著者
鵜瀞 条 関 英一郎 権田 厚文
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.712-716, 2006-08-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
6

症例は57歳, 男性。食欲低下と立ちくらみを主訴に当院を受診した。来院時はHb値4.6g/dlであり, 上部消化管内視鏡にて胃切除後吻合部潰瘍が大腸に穿通し瘻孔形成している所見を認めた。待期的に手術を行い, 胃切除Roux-en-Y再建後吻合部潰瘍の横行結腸穿通による瘻孔形成の所見であった。吻合部切除および横行結腸部分切除を行い, 再びRoux-en-Y法にて再建した。胃切除後吻合部潰瘍の横行結腸穿通による瘻孔形成は比較的稀ではあるが外科的な根治術を要することが多く, また吻合部潰瘍を繰り返すことも多い。自験例においても術後に吻合部潰瘍の再発をみたがproton pump inhibitor (PPI) 投与にて治癒しえた。胃切除後吻合部潰瘍の外科的治療においては慎重な術式の選択と術後PPIの投与を組み合わせることが重要と思われた。
著者
松田 光弘 権田 厚文 藤井 佑二 勝浦 康光 冨木 裕一 櫻井 秀樹
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.1305-1308, 1998-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12

症例は52歳,女性.柿を3カ月間にわたり毎日15個以上摂取していたが,腹痛,嘔吐が出現し近医受診.腸閉塞の診断で当院紹介され入院となった.小腸造影検査で下部小腸に閉塞がみられ,同部位の超音波検査で4.5cm大の音響陰影を伴う腫瘤を認めた.柿胃石による腸閉塞を疑い手術を施行した.回盲部より40cm口側の回腸にクルミ大の異物が嵌頓していたため,異物直上の回腸を切開し,異物を摘出した.結石分析では,タンニン酸が主成分であり,柿胃石と診断した. 胃石による腸閉塞の術前診断は難しく,開腹してはじめて診断がつくことが多い.嗜好品の入念な問診を行うことはもとより,小腸造影検査を行い,閉塞のみられた部位の超音波検査で音響陰影を伴う高エコー像が認められた場合は,胃石による腸閉塞を念頭におき,診断治療することが望ましいと思われた.