著者
清水 渉 相庭 武司 栗田 隆志 里見 和浩 横川 美樹 岡村 英夫 野田 崇 須山 和弘 相原 直彦 鎌倉 史郎
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.147-157, 2008-03-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17

Brugada症候群には一部の患者ではSCN5Aなどの遺伝子変異が同定され, 遺伝性不整脈疾患にもかかわらず, 若年発症はまれで40~50歳にかけて初発することや, 常染色体優性遺伝形式をとるにもかかわらず男性に圧倒的に頻度が高いという性差など, 未解決な点も多い.動脈灌流右室心筋切片に高感度光マツピング法を応用したBrugadaモデルにより, ST上昇や心室細動 (VF) 第1拍目の心室期外収縮には, 心外膜-心内膜細胞間の電位勾配と心外膜細胞間のphase 2 reentryが関与するが, VFが持続するためには, 軽度の伝導 (脱分極) 異常が必要であるとされている, SCN5A陽1生Brugada症候群患者ではSCN5A陰性患者に比べ, 心電図の脱分極指標 (PR, QRS時間) が長く, 平均10年間の経過観察でこれらの延長度も大きいことが報告され, 特にSCN5A陽性例で, 加齢による脱分極異常がVFの晩期発症に関与する可能性が示唆されている.男性優位の性差には, 右室心外膜細胞の第1相notchが雌に比べ雄で大きいことが関与していると動物実験で報告されている, また, Brugada症候群男性患者では, 年齢を一致させた対照男性に比べて, 外向き電流を増加させる男性ホルモン (テストステロン) レベルが有意に高く, 体脂肪率が低いことが報告されており, テストステロンの関与も示唆されている.
著者
久嵜 香 天谷 直貴 絈野 健一 青山 大雪 汐見 雄一郎 玉 直人 池田 裕之 佐藤 岳彦 横川 美樹 福岡 良友 森下 哲司 石田 健太郎 荒川 健一郎 宇隨 弘泰 夛田 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_5-S2_10, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
6

症例 : 57歳, 女性. 主訴 : 動悸. SLE・高血圧にて当院通院中. 頻回の心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) 発作を認めたためアブレーションを施行. ATは心房頻回刺激により再現性をもって誘発された. 3次元マッピングシステム (CARTO® 3system) を用いて右房心内膜側からactivation mappingを施行. ATはfocal patternを呈し, 冠静脈洞入口部 (CSos) の局所興奮より57ms先行する最早期興奮を三尖弁輪前壁 (左前斜位 : 12時の位置) に認めた. 同部位に頻回の焼灼を試みるも一過性の抑制を認めるのみで根治は得られなかった. 本例は大動脈の著明な蛇行のために無冠尖Valsalva洞が右房前壁最早期興奮部位に近接していた. AT中の無冠尖Valsalva洞内の局所興奮はCSosの興奮に46ms先行していた. 同部位の焼灼でATは直ちに停止し, 以後誘発不能となり再発は認めなかった. His束電位記録部位は最早期興奮部位から35mm離れた部位であった. 本例は, 心外膜側に起源を有した三尖弁輪前壁起源の巣状リエントリー性ATで, 心内膜側からは焼灼不可能で無冠尖Valsalva洞内の焼灼で根治した極めて稀な症例であると考えられた.