著者
村本 健一郎 播磨屋 敏生 久保 守 藤田 政之 椎名 徹
出版者
金沢大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

雲の中で成長した雪結晶は自分の重みで落下が始まり,雲粒の中を落下していく途中で雲粒が雪結晶に付着して種々の形に成長するが,落下速度は遅いので,すぐに空間密度が高まり互いに接触する割合が高く,しかも枝の構造が機械的にからみやすいため,いくつもの結晶の合体した雪片となる.この雪片同士が衝突併合には,雪片輪郭線の複雑さや落下運動の不規則さが関与していることが報告されているが,実際に雪片同士が衝突した瞬間の映像は捉えられていない.また,雪片が複雑な運動を伴って落下する理由も十分には解明されていない.本研究では,できるだけ自然に近い状態で落下中の雪片の映像を録画するシステムを製作し,次にそれらの映像を画像処理技術を使って定量化し,降雪現象の物理的特性を定量的に解明するシステムを開発することを目的として以下の実験を行った.(I)降雪雪片撮影システムの開発できるだけ自然現象に近い状態で落下中の雪片を観測するために4m(縦)×5m(横)×13m(高さ)の観測塔内で,地面に対して水平方向に1台,および鉛直方向に4台のCCDカメラを設置し,降雪雪片の落下中の運動を2方向から同時に撮影するシステムを開発した.(I)降雪観測と解析実際に、降雪中の切片を5台のカメラで撮影した.撮影した画像から降雪雪片の形状と3次元的な落下運動軌跡を求めた.
著者
村本 健一郎 松浦 弘毅 椎名 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.949-958, 1993-05-25
被引用文献数
24

落下中の降雪雪片の形状を解析することは,雪片の生成メカニズムを解明する上で重要である.降雪雪片の形状を定量的に解析するためには,多くの雪片像より特徴量を抽出し,それらの相関を明らかにすることが必要である.本研究では,テレビカメラを使って,落下中の降雪雪片を連続的に撮影し,この2次元映像を画像処理して雪片の輪郭線を記録した.記録された輪郭データを用いて,落下中の雪片の運動に関与する雪片の領域の特徴解析と,雪片同士の併合に関与する輪郭線の複雑さとの2通りの解析を行った.領域の特徴解析では,面積,重心,落下姿勢および正規化モーメント特徴量を求めた.一方,輪郭線の複雑さとして,円形度,凹率およびフラクタル次元を計算し,これらの関係を調べた.モーメント特徴量,円形度,凹率は,面積や撮影方向により,影響を受けるが,フラクタル次元は,ほとんど一定値をとることがわかった.
著者
村本 健一郎 椎名 徹 播磨屋 敏生 長野 勇
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

降雪雪片は雲内で発生した氷晶が成長し,さらにいくつも併合して落下してきたものである。この落下中の氷粒子や雪片の併合には,これらの形状や落下運動が関与している。降雪現象は,雲物理学に関しての考察だけではなく,リモートセンシングや通信,最近の地球気候モニタリング分野などの多様な工学的応用にも重要である。また、電磁波伝搬における減衰には、降雪現象が大きく関係する。降雪の研究で主に使用される観測機器の一つとしてレーダがある。降雪のレーダ観測は、レーダ反射因子Zと降雪強度Rとの間の関係式に基づいている。この降雪のZ-R関係式を決定するためには、ZとRのそれぞれを短い時間間隔でしかも高精度で測定しなければならない。しかしながら、短時間間隔かつ高精度で測定可能な降雪測定システムは、これまで開発されていなかった。そこで、画像処理手法を用いた降雪の物理的パラメータを測定する新しいシステムを開発した。落下中の雪片の映像を画像処理して、粒径、落下速度、密度を計算した。また、降雪強度は、画像データから計算するとともに、電子天秤から直接重量を測定する方法でも求めた。更に、これらの観測と同期して、小型Xバンド・ドップラーレーダを用いて受信電力も測定した。Xバンド波の減衰と降雪強度との間の関係を調べると同時に、雪片の物理的特徴量との比較も行った。これらの実験から、電波減衰には、降雪強度だけでなく雪片の粒径分布や密度も関係することがわかった。
著者
村本 健一郎 松浦 弘毅 椎名 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.2353-2360, 1994-12-25
被引用文献数
13

落下中の降雪粒子の雪質を測定することは,降雪時における電波減衰を解析するために重要である.雪質は降雪粒子の密度(含水量)に大きく依存しているので,雪質は密度により表すことができる.本研究では,落下中の粒子の密度を長時間にわたって自動的に測定することを目的として,まず,画像処理による降雪観測法を用いて,落下中の個々の降雪粒子の粒径と落下速度を測定した.このとき同時に地上に落下したすべての粒子の重量を電子天びんを用いて測定した.粒子の粒径と落下速度のデータより得られる単位空間を通過するすべての粒子の体積の値とそれらの粒子の重量のデータより,落下中の粒子の密度の計算をした.更に,粒子の密度に影響を与える因子について考察することにより,画像処理データだけを使って,降雪強度を推定する手法を提案し,実際に適用した結果,実測値との良い相関が得られた.