- 著者
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今野 晃嗣
大森 奈保子
- 出版者
- 動物の行動と管理学会
- 雑誌
- 動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.3, pp.93-108, 2022-08-25 (Released:2022-09-13)
- 参考文献数
- 52
両義的であいまいな刺激を肯定的(楽観的)または否定的(悲観的)に判断する認知傾向のことを判断バイアスと呼ぶ。判断バイアスは個人の感情や福祉の状態を反映していると考えられており,近年ではヒト以外の動物を対象にした研究も増えてきた。中でも伴侶動物のイヌの研究から,非実験動物の感情世界を理解するための知見が得られつつある。本稿では,イヌCanis familiarisの判断バイアスの研究動向を以下の論点からまとめた。まず,嚆矢となったMendl et al.(2010)の研究概要を紹介し,イヌの標準的な判断バイアス課題を解説した。次に,後続の研究成果をまとめ,イヌの判断バイアスに影響を及ぼす要因について,居住環境,行動発現,個体属性に分けて論じた。最後に,当該分野の成果および課題を指摘した。今後,判断バイアス研究を契機として,イヌの感情と福祉の理解が深まることを期待したい。