- 著者
-
森 裕亮
新川 達郎
- 出版者
- 日本NPO学会
- 雑誌
- ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.11-22, 2013 (Released:2013-07-11)
- 参考文献数
- 31
本稿は,自治会の全部または一部でNPO法人生成を選択し,地域コミュニティを再組織化する取組みに着目し,そのメカニズムと効果を明らかにする.自治会は地域コミュニティの中心的組織だったが,戦後の社会経済変化の中で衰退の傾向にある.しかし,昨今の地方財政逼迫の折,地域コミュニティの地域課題解決機能が政治的社会的に期待されるようになった.そうした状況で,幾つかの地域が自治会を基盤としたNPO法人設立を始め,地域課題解決に向けて自治会とNPO法人との関係を作ろうとしている.本稿は,事例研究を行うが,選んだ事例は二つである.一つは,自治会全世帯参加で,NPO法人システムが自治会システムに依存するタイプ,もう一つは,有志参加で,NPO法人システムが自治会システムに必ずしも依存せず独立的なタイプである.本稿の発見は,第1に,NPO法人生成は,地域コミュニティの組織(自治会)リーダーによって認知された「パフォーマンス・ギャップ」と既存資源によって促進されていること,第2に,2事例ともに自治会とNPO法人の連動・分担は達成されていたが,前者事例ではメンバー間の葛藤が生じていること,一方,後者事例では自治会とNPO法人との分離の潜在性があることを指摘する.