著者
田村雅成 兪明連 横山孝典
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.31, pp.1-6, 2013-03-06

組み込み制御ソフトウェア開発の効率向上のため,Simulinkモデルから実装を考慮したUMLモデルを効率的に設計する手法を提案する.一般に,組み込み制御ソフトウェア開発は制御ロジックを作成する制御設計と制御ロジックを元にソフトウェアモデルを作成するソフトウェア設計の2段階で行う.近年の制御設計ではMATLAB/Simulinkを用いて制御ロジックをSimulinkモデルとして設計することが多い.しかし,MATLAB/Simulinkはプリエンプティブなマルチタスク環境でのタスク間のプリエンプションなどについては考慮していない.そのため,制御ロジックをそのままソフトウェアとして実装する場合,プリエンプションによってデータの不整合が発生する恐れがあり,同期や通信の処理を追加する必要がある.我々はこれまでに,制御設計からソフトウェア設計への移行をスムーズに行うため,Simulinkモデルをソフトウェア設計に適した形のUMLモデルに変換するモデル変換ツールを開発してきた.本論文では,生成されたUMLモデルをプリエンプティブなマルチタスク環境で実行した場合に起こりうるデータの不整合を,モデル検査ツールSPINを用いて発見する手法を提案する.そして,モデル変換ツールが生成したUMLモデルから検証用のPROMELAコードを自動生成するツールを開発する.これにより,効率的なソフトウェア設計を可能とする.
著者
阿部一樹 安島光紀 兪明連 横山孝典
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.22, pp.1-6, 2013-03-06

一般に組込みシステム上のアプリケーションは複数のタスクから構成されるが,アプリケーションによって異なるタスクスケジューリングアルゴリズムが要求される場合がある.しかし多くの組込みOSは,固定優先度スケジューリングしか提供していない.そのため,スケジューリングアルゴリズムの選択が可能な組込みOSが求められる.本研究では,アスペクト指向プログラミングにより,OSのソースコードを直接書き換えることなく,組込みOSのスケジューラをアプリケーションに応じてカスタマイズする手法を提案する.自動車制御向け組込みOSであるOSEK OSを対象に,固定優先度のスケジューラをEDFに切り替えるとともに,EDFに対応した排他制御を実現するために,排他制御のプロトコルを変更するアスペクトを開発した.そして,実際にそれらのアスペクトを適用したOSの評価を行い,実用上問題の無いオーバヘッドで実現可能であることを確認した.
著者
知場貴洋 兪明連 横山孝典
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.3, pp.1-6, 2013-03-06

本論文では,自動車などの組み込み制御システムを対象にした,分散共有メモリ機構を持つ分散リアルタイムOSについて述べる.まず,アプリケーションのタスクが共有メモリに読み書きをするためのメモリアクセス機能と,ネットワーク通信を用いた更新処理によって一貫性を保つ手法を提案する.そして,自動車制御向けのリアルタイムOSであるOSEK OSをベースに分散共有メモリ機構を備える分散リアルタイムOSを実装する.ネットワークには,TDMAプロトコルに基づくFlexRayを用いる.
著者
知場 貴洋 齊藤 政典 伊丹 悠一 兪明連 横山 孝典
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2702-2714, 2012-12-15

本論文では,異なるノード上のタスク管理やタスク間の同期を可能とする位置透過性のあるシステムコールを有する分散リアルタイムOSについて述べる.本論文の対象は,自動車制御などの分野で用いられている分散型の組み込み制御システムである.まず,全ノードで統一した時刻に基づく動作を可能とするため,ネットワークにTDMAプロトコルに基づくリアルタイムネットワークであるFlexRayを用いてノード間でOSが管理する時刻の同期を行う手法を提案する.また,ノードの違いを意識しないアプリケーション開発を可能とするため,異なるノード間でタスクの起動や同期が可能な位置透過性のあるシステムコールを提案する.そして,自動車制御向けのリアルタイムOSであるOSEK OSを拡張し,提案した機能を有する分散リアルタイムOSを実装する.OSEK OSのタスク管理やイベント管理に関わるシステムコールに位置透過性を持たせ,異なるノード上のタスクを対象にシステムコールを発行可能にする.通信量を考慮してFlexRay通信のパラメータを設計した場合,位置透過性のあるシステムコールのネットワーク通信時間を含む最悪応答時間は予測可能である.The paper presents a distributed real-time operating system that provides location-transparent system calls for task management and inter-task synchronization. The target application of the operating system is hard real-time embedded systems such as automotive control systems. The operating system manages distributed tasks based on the global time supported by the clock synchronization of FlexRay, which is a real-time network based on a TDMA (Time Division Multiple Access) protocol. By using the operating system, we can develop a distributed control application program with location-transparent system calls. The distributed real-time operating system is an extension to OSEK OS, which is a standard operating system in the automotive control domain. The worst case response time of a remote system call of the operating system is predictable if the FlexRay communication is well configured.
著者
田村 雅成 神山 達哉 添田 隆弘 兪明連 横山 孝典
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2660-2670, 2012-12-15

モデルベースによる組み込み制御ソフトウェア開発の効率向上のため,SimulinkモデルをUMLモデルへ自動変換するモデル変換環境を提案する.一般に,組み込み制御ソフトウェア開発は制御設計とソフトウェア設計の2段階で行う.制御設計ではMATLAB/Simulinkを用いて制御ロジックをSimulinkモデルとして設計することが多い.一方,ソフトウェア設計ではUMLモデルを用いて設計を行うのが一般的である.本研究では,制御設計からソフトウェア設計への移行をスムーズに行うために,SimulinkモデルからUMLモデルへの変換ツールを開発した.本ツールが生成するUMLモデルはデータとデータの算出処理をカプセル化したクラスからなる.また,変換後のUMLモデルの再利用性向上のため,変換元のSimulinkモデルに対して階層化を行うが,その階層化作業を効率化するため,階層化支援ツールを開発した.そして,複数のSimulinkモデルに対して適用実験を行い,その有用性を確認した.