著者
権藤 洋一 木村 穣 福村 龍太郎 牧野 茂
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

初年度の成果是正も含め、発生初期の高変異率や停止コドン抑制の新たな分子機構など学会などで発表した。2019年度はさらに大きな目的である遺伝的背景の異なる条件下での自然変異大規模WGSデータを得た。これまでマウスゲノム参照配列である世界標準系統C57BL/6Jを中心に解析してきた。今回ゲノム配列が1%以上も異なる日本産MSM/Ms系統の大規模解読を完了した。数世代の兄妹交配で変異を蓄積したMSM系統親の小規模解析から変異率の20%減少が示されていたので、今回、継代が進みさらに蓄積された同腹6個体のWGSを完了しビッグデータを得た。また6匹の雌雄両親ゲノムも解読し「拡張トリオ解析」を実現した。予備実験では兄妹交配蓄積のためマルコフ過程に基づく変異率推定値しか得られなかったが、親子間で直接大規模検出することも可能となったため高精度な変異解析が実現する。またマルコフ過程に依存した変異率推定の実験実証にも成る。MSM系統の極めて高い発がん抵抗性が、自然変異率20%減少がその一因となることを直接実験証明することにつながる。もう1つの大きな目的である構造変異structural variation (SV)の高精度検出においても、2つの全く新しい技法によって網羅的大規模解析が実現した。ひとつは、BioNano社の Saphyrシステムを用いた数Mbpの1分子長鎖全ゲノムマッピングwhole genome mappinng (WGM)データを得た。また、もうひとつはMGI社のsingle tube long fragment reads (stLFR)データである。いずれも、これまで解析してきたC57BL/6Jの同じマウスゲノムDNAを用いたデータであり、すでに得ているイルミナshortreadだけでなく、PacBioやNanoporeデータとも直接比較解析可能となり、単にSV検出に留まらず、すでに得ている参照配列の見直し6000候補箇所の実証にもつながる。