著者
新川 達郎
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.64-77, 2015-12-25 (Released:2019-06-08)
参考文献数
25

日本公共政策学会(以下,本学会という)では,公共政策学教育の在り方について,その基準あるいは標準の検討を重ねてきた。公共政策学やその教育の定義については多様な見解があるとしても,共通して参照可能な基準は探索できるのではないかという見通しのもとに作業を進めることとした。そのために本学会として「公共政策教育の基準に関する研究会」(以下,研究会という)を設置し,2013年度と2014年度の2年間にわたって検討を行ってきた。その検討の経過においては,研究会メンバーの議論のみならず本学会の年次研究会における報告を行うことも含めて,本学会会員諸氏の積極的な参加と助言を頂戴した。その最終報告書は,2015年秋季の本学会理事会に提出された。そこでは公共政策学の学問体系を踏まえながら,日本の学士教育の実情に沿った公共政策学教育の基準を発見するべく努めた。本論文においては,「公共政策教育の基準」に関する検討の経緯を振り返りながら,その中で研究会に加わった一人である筆者として改めて「公共政策学」の「教育」の標準をどのように考えればよいのか,その「参照基準」について,その背景,意義,課題について,検討することとしたい(1)。
著者
河井 紗央里 新川 達郎 カワイ サオリ ニイカワ タツロウ Kawai Saori Niikawa Tatsuro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-76, 2019-08

研究ノート(一般)(Note)本研究では、公共政策系の学部を有する大学のディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを精査し、両ポリシーとその実現状況に見られる公共政策学教育の共通構造を明らかにする。各大学に関する調査の結果、身につける能力(学習成果)として、「問題発見・課題(問題)解決」、「政策的な思考」、「コミュニケーション力」が共通構造の要素として見出された。また、「学際性・総合性」、「グローバル(国際)、地域」、「協働」といった要素がカリキュラム編成上の特徴に見られた。最後に、「少人数教育」、「フィールドワーク」が具体的な教育方法であることが明らかになった。
著者
森 裕亮 新川 達郎
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-22, 2013 (Released:2013-07-11)
参考文献数
31

本稿は,自治会の全部または一部でNPO法人生成を選択し,地域コミュニティを再組織化する取組みに着目し,そのメカニズムと効果を明らかにする.自治会は地域コミュニティの中心的組織だったが,戦後の社会経済変化の中で衰退の傾向にある.しかし,昨今の地方財政逼迫の折,地域コミュニティの地域課題解決機能が政治的社会的に期待されるようになった.そうした状況で,幾つかの地域が自治会を基盤としたNPO法人設立を始め,地域課題解決に向けて自治会とNPO法人との関係を作ろうとしている.本稿は,事例研究を行うが,選んだ事例は二つである.一つは,自治会全世帯参加で,NPO法人システムが自治会システムに依存するタイプ,もう一つは,有志参加で,NPO法人システムが自治会システムに必ずしも依存せず独立的なタイプである.本稿の発見は,第1に,NPO法人生成は,地域コミュニティの組織(自治会)リーダーによって認知された「パフォーマンス・ギャップ」と既存資源によって促進されていること,第2に,2事例ともに自治会とNPO法人の連動・分担は達成されていたが,前者事例ではメンバー間の葛藤が生じていること,一方,後者事例では自治会とNPO法人との分離の潜在性があることを指摘する.