著者
森山 徳長 Norinaga Moriyama 東京歯科大学 Tokyo Dental College
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.249-257, 2006-10-25
参考文献数
10

本邦の通貨は7世紀末の富本銭や和同開宝などの鋳造貨幣に始まるが,17世紀始め頃から紙幣の流通が行われたという.伊勢の商人の間での流通が発端とされている.江戸幕府以後(17〜19世紀)は藩札が各藩内のみで流通したが,全国で流通する紙幣は明治新政府の「政府官札」が始まりで,明治5年には旧日本銀行株式会社,その他の私立銀行でもお札を発行した.その後政府官制の日本銀行券に統一され,全国で流通した.第二次大戦終了後の一時的混乱を経て,日本銀行券はA-D券を順次発行し,2004年11月を期して1万,5千,1千円の新E券を発行しようとしている.福沢の肖像のみ不変で,文化人・科学者として樋口一葉と野口英世が新券の肖像に採用されるが,その理由・経過等を祥述する.
著者
森山 徳長
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.183-188, 1987-08-25
被引用文献数
1

The present author surveyed the bibliography of the first English book on dentistry, i.e. Charles Allen's "The Operator for the Teeth", and its background, the gild of barber surgeons of York and undertook its Japanese translation. Hurlock's second book in England had been evaluated by the dental historians as the second English book devoted exclusively to the difficult dentition of infants, and was consequently the first book on pedodontics throughout the world. The source of reference to this book is very scarce. Only a short comment by Guerini and Weinberger were known to us, and nothing else. Therefore, the present author studied the facsimile edition of this rare treatise, and clarified in some detail the history of the study of the bibliography of this book as to the author, the description on the title page, references cited in this book, and the content of this rare volume. Further the history of "the lancing the gum" as a therapeutic measure for the difficult dentition in infants was briefly commented. As the present author reported, this problem had been treated by as ancient as Greco-Roman medical writers, however, Ambroise Pare wrote on this method first, and such authors as Walter Harris, Lorenz Heister and Hurlock's contemporary, Pierre Fauchard; and later, as well as Jourdain and John Hunter recommended "Lancing the gum" in case of difficult dentition. However, the opposition by Wichmann, and later Sterenberg terminated this controversy. The anodine necklace, which was in vogue in the 16th century as seen in the description of "Zene Artzney", was also discussed in Hurlock's work, and was commented briefly by the present author.
著者
松本 実 田辺 明 栗山 美子 森山 徳長 石川 達也
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.296-299, 1992-09-20
被引用文献数
1

日本の歯科医師団体の発祥は,東京における明治26年11月の『歯科医会』に端を発する.この会は次第に発展し,ついには現在の日本歯科医師会となる母体となった.本会が明治28年に,発行した小冊子『歯牙保護論』は,業権の確立と一般庶民への啓蒙を目的としている.明治初年に桐村,伊沢,高山らの先覚者が執筆した一連の歯科衛生啓蒙書のうち,歯科医師団体が発行した本書の書誌学と,歯科医会の志向していたところの詳細を本論文で解析した.
著者
森山 徳長
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.199-204, 2006-03-30
被引用文献数
1

世界各国と同様に米国においても歯科医学史の研究団体の発端は,心ある少数の熱心家達の発議に基いている.1950年メアリーランド大学歯学部元学長ベン・ロビンソンは,4人の同志と語らい合って団体の創設運動を開始した.1952年には趣旨に賛同する有志を集めて創立総会を開催し,以降年一回米国内各地で年次総会を開き,順次団体の体制・機能を整えて行った.会報も謄写版刷二頁のタイプ印書報告書から始めて季刊誌年2回から,現在ではA4版年3回の斯界第1の専門誌に発展した.会員も米国内に止まらず全世界に拡大した.本論文ではその50年間の会の歩みの概要を描写した.
著者
牧野 信之 森山 徳長
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.184-188, 2002-03-29
被引用文献数
1

ジョンM.リッグズが歯周病の父と呼ばれるにふさわしい,本症の外科的処置法についての1876年発表の原著論文の日本語訳を本邦で始めて発表した.現在我々の識っている知識の原形であることがわかる.その現代的解釈については続報する予定である.
著者
牧野 信之 森山 徳長
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.157-161, 2001-09-30
被引用文献数
1

長く歯槽膿漏症と呼ばれ,またリッグズ氏病と呼ばれた歯周病の外科的療法を開発したJ.M.リッグズは,本病治療法を1876年米国の歯科雑誌Pennsylvania Journal of Dental Scienceに発表した.その原理と方法は基本的に現代の歯周病外科療法に引継がれており,学祖と呼ぶにふさわしい.本稿はその生涯と業績,彼の生きた時代のアメリカ歯科医学の歯口清掃法の考え方の状況につき述べる.
著者
森山 徳長
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.72-79, 1999-09-30

ゴールドラッシュ時代のカルフォルニア州のサンフランシスコに流れて来た歯科医エルメンドルフは,この繁栄の町で開業した.約一年弱の努力も空しく,彼はニューヨーク州北部の田舎町で開業している歯科医の父の後を継ぐため撤退した.その間日記を克明につけていたので,当時のサンフランシスコの市民生活と歯科開業の実態が,彼の日記という貴重な一次史料により手にとるようにわかる.米国は南北戦争の最中であり,リンカーン再選の選挙風景を含め原著者Malvin E. Ring氏の歯科医史学的解説を加えて紹介した.
著者
森山 徳長 亀谷 博昭 塩津 二郎 真木 吉信 奥田 克爾
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.262-265, 1992-05-20

野口清作が,血脇守之肋をたよって高山歯科医学院の学僕となった期間,およびその後医師免許を得て同学院講師となり,順天堂,伝染病研究所に昼間勤務した時代,また中国から帰国して,東京歯科医学院講師を数ケ月つとめたそれぞれの期間に,草創期の東京歯科大学機関誌歯科医学叢談と歯科学報に,S.N.生,湖柳生または実名で発表した論文は18編にのぼる.在来,そのうち数編しか記録されていなかった新知見である.本論文は,その全容を精査して解説した.