著者
伊福部 達 橋場 参生 松島 純一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.903-910, 1991-12-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

本論文では、人工喉頭音声や合成音声の音質改善を目的に、母音の自然性を決める要因を調べた。音声の中でも定常な母音は、ほの一様な波形がピッチ周期ごとに繰り返された時間構造を持っている。しかし、まったく同じ形の波形が繰り返されているわけではなく、その形は時間と共に微妙に変化している。ここでは、このような波形の時間変動を「波形ゆらぎ」と呼ぶことにし、繰り返し周期の変化である「ピッチゆらぎ」とは区別し、母音に含まれる波形ゆらぎと音声の自然性の関係を心理物理実験に基づいて調べた。加工音声資料内での自然性の比較実験から、母音の自然性には波形ゆらぎの時間的推移が極めて重要であり、正しい順序で並べられた32個程度のピッチ波形が高い自然性を得る上で必要であることが推論された。また、自然性を決める要因は広い周波数範囲にわたって存在しているが、その中でも、高調波成分の周りの∓18Hz程度の側波が重要であることが推論された。更に、試作したパイプ挿入式電気人工喉頭音声による評価実験でこれらの推論を裏付けるような結果が得られた。
著者
橋場 参生 上見 憲弘 及川 雅稔 山口 悦範 須貝 保徳 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1240-1247, 2001-06-01
被引用文献数
16

電気式人工喉頭は, 癌(がん)などの理由によって喉頭を失った人々の重要な発声補助機器である.しかし, 電気式人工喉頭で発声した音声は, 単調で非常に不自然であり, その改善が望まれていた.また, 従来の電気式人工喉頭はすべて海外からの輸入品であり, 国産の製品は存在しなかった.我々は, この自然性の問題を解決するために, 電気式人工喉頭で発声した音声に抑揚を負荷する方法などを提案し, 実験を進める一方, 1993年より電気式人工喉頭の製品化に着手し, 1998年に国産初の電気式人工喉頭を実現した.開発した新型の電気式人工喉頭は, マイクロコンピュータを内臓しており, 抑揚のある自然な発声が可能であるほか, 音程のデータを利用して歌を歌うこともできる.本製品は, 既に1000台以上が利用されており, アンケート調査の結果, 約7割の購入者より良好な反応が得られている.本論文では, まず, 抑揚制御機能を備えた新型電気式人工喉頭の開発経過と機能について述べ, 次に, 購入者からの評価結果と今後の課題について述べる.
著者
伊福部 達 橋場 参生 松島 純一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.903-910, 1991-12-01
被引用文献数
41

本論文では、人工喉頭音声や合成音声の音質改善を目的に、母音の自然性を決める要因を調べた。音声の中でも定常な母音は、ほの一様な波形がピッチ周期ごとに繰り返された時間構造を持っている。しかし、まったく同じ形の波形が繰り返されているわけではなく、その形は時間と共に微妙に変化している。ここでは、このような波形の時間変動を「波形ゆらぎ」と呼ぶことにし、繰り返し周期の変化である「ピッチゆらぎ」とは区別し、母音に含まれる波形ゆらぎと音声の自然性の関係を心理物理実験に基づいて調べた。加工音声資料内での自然性の比較実験から、母音の自然性には波形ゆらぎの時間的推移が極めて重要であり、正しい順序で並べられた32個程度のピッチ波形が高い自然性を得る上で必要であることが推論された。また、自然性を決める要因は広い周波数範囲にわたって存在しているが、その中でも、高調波成分の周りの∓18Hz程度の側波が重要であることが推論された。更に、試作したパイプ挿入式電気人工喉頭音声による評価実験でこれらの推論を裏付けるような結果が得られた。