著者
森下 大樹 佐野 大佑 荒井 康裕 磯野 泰大 田辺 輝彦 稲毛 まな 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.251-256, 2019-03-20 (Released:2020-04-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

Stress Velopharyngeal Insufficiency/Incompetence (SVPI; 吹奏楽器の演奏時のみ呼気が鼻腔より抜けることで演奏に支障を来す病態) の1例を経験したので報告する. 症例は19歳, 男性. クラリネット演奏時のみ鼻から空気が漏れ, 吹き続けられないため, 当科を受診した. ファイバースコピーでは, 頬ふくらまし時にアデノイドの小隆起の左側より呼気の漏出を認めた. 全身麻酔下, 上咽頭脂肪注入を施行したところ, 呼気の漏出と症状は消失し, 術後1年再発を認めていない. 本邦において耳鼻咽喉科医師の中でも認知度が低いと思われる SVPI について文献的考察を加え,症例提示する.
著者
荒井 康裕 和田 昂 森下 大樹 高田 顕太郎 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.194-202, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
20

非結核性抗酸菌は,結核菌以外の抗酸菌の総称で土壌,水,埃などの自然環境で増殖する環境寄生菌であるが,非結核性抗酸菌の一つであるMycobacterium abscessusによる非結核性抗酸菌性中耳炎の症例報告および文献レビューを報告した.症例は25歳女性で,Clarithromycinを中心とした抗菌薬治療を行い,抗菌薬の中止判断および聴力改善目的に手術を施行し,細菌学的な菌の消失を確認後,抗菌薬投与を中止した.聴力の気骨導差の改善を得ることができ,感染の再燃も認めていない.非結核性抗酸菌性中耳炎は稀な疾患であり,PubMedによる検索では,2018年までの期間に34の著者より119例の報告を認めた.非結核性抗酸菌性中耳炎の感染経路,デブリードメント手術の必要性,抗菌薬の選択および投与期間,聴力予後について,過去の文献のレビューおよび本報告との比較考察について報告した.