著者
武藤 徹一郎 上谷 潤二郎 沢田 俊夫 杉原 健一 草間 悟
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.241-247, 1981-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
5

内視鏡的ポリープ摘除によって診断した早期癌(m,sm癌)21病変中7病変の周囲粘膜に内視鏡的に観察しうる白斑を認めた.同時期に観察した良性腺腫には,同様の所見は1例にしか認められなかった. 組織学的には,この白斑はH.E.で淡く染まる顆粒を含有する組織球の,表層上皮直下の粘膜固有層への集簇よりなっており,PAS-alcian blueで淡青色に,Mucicarmine,Toluidine blueで弱陽性に染った.電顕では,electron-densityのない円形顆粒の中に,わずかにdensityのある顆粒が混在して認められた.組織化学的にはこの白斑の性状はMuciphageに最も類似していると考えられた.その本態については,いくつかの可能性が示唆されたが,完全には解明しえなかった。 この所見は,良性腺腫・大腸腺腫症の腺腫の周囲粘膜,潰瘍性大腸炎などにも稀に見出されたが,内視鏡的にポリープ周囲粘膜に白斑を認めた場合には,悪性を強く疑うことができるという点で,臨床的に重要な所見であることを指摘した.
著者
武藤 徹一郎 小西 富夫 上谷 潤二郎 杉原 健一 久保田 芳郎 安達 実樹 阿川 千一郎 斉藤 幸夫 森岡 恭彦 沢田 俊夫
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.492-499, 1983

教室におけるCrohn病17例の経験を報告し,最近の外科的治療方針の動向について文献的考察を行った.手術は9例に行われ,残る8例はいずれも経静脈栄養によって管理することができた.9例中6例には吻合術が可能であった,痔瘻は8例に合併していたが,7例は通常痔瘻と性状が変わらず,lay openにて治癒した.<BR>欧米ではCrohn病に対する外科的治療として,小範囲切除を行う一派と広範囲切除を行う一派とがあり,主として前者には英米の専門家が,後者にはスカンジナビア,ドイツの専門家が属している.広範囲切除派は術中の凍結切片標本の検索により,病変の取り残しを防ぐことを主張している.これら欧米のCrohn病に対する外科治療方針の現況を紹介し,われわれの方針についても述べた.
著者
弥政 晋輔 廣田 映五 板橋 正幸 北條 慶一 森谷 〓皓 沢田 俊夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.75-81, 1988-01-01
被引用文献数
30

大腸粘液癌症例116例の臨床病理学的検討を行った. 発生頻度は 6.9% であり非粘液癌症例よりも若年発症であり (p < 0.01), 右側結腸における発生率が高い (p < 0.025). またリンパ節転移, 壁深達度ともに進行した症例が多く, 腹膜播種陽性率も高いため治癒切除率は有意に低く (p < 0.05). 治癒切除例においても局所再発を中心とした再発率が高く, 非粘液癌と比べて5生率は有意に低い (p < 0.001). また粘液癌を腫瘍細胞型により分化型と印環型に亜分類して比較検討すると, 印環型はより強く粘液癌の特徴を有していた. したがって生検で印環細胞が陽性であったり少しでも粘液癌が疑われる場合は広域なリンパ節郭清と主病巣の広範囲切除が必要と思われた.