- 著者
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横澤 誠
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, no.5, pp.433-439, 2004-05-01
- 被引用文献数
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4
情報技術の進展により,社会の仕組みや経済活動も次第に変曲点を迎えつつあることが明らかになっている.国の政策や企業活動の場では「ユビキタスネットワーク社会」とも呼ばれる,新しい社会パラダイムは,有線系のネットワークインフラよりもむしろ,無線通信技術を中心としたコミュニケーション技術(以下,ユビキタスコミュニケーション技術)により支えられるものである.Always Best Connected (いつでも最良の状態でネットワークに接続されている)を担保するとともに,情報技術が生活のスタイルや,ビジネスのスタイル,そして働き方のスタイルを変化させるためには,無線通信技術の持つ柔軟で身近な部分からのネットワーク化を可能とする性質が,今後も重要な役割を持つことになるだろう.無線通信技術の進展に伴って,近い将来,人々のライフスタイル,ワークスタイル,そして企業のビジネススタイルはことごとくITインフラをベースとするものに変ってゆくと思われる.いつでも,どこでも,だれでも,何でもがつながる環境により,情報のあり方そのものも大きく変りつつある.この過程は,次の三つのステップで進行するだろう.(1)今後数年で,ITを使うことのできる人の数,場面の数の増え方が最大となると考えられる.IT利用に一定の「数」が必要なビジネスモデルが,次々に現実化してくるだろう.(2)RFIDやセンサと,それらを制御するソフトウェアやネットワークの働きにより,ネットワーク仮想空間が現実世界と協働するようになる.(3)人間の知的活動を高め,企業全体の知的活動をサポートする技術が台頭する.今後ユビキタスコミュニケーションの研究開発については,自律性,完全性,社会性を重視した新しい発想に向かうと考えられる.