著者
関根 嘉香 橋本 芳一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.216-226, 1991-07-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
29
被引用文献数
5

日本は, 冬季から春季の北西季節風が卓越する時期に, 中国大陸の風下にあたる。近年, 中国および韓国の諸都市は急速に工業化, 都市化が進み, 大気汚染問題が生じている。これら大陸都市において発生した大気汚染物質が季節風によって輸送され, 日本の大気質に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで東アジア地域における粒子汚染物質の長距離輸送現象を調べるために, 島根県松江市において大気エアロゾル試料を採取し, その成分分析結果から大陸都市の影響について検討を行った。大気エアロゾル中の成分組成比を韓国ソウル市のものと比較すると, 冬季の松江市における成分組成比はソウル市のものと類似し, 特にPb/Zn比は松江の夏季が0,22であるのに対して冬季は0.83となりソウル市での値と良い一致を示した。Pbは大陸都市において特徴的な有鉛ガソリン自動車から排出されるものであり, 松江市において冬季に観測された大気中Pbの一部は長距離輸送を起源とするものと考えらるれ.そこで拡散ボックスモデルにより長距離輸送の寄与を大まかに推定したところ, 松江市で観測された冬季のPb濃度の一部はソウル市からの長距離輸送による影響であると推定された。またTe/Se比により大陸都市の主要エネルギー源である石炭の燃焼排出物の影響を検討したところ, 同様に大陸都市の影響を受けている可能性が示唆された。
著者
大歳 恒彦 塩見 哲也 戸村 健児 橋本 芳一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.620-625, 1976
被引用文献数
1 3

中性子放射化分析の多元素同時分析における標準試料の簡易調製法及び,その保存性について検討した.大気中浮遊粒子状物質の非破壊分析に用いる標準試料を例として,短寿命核種の11元素及び長寿命核種の24元素について,そのグルーピングによる調製の簡易化をはかるとともに,約半年間の期間における各々の単一元素標準溶液(単一標準液)及び多元素混合標準溶液(混合標準液)の保存性を調べた.その結果,i)混合標準液の保存性は単一標準液と差異が認められない.ii)22元素(銀,アルミニウム,金,バリウム,臭素,カルシウム,塩素,コバルト,クロム,セシウム,ユウロピウム,鉄,ガリウム,インジウム,カリウム,ナトリウム,ニッケル,スカンジウム,サマリウム,チタン,タングステン,亜鉛)については約6か月にわたって濃度が不変であった.iii)11元素(ヒ素,セリウム,銅,ハフニウム,ランタン,ルテチウム,マグネシウム,マンガン,セレン,トリウム,バナジウム)についてはわずかではあるが濃度が減少した.iv)アンチモンについては標準液の保存は不適当であることが結論された.又,混合溶液の使用によって,これまで標準溶液の調製に必要とした延べ人員約10人日の労働力が(2~3)人日に減少した.
著者
金 煕江 大歳 恒彦 橋本 芳一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.T23-T25, 1981-03-05 (Released:2010-01-18)
参考文献数
7

大気中のアンモニウム塩を捕集するためにろ紙へのアンモニアの吸脱着を調べた.実験に用いたろ紙は5種類で,ガラス繊維製ろ紙,石英繊維製ろ紙及びポリカーボネート製ろ紙(0.6μm pore)である.石英繊維製ろ紙ではアンモニアの吸着,ガラス繊維製ろ紙ではアンモニウム塩の脱離が見られたが,ポリカーボネート製ろ紙では吸脱着現象が認められなかった.ろ紙へのアンモニアの吸脱着は,ろ紙のpHに大きく関係し,アンモニウム塩の捕集にはポリカーボネート製ろ紙などのような不活性なろ紙を用いるのが適当であると考えられる.
著者
森上 和哲 田中 茂 橋本 芳一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.1, pp.98-104, 1993
被引用文献数
3

1991年7月-9月にかけて,日本から中東ペルシャ湾までのタンカー航路上において海洋大気中ギ酸および酢酸濃度を測定し,ギ酸および酢酸の海洋における濃度分布およびその挙動について検討を行った。海洋大気中のギ酸濃度は平均1.18ppbv,酢酸濃度は平均0.60ppbvであり,ギ酸濃度が常に酢酸濃度より高かった。ギ酸および酢酸ともに,日中濃度が高く,夜間濃度が低くなるという濃度変化を示した。海洋大気中のギ酸および酢酸の発生源としては,対流圏あるいは陸上からの輸送の影響が大きいことが推測された。ギ酸および酢酸の除去機構としては,OHによる気相分解よりも乾性沈着の方が寄与が大きかった。海表面におけるギ酸および酢酸のフラックスを他のガスと比較したところ,一酸化炭素とほぼ同じレベルとなり,炭素循環においてギ酸および酢酸は重要な役割を果たしている。またギ酸および酢酸は大気中から海表面に取り込まれ,海洋における重要な炭素供給源であると言える。