著者
熊倉 啓之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.307-310, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
26

本研究は,海外における割合指導に関する先行研究を分析し,日本の割合指導との違いを明らかにして,今後の割合指導の改善への示唆を得ることを目的とする.まず,海外の割合指導に関する先行研究を,(1)パーセントの概念に関する研究,(2)パーセントの理解を支援する図等に関する研究,(3)パーセント問題の解決と指導に関する研究,の3点に焦点を当てて分析した.分析の結果,日本の割合指導との違いに基づく指導改善への示唆として,(1)パーセントを分数と関連付ける,(2)100マス図を活用する,(3)帰一法等による方法を扱う,の3つの示唆を得た.
著者
長島 康雄
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.281-284, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
4

新型コロナウイルスの感染拡大は,日本・世界に大きな影響を及ぼした.突然変異によって野生生物に由来するウイルスが今後も新たに出現することを前提にした理科教育を検討しなければならない.本稿では感染拡大の間接的な要因としてウイルスや免疫に対する科学的な知識の欠落の問題点を指摘する.そこで,ウイルスならびに免疫について義務教育段階で日本人全員が習得すべき内容としての位置づけた理科カリキュラムを検討した.過剰に恐れるのではなく,科学的な知見をふまえて正しく対処するための見識を持つための理科カリキュラムである.小学校理科カリキュラムとして「生物のスケール」という単元を導入し,最も微小な生物としてウイルスを扱うこと,中学校理科では「ヒトの体を守る仕組みとしての免疫」という単元,ならびに「生物に由来する災害としてEco-DRRの視点による災害対処」を導入することの有用性を指摘した.
著者
都築 功 松田 良一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.635-636, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

カンボジアの公立中学校理科および高等学校生物の教科書では健康や衛生,食物,農業,ヒトの生殖と発生など生活に関連した内容が多く扱われている.ウイルスに関しては,カンボジアの教科書では中学校第3学年と高等学校第1学年で感染症および生物の分類と関連させそれぞれ3~4ページにわたり扱っている,韓国,中国,台湾の教科書においてもカンボジアと同様,ウイルスを数ページにわたって扱っている.一方,日本の理科や生物の教科書では生活と関連の深い内容の扱いが少なく感染症も扱わない.日本の教科書ではウイルスは本文外で参考として1ページ以下の扱いであり,他の国々と大きく異なっている.日本の生物教育で生活や健康に関連した内容をもっと多く扱うこと,ウイルスに関しては本文で扱うよう見直すことが必要と考える.
著者
水町 衣里 磯部 洋明 神谷 麻梨 黒川 紘美 塩瀬 隆之 堂野 能伸 森 奈保子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.289-290, 2011
参考文献数
2

大学教職員や大学生が,小学校,中学校,高等学校の教員と共同で開発した『宇宙箱舟ワークショップ』は,「宇宙に引っ越しするならどんな生き物を連れて行く?」というある種極端な舞台を設定しながら,普段の生活の中では見えにくい現代の問題をみんなで考えるという教育プログラムである.本稿では,この多様な答えを許容する教育プログラムの開発過程を報告する.
著者
Kumiko Takahara
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.153-154, 1995 (Released:2018-05-16)
参考文献数
3

The goals of Japanese language teaching in the United States as part of the university curriculum needs to be reset in response to a changing socio-economic climate and societal expectations from foreign language studies. Three major areas are identified for discussion on how the Japanese Language Program at the University of Colorado may expand its roles and increase its contributions to higher education in order to continue its growth. A number of problems which may be encountered in pursuit of these goals will be addressed.
著者
小野寺 翔汰
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.403-406, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
11

近年,動物園ならびに水族館は生物多様性保全や環境問題などに関する科学教育へ有用な施設として,研究者の間で注目されつつある.しかし一方で動物園・水族館への社会的な関心の高まりには欠けるものがあり,生涯教育的な啓蒙には至っていないのが現状である.本研究では,一般市民への動物園・水族館に対する関心惹起の手段としてサブカルチャー作品を用いることを提案し,その一例としてメディアミックス作品「けものフレンズ」を取り上げ,アンケート調査により本作品が動物園・水族館ならびに科学教育へ与える効果を評価した.その結果,「けものフレンズ」が動物園・水族館への来園館頻度・リピーター率・園館の役割に対する理解度に寄与していることが分かり,サブカルチャー作品による動物園・水族館への関心惹起が十分可能であることが示された.
著者
吉岡 有文
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.453-454, 2020

<p>科学の学習においては実物や現象にくり返しふれることが必要である。しかし,非常勤講師にはそのような学習環境をデザインすることが困難であることが多い。また,新型コロナウィルスによる活動自粛の影響などにより対面授業自体が困難になることもある。このようなときオンラインの授業やオンラインの画像や動画の活用が必要となる。そこで本研究では,自らの授業「看護物理学」の実践を通して,オンライン動画を利用した科学の授業の妥当性について検討した。また,オンライン動画の選択については,日本の教育映画における「動く掛図論争」を念頭において考察した。その結果,教師の役割は,授業で共に実物や現象を視聴し,それらを授業後にも再度視聴し吟味検討することができる学習環境をデザインすることである。教師は,ドラマ仕立てのオンライン動画ではなく,一つの事物,現象を熟視させるクリップ的なオンライン動画を用意しておく必要があるとした。</p>
著者
齊藤 有里加 下田 彰子 梶並 純一郎 小川 義和
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.493-496, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

理系学芸員課程の授業教材として,モバイル端末アプリケーションiNaturalistを使った体験を実施した.演習は国立科学博物館付属自然教育園で行われ,動植物の管理,保存,活用についてレクチャーと,植生管理のための生物モニタリングの試みとしてiNaturalistのシステムを紹介し,「バイオブリッツ」を体験し,ディスカッションとアンケートを行った.本発表では,大学生がiNaturalistを操作し,博物館資料として野外生物情報を習得し,公開するまでの過程を紹介し,野外博物館の資料特性理解の効果について考察する。
著者
森田 直之 滝澤 賢 中安 雅美 舘林 恵 森口 哲平 大熊 雅士 川端 康正 猪又 英夫 白鳥 靖
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.305-306, 2016

<p>東京都立多摩科学技術高等学校(以下、本校)は、平成22 年に開校し、平成24 年に文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、4 年が経過した。これまで科学技術教育の一貫としての倫理教育の在り方について取り組んできた。本校では、SSH 指定科目である『科学技術と人間』の「技術者倫理」という単元において未来の科学技術を多く取り上げたウルトラセブンを題材に倫理教育を行なうプロジェクトチームを立ち上げた。本研究では、ウルトラセブンを題材とした初等技術者倫理教育の教材開発および倫理教育のアクティブ・ラーニング化への試みを報告する。</p>
著者
山元 啓史 坂谷内 勝 吉岡 亮衛
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.105-106, 1996
参考文献数
1
被引用文献数
1

UNIXの通信ツールやシェルツールとCASTEL/Jのデータベース群を使い、日本語教材開発を進めるためのシステムを開発したので報告する。本システムは日本語教材を作成する際必要とされる語彙リストの自動生成機で、主処理をUNIXで行うシステムである。メールシステムを利用することにより、ユーザはUNIXを意識することなくこのシステムを利用し、自分が必要とする教材の前処理を手に入れることができる点が特徴である。
著者
前迫 孝憲 青柳 貴洋 丹羽 次郎 西端 律子 菅井 勝雄
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.233-234, 1999
被引用文献数
1

大阪大学人間学部では、平成10年9月に東館竣工記念講演会の映像配信をインターネット、ISDNビデオ会議ネットワーク、デジタル衛星テレビ(DVB)の3者を併用してリアルタイムに実施した。インターネットでは、大阪からRealSystem、東京からMPEG4で配信した。またDVBでは3基の衛星を用いた世界配信を行い、南米コルドバ大学からは質問を受けた他、タイの遠隔教育機関とは異種衛星を使ったメッセージ交換を行った。
著者
中村 大輝 大澤 俊介 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.433-436, 2019

<p>本研究は,理科の授業において領域固有スキルが科学的推論能力の育成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.小学校第6学年の児童215名を対象とした調査の結果,領域固有スキルのうち,知識を適用するスキルと科学的推論能力に正の影響が認められた.他方,認知欲求が低い学習者においては,領域固有スキルのうち,事物・現象を当該領域に特徴的な視点で捉えるスキルが,科学的推論能力育成の阻害要因となる可能性が示唆された.</p>
著者
瀬戸崎 典夫 森田 裕介 全 炳徳
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.561-562, 2020

<p>本研究は,没入型タンジブル平和学習用VR教材の開発に向けた予備調査を実施することによって,教材に対する興味・関心等の評価を得るとともに,改善点や追加コンテンツを明らかにすることを目的とした.その結果,本教材を使用することで,参加者の興味・関心や,活動そのものに対する集中力を高めることが示された.また,平和教育の実践を想定したコンテンツ開発と授業デザインの考案に加えて,原爆投下前の人々の暮らしをバーチャル環境に提示することで,より実感を高める教材となり得ることが示された.</p>
著者
江草 遼平 和田 久美子 生田目 美紀 楠 房子 溝口 博 稲垣 成哲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.456-457, 2011
参考文献数
1
被引用文献数
2

本研究では,生田目・楠(2010)が開発したユニバーサル・パペット・シアターに学習者が物語の展開を選択できる分岐場面を実装し,その効果を予備的に検証した.対象は健常者の大学生14名であり,上演後に,分岐について自由記述による評価を求めた.その結果,分岐場面の設定が動植付けを高めること,物語への没入が促進されること等の肯定的な回答を得ることができた.改善点としては,分岐画面のデザイン等が指摘された.
著者
富田 晃彦 尾久土 正己
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.625-626, 2020

<p>国際連携での多地点日食中継インターネット番組において単に日食中継をするだけでなく,日本の視聴者に日食への理解,中継という方法への興味,そして国際連携への興味という3方向へのアピールをねらった.それが伝わったのか,アンケート調査から探った.特に肯定的な意見が多かったのが,中継という方法への興味として「リモート教材としてこのような番組は活用できそう」と,国際連携への興味として「Under One Skyとして,『われら地球人』を意識できると実感」であった.長期間の遠隔授業を余儀なくされ,国際連携や国際理解への興味が薄れかねないこの状況下,それを乗り越えるひとつの方法として提案できるものであるといえよう.</p>
著者
吉田 安規良 吉田 はるか 馬場 壮太郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.585-588, 2021

<p>生徒の科学的思考力等を育成し,それを測る問題を作成し,適切に評価できる理科教員を育成するため,中学校・高等学校の理科教員免許取得希望学生を対象として,「思考・判断・表現」の評価を目的とした火成岩の同定を問うペーパーテストの出題内容をどのように捉えているのかを調べた.出題内容に違和感を感じた学生もいたが,ほぼ全員が出題者の想定通りに「正答」した.27人中15人が岩石の判断理由を答えさせた点を,11人が火成岩に関するいくつかの知識を組み合わせて解答させた点を肯定的に評価していた.全体的な色の特徴から岩石を特定することの困難さを7人が,採点基準の曖昧さや採点の難しさを6人が,出題構成と配点に関する問題を4人が指摘していた.学習内容に関する専門性を高めるとともに,ある種の受験技術で容易に解答可能な問題を科学的な思考力等を問う問題として出題すべきでないことを学生が学ぶ必要性をこの結果は示している.</p>
著者
宮国 泰史 福本 晃造 杉尾 幸司 古川 雅英
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.505-506, 2021

<p>沖縄県内の5つの中学校と科学教育プログラムに参加した中学1年生に対して、理数・科学に対する情意面の考えや意識を尋ねる質問紙調査を実施した。男女の意識差については学校・組織間で明確な差がみられ、「科学の楽しさ」、「広範な科学的トピックへの興味関心」、「科学に関連する活動」などの項目で、学校・組織間の違いが見られた。また、男女の意識差の小さい学校・組織ほど、進学や就職「以外」の場面においても、理数への好的な感覚を持っており、男女ともに将来、理数に関する職業に就きたいと考える傾向があった。</p>
著者
三宅 志穂
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.469-470, 2019

<p>著者は学生らとともに,動物園にいる動物を題材として生物多様性保全意識の向上を目指す教材開発に取り組んできている。本研究では来園者をいかに聴衆者として取り込むかという視点で,コウノトリを題材とするコミュニケーション型展示を開発し,展示手法の改善を試みた。そして,本展示の視聴者が時系列でどのように変化するのかを調査した。その結果,プレクイズ・シーンでは開始時に比べて3 割から4 割近く増加したことから,クイズの導入が聴衆を惹きつける動機付けになったと推察された。また,本編シーンの「コウノトリの野生絶滅と野生復帰(前半)」と「リコちゃんの貢献(後半)」のお話でも,聴衆者は継続的に増加した。物語内容が来園者の興味・関心を惹きつけたと理解できた。</p>
著者
近藤 勲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.61-62, 2000
参考文献数
4

わが国は、途上国への教育協力・支援を他の分野のそれと同様に種々の外交ルートを利用して、人材と資金の両面で積極的に関与し実施してきた.本稿では、その一つで受入れ人数の規模並びに継続性の面から貢献度の高い教員研修留学生の受け入れについて、過去20年の実施業績の考察と今後の展望について述べる.現在、わが国では、行政改革に基づく規制緩和が高等教育の実施方法や内容に変革を迫り、改革が進められている.この趣旨を生かした教員研修留学生の受入体制の改善についても言及し、提言を試みる.