生物質を服用できなかったこと, 感受性試験で有効と思われた抗生物質が著効を示さなかったことなどが考えられるが, このような重篤な感染症では抗生物質にのみ頼ることなく, 適確な切開排膿の処置を施すことが重要と思われた。
著者
堀江 佐知子 小玉 哲也 小野 栄夫 森 士朗
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、ナノバブルと超音波を用いた新しいワクチン接種法のためのドラッグデリバリーシステムを開発し、これまで治療が困難であった感染症などの予防や治療に貢献することである。これまで我々は、ナノバブルの体内分布の超音波画像でのモニタリングや生体細胞への遺伝子導入効率、さらには、超音波照射とナノバブル破砕時の組織障害の程度、それにともなう炎症性細胞浸潤の程度などを検討した。その結果、静脈注射によりナノバブルがリンパ節に流入し、リンパ節内の樹状細胞に抗原タンパクや遺伝子の導入が可能であること、ナノバブル破砕時の超音波の強さを調節することにより、照射部に適度な炎症性細胞の集簇を促し、ナノバブル破砕によるアジュバント効果が期待できること、ナノバブル表層への抗体の組み込みが可能なこと、バブル内への抗原タンパクや遺伝子、あるいはアジュバント分子の封入が可能であることなど、本研究を推進する上で極めて重要な知見を得ることができた。しかし、ナノバブルと超音波を用いた分子導入法においては、導入効率の低さが問題になる可能性が考えられた。そこで、1回のトランスフェクションで100日以上もタンパク発現が可能な長期発現プラスミドDNAをナノバブルと超音波を用いて導入するシステムを開発し、従来の分子導入法の導入効率の低さの問題を解決することが可能となった。しかしその一方で、生体内での持続的なウイルス抗原の産生は、高グロブリン血症や免疫複合体病等の誘発の可能性も考えられることから、今後は、タンパク発現量の増大のみならず発現タンパクの制御法の検討も必要かと思われる。