著者
佐藤 智子 水内 英充 工藤 隆一 橋本 正淑 赤間 正義 石山 好人
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.124-131, 1985 (Released:2011-11-08)
参考文献数
16

子宮内膜細胞採取器のオネストブラシと増淵式吸引チューブを用いて2,756例について比較検討を行い以下の成績を得た.1) ブラシ法では吸引法より圧倒的に大量の内膜細胞採取が可能だった.2) 標本上の赤血球の混入はブラシ法に多かったが, 読影が困難となるものはごくわずかだった.3) 頸部由来細胞の混入はブラシ法の方が少なかった.4) 標本の粘液による汚染や組織球の混入は, 両者の問でほとんど差が認められなかった.5) パパニコロークラス分類において吸引法の方がブラシ法より低いクラスに診断されるものが一部の症例に認められた.6) 内膜細胞診実施可能率は, 吸引法で91.8%, ブラシ法で95.5%と大きな差は認められず, 高齢層ではブラシ法の方が可能率が高かった.7) ブラシ法施行に伴う痛みや出血はごく軽度のものが大部分を占め, 従来考えられていたほど大きな欠点とは考えがたい.以上, オネストブラシはスクリーニングに用いる器具として非常に有用であると考えられる.
著者
岡崎 隆哉 工藤 隆一 水内 英充 佐藤 賢一郎 熊井 健得 橋本 正淑
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.62-69, 1989-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
14

著者らは術中に腹腔洗浄細胞診を行った子宮内膜癌42例の標本を用いて, 腹腔洗浄細胞診と他の予後因子との関係について検討した.1) 細胞診施行症例は臨床進行期I, II, III期の症例で開腹時肉眼的に子宮外浸潤および被膜破綻のない症例に限った.2) 細胞診の陽性率は16.7%(42例中7例) で組織型, 進行期による陽性率の差は明らかでなかった.3) ヒステロスコープ施行例と非施行例の陽性率に差は認められなかった.4) 筋層浸潤に関しては, 組織学的に漿膜に達しない浸潤であれば筋層浸潤の深達度による陽性率に有意差は認められなかった.5) 病巣の占拠率に関しては占拠率が高いものほど高陽性率を示したが, 小さい病巣でも陽性となる症例もあった. また病巣が卵管角から離れた症例でも20%(3/15) が陽性であった.6) 陽性例7例すべてに追加治療を施行したが, 全症例が現在再発徴候なく生存している (最長6年0ヵ月, 平均3年7ヵ月).
著者
水内 英充 工藤 隆一 田村 元 熊井 健得 塚原 国比古 佐藤 賢一郎 橋本 正淑
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.690-696, 1986 (Released:2011-11-08)
参考文献数
16

酵素抗体法の走査電顕への応用を試みるべく, 酵素抗体法を行った遊離細胞を光顕で観察した後さらに同一細胞を走査電顕で観察するための試料作製法について検討した.(1) 材料はリンパ節のインプリントスメアから得られたリンパ球を用い, リンパ球表面マーカーである抗Leu1, 2a, 3a抗体を使用した酵素抗体法を行った.(2) 固定液は0.25%グルタールアルデハイド, PLP単独, 0.025%グルタールアルデハイド加2%パラホルムアルデヒド, 95%エタノール, メタノール, 95%エタノール・エーテル混合液の各種について検討した.走査電顕観察には0.25%グルタールアルデハイドが最も良い保存状態を示した.また, 酵素抗体反応も0.25%グルタールアルデハイドで満足すべき結果が得られた.(3) メチルグリーン核染色の影響は表面構造上認められなかった.(4) 内因性ペルオキシダーゼ反応のブロック法であるStreefkerkの方法, Isobeらの方法は表面構造へ影響を与えなかった.(5) DAB反応の沈着物はmicrovilliなどの微細構造の観察に影響を与えなかった.(6) 以上, 目的とする抗原により固定液はその都度選択しなければならないが, 遊離細胞または培養細胞に対し酵素抗体反応を施行後, 反応陽性細胞の表面微細構造を走査電顕で観察することが可能となり, 本法は酵素抗体法の走査電顕への応用法の1つとなりうると思われた.
著者
森 和郷 小森 昭人 平沢 峻 倉増 敏男 横山 幸生 川瀬 哲彦 尾関 良隆 橋本 正淑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.13, pp.1231-1236, 1963-11-01

昭和35年6月1日より昭和36年9月19日迄の約1年2ヵ月の間に, 札幌医科大学産婦人科外来に於て腟鏡診を中心として行った子宮頚癌の早期診断の結果について報告した. 対象患者は外来診察に於いて既に子宮口糜爛を有する者及び癌の精密検査を希望するもの2000例である. 検査方法は腟鏡診及び細胞診を行い, 腟鏡診にて必要を認めたものに照準切除診を行った. 腟鏡診に使用した機械はMollerの双眼コルポスコープである. 加工腟鏡診として錯酸診, 沃度診及びアドレナリン診を附加した, 判定規準は大凡Hinselmannの分類に従ったが, 一部改変した. 細胞診はPapanicolaouの原法に従い且判定規準も同氏のものを用いた. 組織診はHaematoxylin 染色, 必要に応じてVan Gieson染色を行い, 判定はMullerの分類に従った. 1) 検診患者の年令的分布は, 腟鏡診異常所見群のピークは36〜40才に, 癌性潰瘍群のピークは46〜50才であった. この両者の年代的差異は異常所見からの悪性化の年次的関係を暗示させるものと思われる. 2) 受診患者の自覚症状は不正出血38.5%で第1位, 順次帯下25.9%, 接触出血12.5%, 無症状14.3%, 腰痛5.9%, 月経異常2.8%となり, 接触出血を含めた性器出血が大半を占める. 又無症状のものから6.8%に腟鏡診的異常所見が発見された. 3) 腟鏡診所見の頻度については, 良性所見は全体の84.7%に見られ(転位帯25.9%, 変換帯38.5%, ポリープ5.1%, 腟炎6.0%, 真性糜爛9.1%), 異常所見は全体の15.2%に見られた. (白斑1.9%, 基底2.0%, 分野1.5%, 異型変換帯1.1%, 異型血管5.0%, 癌性潰瘍3.4%). 4) 肉眼的癌又は癌を疑わしめた140例中, 腟鏡診では119例に癌と診断したが, 組織診では117例に侵入癌があった. 即ち肉眼的に23例, 腟鏡診では2例の誤診があった. 5) 腟鏡診と細胞診との比較に於て, 腟鏡診のみで癌と診断したもの94.8%, 細胞診のみで癌と診断したもの97.4%であった. 両者を併用すると100%近い診断率が得られた. 6) 腟鏡診と組織診との関係を腟鏡診的癌母地と見做される所見について観察すると次の如くであった. 即ち白斑50例中侵入癌2例, 異型上皮4例, 基底66例中癌6例, 上皮内癌4例, 異型上皮5例, 分野50例中侵入癌2例, 上皮内癌3例, 異型上皮8例, 異型変換帯63例中上皮内癌2例, 異型上皮3例, 異型血管89例中侵入癌37例, 上皮内癌2例, 異型上皮5例を夫々組織学的に確診した. 又変換帯979例中30例0不穏上皮異型上皮11例が見られたことは注目に値する. 7) 腟鏡診に於ける血管像は特に観察した1433例中異型血管301例(21.0%)が見られた. これらを組織診にて検するに侵入癌78例, 上皮内癌6例が見出され, 悪性率27.9%であった. 以上の観点により, 腟鏡診は子宮頚癌の早期診断への補助診として, 細胞診及び組織診との併用が望ましいと思われる.