著者
徳永 旭将 池田 大輔 中村 和幸 樋口 知之 吉川 顕正 魚住 禎司 藤本 晶子 森岡 昭 湯元 清文
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.14-34, 2011-07-20

一般に,前兆現象は突発現象にそのものに比べて非常に目立ちにくく,その開始時刻は曖昧である.従来よく用いられてきた変化点検出法を適用した場合,このような微小で緩慢な変化は見逃されやすい.Tokunagaら(2010)では,Ideら(2005)の提案した特異スペクトル分析を応用した変化点検出法(SST)を,多次元データを用いたアルゴリズム(MSST)へと拡張することで,鋭敏に前兆現象の開始時刻を推定できることを示した.MSSTは,緩慢な変化も検出できる鋭敏な手法であるが,実データへの適用では誤検出が問題になる.本稿では,突発現象の大まかな開始時刻をあらかじめ検出し,さらに検出された時刻の前後で前兆現象の開始時刻と終了時刻を個別に探索することで,前兆現象を鋭敏に検出でき,かつMSST単体よりも誤検出を劇的に減少させることができることを示す.
著者
大家 寛 森岡 昭 小林 香 飯島 雅英 小野 高幸 宮岡 宏 岡田 敏美 小原 隆博
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.19-49, 1990-01

科学衛星あけぼの(EXOS-D)衛星に塔載されたプラズマ波動及び波動励起観測実験(PWS)装置は, アンテナ伸展が行なわれた1989年3月以来, 順調に観測を開始した。自然プラズマ波動の観測では, 全軌道領域において20kHzから5MHzの周波数帯域のダイナミックスペクトラム観測を行っている。その主要な結果は以下のとおりである。i)高域混成共鳴放射(UHR放射)があけぼの衛星の全軌道域において観測され, この放射の空間分布からプラズマ圏の構造が明らかにされた。ii)オーロラ粒子加速域領域に関連してオーロラキロメータ放射(AKR)が観測されている。このAKRの偏波とポィンティングフラックスの計測も同時に行なわれている。これ等の観測データからAKRの放射メカニズム及びオーロラ粒子加速域の構造を研究することが可能となる。観測データは加速域においてAKR波動の成分として静電的プラズマ波動とZ-モード波動が共存していることを示している。iii)プラズマ圏の赤道域において, 高域混成共鳴(UHR)放射が強い強度をもって出現することが発見された。この放射の強度増大は2つの種類の擾乱を示唆している。即ち, 第1は, EPWAT (Equatorial Enhancement of the Plasma Wave Turbulence)と名付けられた現象に対応し, 高域混成共鳴放射の強度を増大させるミクロナなプラズマ不安定であり, 第2は, EPDET (Equatorial Plasma Density Turbulence)と名付けられた現象に対応し, プラズマ密度の乱れに起因する高域混成共鳴放射時の不規則変化である。EPWAT現象は高度1,000kmから9,000kmの磁気赤道域をdisc状にとりかこむものであり, 一方EPDETは高度1,000kmから9,000kmの領域の地理的赤道をもう1つ別のdiscを形成して存在する。iv) PWSのサウンダー実験も順調に成果を出しており, 基本的なプラズマ共鳴である周波数f_<UHR>における高域混成共鳴, 周波数nf_C (n=1,2,3,…)における電子サイクロトロン高調波共鳴, 及びプラズマ共鳴(f=f_P)が観測されている。拡散型プラズマ共鳴系列であるf_<Dn>もまた静電的プラズマ共鳴であるf_<Qn>と伴に観測されている。この現象が観測される高度は3,000km以上にも及んでいる。非常に長い継続時間をもつダクトエコーが, 6,000kmの高度においても観測された。これらすべての結果は, PWSデータが, オーロラ粒子加速域に加えて, プラズマ圏, 電離圏のすべての領域におけるプラズマ及びプラズマ波動の研究に極めて重要な貢献をするであろうことを約束している。
著者
徳永 旭将 池田 大輔 中村 和幸 樋口 知之 吉川 顕正 魚住 禎司 藤本 晶子 森岡 昭 湯元 清文 CpmnGroup
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.14, pp.1-6, 2010-12-09

一般に,前兆現象は突発現象にそのものに比べて非常に目立ちにくく,その開始時刻は曖昧である.従来よく用いられてきた変化点検出法を適用した場合,このような微小で緩慢な変化は見逃されやすい.Tokunaga et al.1) では,Ide and Inoue2) の提案した特異スペクトル分析を応用した変化点検出法 (SST) を,多次元データを用いたアルゴリズム (MSST) へと拡張することで,鋭敏に前兆現象の開始時刻を推定出来ることを示した.MSST は,緩慢な変化も検出できる鋭敏な手法であるが,実データへの適用では誤検出が問題になる.本稿では,突発現象の大まかな開始時刻を予め検出し,さらに検出された時刻の前後で前兆現象の開始時刻と終了時刻を個別に探索することで,誤検出を劇的に減少させることができることを示す.
著者
三澤 浩昭 森岡 昭 岡野 章一 土屋 史紀
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.外圏大気観測用2次元分光イメージング装置の開発先ず、惑星・衛星外圏大気観測用の2次元分光イメージング装置の開発を行った。本装置は、1)2次元入射光を分光用の1次元出射光に変換するバンドルファイバー製の次元変換光学系と、2)既存の入射/出射光学系と接続するための開口値変換光学系から成る。バンドルファイバーは入射系12×12、出射系144の配列からなる。装置は光学ベンチに組上げ、東北大の60cm望遠鏡(入射系)と高分散分光計(出射系)に接続した。分光データは液体窒素冷却CCDカメラで取得し、PC上でイメージに変換する構成とした。2.水星とイオ衛星の外圏大気の観測1の装置を用いて、イオと水星の大気観測を実施した(継続中)。イオについては、従来、大気放出量にイオの木星に対する視位置依存性が示唆されてきた。その存在の確認と放出様相の確認を目標として観測を行い、様々な視位置について有意なデータを得た。一方、水星については、水星が太陽から大きく離れる観測適期に集中観測を実施したが、天候に恵まれず現時点では大気放出過程導出に重要なデータが十分には得られていない。このため、次の観測適期となる平成18年6月に再観測を行う予定である。3.数値計算による外圏大気放出過程の究明当ループが開発した希薄大気の生成・消失に関するモンテカルロコードを用い、大気放出過程の数値実験を進めた。結果として、水星については、太陽風による水星表面粒子の叩出しが、従来の想定以上に効果的に働いている可能性が示された。一方、イオについては、磁気圏イオンによる大気粒子の叩出し/引剥がしと太陽光による脱離が相作用して放出量を制御している可能性が示された。