著者
森 正志 平松 佑一 藤原 玲子 福永 匡史
出版者
一般社団法人 日本フットケア・足病医学会
雑誌
日本フットケア・足病医学会誌 (ISSN:24354775)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.53-59, 2023-01-31 (Released:2023-01-31)
参考文献数
20

左下腿切断を余儀なくされた糖尿病に起因する包括的高度慢性下肢虚血 (chronic limb-threatening ischemia : CLTI) 患者に対し, 術前からサドル付き免荷式歩行器 (以下, 免荷式歩行器) によるトレーニングを導入し義足歩行の獲得に至ったので, その有用性について検証することを本報告の目的とした. 症例は, 67歳女性, 左全足趾から後足部まで潰瘍が拡大し, 救肢困難で下腿切断となった. ADLは独歩で自立していたが, 廃用症候群が進行し, 入院時には中等度から最大介助が必要であった (Barthel index : BI, 30点). 術前から仮義足完成までは, 免荷式歩行器を使用し立位・歩行練習を実施した. そのほか, 松葉杖歩行, ADL練習, 上肢の課題志向型 (家事動作) 練習に取り組み, 義足完成後は積極的に義足歩行練習を実施した. その結果, 退院時のADLは, BIが90点まで改善した. 歩行機能は, 屋外義足杖歩行自立レベルとなり歩行速度0.76m/s, 最大で600mの連続歩行が可能となった. 免荷式歩行器は, 低負荷高頻度で非切断肢の筋力強化, 歩行練習を行うことができるため, 廃用症候群が進行し術前から歩行困難な症例に対しても有用なトレーニング方法であると考えられた.
著者
藤田 暢一 服部 憲明 森 正志 工藤 俊介 宮井 一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0102, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】歩行障害を有する患者を対象にしたリハビリテーション治療において,どのタイミングで問題が生じているかなど,歩行能力を詳細に評価することは重要である。しかし,従来の計測装置は高価で,空間的制約が大きいため臨床での利用には制約がある。そこで,今回我々は,安価で簡単に客観的な歩行周期を計測できる①スプリット型フットスイッチ(Split foot switch:SFS)を作製し,②加速度センサー(Accelerometer:AM),③圧センサー(Pressure sensor:PS)との歩行周期計測の比較検討を行った。【方法】対象は健常成人男性9名,年齢は27.1±2.7歳であった。測定課題は,被験者の主観的快適速度での歩行とした。測定機器と取り付け位置は,①SFS:マットセンサー(竹中エンジニアリングM-68)を用いて,踵部と爪先部の2つのセンサーを作製し,本人持ちの右側靴底の踵と爪先部に両面テープにて貼り付けた。②AM:小型無線多機能センサー(ATR-Promotions社製TSND121)を背面第3腰椎部にホワイトテープと軟性バンドで固定し,体幹の三軸方向(上下・左右・前後)の加速度を計測した。③PS:Flexiforce(ニッタ社製A201-100)を右足の踵と母趾球部にホワイトテープで固定した。これらの機器を同時に,サンプリング周波数100Hzで計測を行い,歩行が定常状態となった区間の立脚期のデータを10周期分採用した。各機器の踵接地・爪先離地の決定基準は,①SFS:踵接地は踵センサーのON,爪先離地は爪先センサーのOFF,②AM:踵接地は加速度前後成分上方ピーク,爪先離地は加速度上下成分下方ピーク,③PS:踵接地は踵センサーの上昇開始点,爪先離地は爪先センサーの上昇ピークとした。この基準より一歩行周期の時間,一歩行周期に対する立脚期の割合を計算した。解析は,被験者毎に,機器間の計測値の差に関しては,計測値に正規性・等分散性が認められた場合,一元配置分散分析で比較し,Tukey法にて多重比較を実施,認められなかった場合はfriedman検定後,Bonferroni補正されたWilcoxon検定を実施した。また,機器間の計測値の相関に関しては,Spearman順位相関係数を用いて計算した。更に,これらと同様の解析を各被験者の計測値の平均値を元にグループレベルでも行った。解析にはR version 2.8.1を使用し,有意水準を5%に設定した。【倫理的配慮,説明と同意】当院の倫理委員会により承認を得て,被験者には十分な説明の後,同意を得た後に実施した。【結果】9名全体の一歩行周期(秒)に関しては,平均時間±標準偏差(変動係数)はSFSが1.08±0.27(2.53),AMが1.08±0.27(2.54),PSが1.08±0.25(2.29)であった。立脚期の割合(%)はSFSが58.8±0.91(0.015),AMが68.4±1.8(0.026),PSが49.2±2.8(0.059)であった。計測値の差の検定では,一歩行周期の時間は,全ての被験者およびグループレベルで,機器間の有意差は認められなかったが,立脚期の割合ではSFS<AMと有意差を認めた者が9名中7名,SFS>PSと有意差を認めた者が8名であり,グループレベルでもPS<SFS<AMと有意差を認めた。相関の検定では,一歩行周期でSFS-AM間の有意な相関関係を示した者が7名,SFS-PS間では9名であり,グループレベルでもSFS-AM間でr=0.996,SFS-PS間でr=0.997,AM-PS間でr=0.997と強い相関を認めたが,立脚期の割合ではSFS-AM間の有意な相関関係を示した者が1名のみ,SFS-PS間では0名であり,グループレベルでも有意な相関関係は認められなかった。【考察】一歩行周期では機器間で計測値に差が無く,相関も高かった事から,いずれの機器も高い精度で歩行周期を計測できていると考えられた。一方,立脚期の割合では,多くの被験者で機器間に共通した差が認められ,また機器間で有意な相関を示しているものは少なかった。差が認められたことに関しては,AMの加速度波形から踵接地・爪先離地を決定する方法の特性とPSの接地面積の少なさなどが影響していると考えられた。相関が認められなかったことに関しては,立脚期の割合の変動係数が,SFSに比べAMやPSで大きいことが影響していると考えられた。一見より変動係数の小さいSFSが歩行計測には有効と考えられる。しかし,歩行時の体幹や下肢の運動は毎回僅かに異なっており,SFSで直接計測できる床接地時間という時間因子を維持するため,毎回運動学的な微調整が行われる機序をAMやPSの計測値の変動は反映していると考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,SFSによる歩行計測は変動が小さく,臨床での計測に適当と思われたが,AM・PSの変動の原因も考慮する必要があると考えられた。これらを組み合わせることで,歩行の多様な情報を収集することが可能になると考えられた。
著者
山内 慎 西森 正志 西嶋 直人 新谷 一也 松本 恭徳 松井 克憲
出版者
日本高専学会
雑誌
日本高専学会誌 : journal of the Japan Association for College of Technology (ISSN:18845444)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.35-38, 2011-07-31

本研究は,画像認識技術を用いた列車運転士用支援システムを開発することを目的とし,ラボスケールで実施できる鉄道模型用の標識認識システムを作成した.本技術は,実車において運転士の目視による安全確認時の支援用ツールとして提案できるものである.本システムでは,画像認識用の標識を模型車両の車載カラービデオカメラによって動画撮影し,PCにキャプチャーし,画像認識ソフトウェアによりリアルタイム処理した後,標識で決められた音を自動的に鳴らす仕組みを実現した.画像認識用の標識はRGBの3原色を用いて5段の横縞状にデザインし,16種類作成した.標識サイズは8mm角とした.画像認識処理法には投票処理法を用いた.認識手順は,1)16種類の標識に投票箱を用意し,2)ピクセル毎にRGBの輝度値を調べ,3)最大値を持った色をその位置での色とし,4)最終的に一番多い票を獲得した標識番号が出力され,5)認識した標識画像をPC画面に表示し,6)標識で指定された音を鳴らすとした.楕円形の軌道上に「鉄橋」,「踏切」,「カーブ」部を設け,それぞれの開始,終わりの標識を進行方向右側に設置したコースを作成して実験した.その結果,実車スケール速度40km/h相当での走行時の標識認識率は100%であった.