著者
武藤 徹一郎 小西 富夫 上谷 潤二郎 杉原 健一 久保田 芳郎 安達 実樹 阿川 千一郎 斉藤 幸夫 森岡 恭彦 沢田 俊夫
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.492-499, 1983

教室におけるCrohn病17例の経験を報告し,最近の外科的治療方針の動向について文献的考察を行った.手術は9例に行われ,残る8例はいずれも経静脈栄養によって管理することができた.9例中6例には吻合術が可能であった,痔瘻は8例に合併していたが,7例は通常痔瘻と性状が変わらず,lay openにて治癒した.<BR>欧米ではCrohn病に対する外科的治療として,小範囲切除を行う一派と広範囲切除を行う一派とがあり,主として前者には英米の専門家が,後者にはスカンジナビア,ドイツの専門家が属している.広範囲切除派は術中の凍結切片標本の検索により,病変の取り残しを防ぐことを主張している.これら欧米のCrohn病に対する外科治療方針の現況を紹介し,われわれの方針についても述べた.
著者
森岡 恭彦
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.417-421, 2001-05-10

20世紀後半に起こった医の倫理の変革―パターナリズムの医療からインフォームドコンセント(informed consent)の医療へ 医の倫理と言うと,西洋では古代ギリシアの医聖とされるヒポクラテスの考えが広く認められ,特にヒポクラテス学派(ギルド)に入会する際の誓詞が有名で,西洋では20世紀半ば頃までは医学部の卒業式でこれが卒業生により朗読されていたとされる.ヒポクラテスは,その他,医師の守るべきことについていろいろのことを述べており,例えば「救護のあいだ患者は多くのことに気付くことがないようにする.……これから起こる事態や現在ある状況は何一つ明かしてはならない……」,「素人には,いついかなるときも何事につけても決して決定権を与えてはならない……」としている.ヒポクラテスの考えは病気のことについて患者にいろいろのことを知らせると患者のほうは心配するだけであり,結局は医療については専門家である医師に任せるのが患者のためだというわけである.また,その代わりに医療を任された医師は身を正し,患者の利益のために力の限り努力するべきであるとするもので,この考えは中世のキリスト教社会での博愛の精神に受け継がれ,西洋における医の倫理として広く容認されてきた1).