著者
夛田 浩
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.453-465, 2010 (Released:2011-03-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1

特発性心室不整脈の多くは流出路領域〔右室流出路,肺動脈,右室流出路低位のHis束近傍,左室流出路(心内膜側),大動脈冠尖(左冠尖,右冠尖),および左室心外膜側領域〕にその起源を有するが,僧帽弁輪,三尖弁輪,左室後下壁(左脚後枝領域),および左室前側壁(左脚前枝領域)などに起源を有する特発性心室不整脈も報告されている.特発性心室不整脈時のQRS波形はその起源からの心室内の興奮伝播をほぼ正確に反映し,頻拍の起源に特徴的な心電図所見を呈すると考えられる.高周波カテーテルアブレーションを施行した特発性心室不整脈症例を対象にアブレーション成功部位(左室心外膜側起源不整脈の場合は最早期興奮記録部位)を頻拍の起源と定義して,頻拍の起源ごとに症例を分類して,頻拍時の12誘導心電図の解析を施行した.その結果,頻拍時のQRS波形の解析によって詳細,かつ正確な頻拍起源の診断が可能であることがわかった.本稿では流出路領域,僧帽弁輪,および三尖弁輪起源特発性心室不整脈の12誘導心電図所見の特徴について述べる.
著者
山崎 浩 夛田 浩 関口 幸夫 青沼 和隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.2, pp.S2_136-S2_143, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
11

四肢および体幹の皮膚硬化を認める全身性強皮症にて加療中の38歳, 男性. 夕食後に数分間の失神発作を認め当院に緊急搬送された. 精査にて, 著明な右室拡大と壁運動の低下, 多源性心室性期外収縮の頻発および加算平均心電図にて遅延電位陽性であり不整脈源性右室心筋症類似の病態が明らかとなった. 電気生理学的検査にて血行動態の破綻する心室頻拍が誘発されたために, 1次予防目的で植込み型除細動器(ICD)を挿入, ならびにソタコール内服で経過観察としたが, 約4カ月後にelectrical stormによるICDの頻回作動を認め再入院となった. トロポニンTの持続高値, QRS幅の拡大, 右室壁運動のさらなる低下の所見から, 右室心筋障害の急速な進行が示唆された. 抗不整脈薬による頻拍のコントロールは困難と考え, 緊急のカテーテル焼灼術を施行した. 右室流出路近傍に認められた心室瘤を最早期とする非持続性心室頻拍が頻発しており, 右室内からの焼灼により, 頻拍は抑制された. 全身性強皮症の皮膚硬化に対するシクロフォスファミドによるパルス療法後に, 持続高値を示していたトロポニンTが正常化した経過より, 不整脈源性右室心筋症類似の心病変は自己免疫機序による慢性心筋炎が原因と考えられた. 本例は失神を契機に発見された不整脈源性右室心筋症類似病態を呈した全身性強皮症の稀な1例と考えられたので, 文献学的考察を加え報告する.

2 0 0 0 OA 2.ICD, CRT-D

著者
久嵜 香 夛田 浩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.253-258, 2017-02-10 (Released:2018-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

植込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator:ICD)は,致死性不整脈を治療し,心臓突然死を予防するデバイスである.また,慢性心不全では,心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)が重要な治療の選択肢であるが,心不全自体が突然死のリスクとなるため,両者の機能を併せもつ両室ペーシング機能付き心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy defibrillator:CRT-D)の適応を判断することが重要である.
著者
久嵜 香 天谷 直貴 絈野 健一 青山 大雪 汐見 雄一郎 玉 直人 池田 裕之 佐藤 岳彦 横川 美樹 福岡 良友 森下 哲司 石田 健太郎 荒川 健一郎 宇隨 弘泰 夛田 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_5-S2_10, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
6

症例 : 57歳, 女性. 主訴 : 動悸. SLE・高血圧にて当院通院中. 頻回の心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) 発作を認めたためアブレーションを施行. ATは心房頻回刺激により再現性をもって誘発された. 3次元マッピングシステム (CARTO® 3system) を用いて右房心内膜側からactivation mappingを施行. ATはfocal patternを呈し, 冠静脈洞入口部 (CSos) の局所興奮より57ms先行する最早期興奮を三尖弁輪前壁 (左前斜位 : 12時の位置) に認めた. 同部位に頻回の焼灼を試みるも一過性の抑制を認めるのみで根治は得られなかった. 本例は大動脈の著明な蛇行のために無冠尖Valsalva洞が右房前壁最早期興奮部位に近接していた. AT中の無冠尖Valsalva洞内の局所興奮はCSosの興奮に46ms先行していた. 同部位の焼灼でATは直ちに停止し, 以後誘発不能となり再発は認めなかった. His束電位記録部位は最早期興奮部位から35mm離れた部位であった. 本例は, 心外膜側に起源を有した三尖弁輪前壁起源の巣状リエントリー性ATで, 心内膜側からは焼灼不可能で無冠尖Valsalva洞内の焼灼で根治した極めて稀な症例であると考えられた.
著者
山口 順也 天谷 直貴 前田 千代 佐藤 岳彦 森下 哲司 石田 健太郎 荒川 健一郎 宇隨 弘泰 李 鍾大 夛田 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SUPPL.3, pp.S3_54-S3_60, 2013 (Released:2015-01-09)
参考文献数
10

発作性房室ブロックは, 心房興奮が予期せず突然に心室に伝導しなくなる病態と定義され, 長時間の心停止を生じるため, 繰り返す失神や突然死の原因となることが知られている. 本例は63歳, 男性. 主訴は眼前暗黒感・意識消失. 2010年 5月に意識消失発作あり近医を受診. 非通常型心房粗動と房室伝導能低下に伴う心室ポーズを認め, 当院に紹介. 心臓超音波検査では軽~中等度の僧帽弁狭窄を認めた. 当院入院後には心房粗動下に最大13秒の心室ポーズがみられ, その際には失神前駆症状を伴っていた. 恒久ペースメーカーの適応と判断したが, まずは心房粗動の治療を優先し心臓電気生理検査を施行. CARTOを用いてマッピングしたところ, 左房天蓋部に瘢痕領域を認めた. Activation mapにて左房天蓋部の瘢痕領域と右上肺静脈の天井との間を後壁側から前壁側に旋回する心房粗動と同定した. 瘢痕領域から右上肺静脈の天井にかけての線状焼灼にて心房粗動は停止し, 以後心房粗動は誘発不能となった. 洞調律に復帰後にはAH・HV時間の延長なく, また, 房室伝導能も正常であった. さらに, 治療後には房室ブロックに伴う心停止は消失した. その後は房室ブロックの再燃なく, ペースメーカーなしで経過している. 僧帽弁狭窄に伴う非通常型心房粗動で, 心房粗動時にのみ発作性房室ブロックした稀有な 1例を経験したので報告する.
著者
村越 伸行 許 東洙 西連地 利己 五十嵐 都 入江 ふじこ 富沢 巧治 夛田 浩 関口 幸夫 山岸 良匡 磯 博康 山口 巖 大田 仁史 青沼 和隆
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.236-244, 2016

【目的】一般住民における上室期外収縮の長期予後については,いまだ不明である.本研究の目的は,一般住民健診における上室期外収縮の診断的意義を調べることである.【方法と結果】われわれは1993年の年次一般住民健診を受診し,2008年まで経過を追えた63,197名(平均年齢58.8±9.9歳,67.6%女性)を解析した.一次エンドポイントは平均14年のフォローアップ期間中の脳卒中死亡,心血管死亡,または全死亡,二次エンドポイントは心疾患あるいは心房細動(AF)のない解析対象者における最初のAFの発生とした.上室期外収縮のない解析対象者と比較して,上室期外収縮のある解析対象者のハザード比(95%信頼区間)は,脳卒中死亡:男性1.24(0.98~1.56),女性1.63(1.30~2.05),心血管死亡:男性1.22(1.04~1.44),女性1.48(1.25~1.74),全死亡:男性1.08(0.99~1.18),女性1.21(1.09~1.34)であった.AFはフォローアップ期間中386名(1.05/1,000人年)に発生した.ベースラインでの上室期外収縮の存在は,AF発症の有意な予測因子であった〔(ハザード比(95%信頼区間):男性4.87(3.61~6.57),女性3.87(2.69~5.57)〕.傾向スコアマッチング解析でも,上室期外収縮の存在が交絡因子の補正後もAFの発症および心血管死亡のリスク上昇に有意に関連していた.【結論】一般住民における12誘導心電図での上室期外収縮の存在は,AF発症の強い予測因子であり,心血管死亡リスクの上昇に関連している.