著者
森 雅樹 高畠 博嗣 笹岡 彰一 名取 博 阿部 庄作
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.357-362, 1993-06-20
被引用文献数
1

肺腫瘤影の検出を目的とした読影実験を行い,読影者の読形成績と読影経験年数の関係について検討した.27名の医師に胸部単純像310枚(肺癌192例,対照118例)を無作為順に読影させ,腫瘤影を検出させた.回答は,腫瘤影の存在性とその部位について,確信度(確実にあり,ぽぽ確実にあり,可能性あり,腫瘤影なし)を付して記入させた.読影結果を確信度によってスコア化し,読影医を読影経験年数によって4群(A,B,C,D)に分けて検討した.腫瘤影の検出について,経験の浅いD群と他の3群の読影者問に読影ス コアに有意差を認めた(p<0.0001).ROC解析を行い,A〜Dの各群間でROC曲線の下の面積に有意差を認め,読影経験年数と読影精度の関連性が示唆された.また,確信度が「可能性あり」までのレベルの有病正診卒および陽性的中卒は読影経験年数により増す傾向が見られたが,無病正診率については一定の傾向は見られなかった.
著者
江間 慎弥 森 健策 北坂 孝幸 目加田 慶人 井手 一郎 村瀬 洋 高畠 博嗣 森 雅樹 名取 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.580, pp.163-168, 2005-01-15
被引用文献数
13

本稿では気管支枝名対応付け手法において、分岐パターンと枝の走行方向に基づいた気管支枝モデルの選択法について述べる。従来法は3次元胸部X線CT像から抽出した気管支枝に対し、あらかじめ用意した複数の気管支枝のモデルを部位ごとに走行方向の差異を平均して評価し、最適モデルを選択して解剖学的名称を対応付けた。しかし、差異の平均を評価しているため部分的に分岐パターンの異なるモデルを選択するという問題点があった。提案手法では枝の分岐ごとに分岐パターンを調べ、モデルを対応付けの候補からふるい落としていく。また、右上葉支では区域支の走行方向を利用してモデルをふるい落とした後、モデルの選択を行う。これにより、より最適なモデルを選択し、枝名対応付けの精度の向上を図る。我々は提案手法を25例の胸部CT像から抽出した気管支枝に対して適用した。その結果、全ての部位において対応付けの精度が向上し、90%の枝に正しい枝名を対応付けることができた。
著者
小場 弘之 森 雅樹 鳥脇 純一郎 山岸 雅彦 小場 弘之
出版者
札幌医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.肺腫瘤影の良悪性の鑑別に関する研究-X線学的特徴とデジタルパラメータ良性40例,悪性40例,計80例の小型孤立性肺腫瘤影の胸部X線像を対象とし,X線学的特徴とデジタルパラメータによる肺腫瘤影の良悪性鑑別について検討した.良性腫瘤影は悪性に比し,形状は整で,濃度が高く,辺縁が鮮明で,スピキュラや血管収束像が少ない傾向があった.腫瘤影の面積Sをもとに半径を設定した多重円構造のウィンドウを設定し、デジタルパラメータを測定した.腫瘤影中央部のDCF-N出力値,腫瘤影辺縁の濃度勾配値および腫瘤影周辺部の濃度値と濃度差エントロピー値を測定し,腫瘤影の良悪性鑑別に有用な情報を得た.今回採用したデジタルパラメータによる良悪性の判別率は78%で,医師の読影による上記のX線像所見によって良悪性を判別した場合の判別率は74%であった.これらのデジタルパラメータは,腫瘤影の良悪性鑑別に関する診断支援に役立つ可能性があると考えられた.2.胸部X線像を用いた肺気腫の進行度の定量評価計算機によって胸部X線像上の血管影の太さを自動計測し,その結果を正常例と比較することによって肺気腫の病勢進行度を定量評価するための基礎的検討を行った.胸部単純像上で肋間部に複数のPOIを設定し,様々な方向の2階差分フィルタ出力の最大値を出力するMax-DDフィルタを用いて血管影の強調と抽出を行う.その後,孤立点や枝の除去・穴埋めを行い,血管影の太さの推定を行った.正常例および肺気腫例(中等度,重度)の胸部X線像を対象に検討したところ,肺気腫例では正常例よりも血管影の太さの分布が有意に細い方に偏っていた.今後は,各ROIの肺気腫進行度について医師と計算機の評価結果を比較し,本法の臨床的な有用性について検討する必要がある.