著者
橋本 貴幸 岡田 恒夫 杉原 勝宣 渡邊 敏文 大西 弓恵 豊田 和典 村野 勇 中安 健 小林 公子 伊藤 万里 大山 朋彦 山口 梢
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0366, 2005

【はじめに】日本人の生活様式は、広範囲な屈曲可動域を要求されることが多いだけでなく、その特徴の一つに正座がある。深屈曲可動域の定義は、第33回日本人工関節学会において130°以上の屈曲を示すとされている。今回、受傷後理学療法までに4ヶ月以上経過し膝関節伸展拘縮を呈した症例の130°から正座に必要な160°までの屈曲可動域制限因子の特異的所見と理学療法について考察を踏まえ報告する。<BR>【対象】膝関節拘縮に伴い屈曲可動域130°以下の制限を呈した5例5膝(左5膝、内2膝は130°までの授動術を施行)を対象とした。性別は、女性2名、男性3名で平均身長162.4±7.8cm、平均体重58.4±7.2kgであった。<BR>【方法】1)膝関節周径計測(裂隙、膝上5・10・15cm、130°屈曲位膝蓋骨上縁の患側と健側差平均値)2)筋力測定(HORGAN社製MICROFET2を用い膝関節角度0°・90°・130°の伸展力を両側各3回施行し平均値を体重で除し指数化し患側/健側比を比較検討した)統計処理には、t検定を用い危険率5%未満を有意とした。3)130°屈曲位での下腿内旋角度計測(外旋位2点・中間位1点・内旋位0点とし指数化した)4)屈曲130°から正座獲得までの期間の4項目について調べ1)2)3)は膝関節の屈曲角度130°獲得時(以下BF)及び正座獲得時(以下AF)の2回計測し比較検討した。<BR>【結果】1)(BF/ AF)は裂隙(2.4/-1.4)5cm(0.3/0.1)10cm(-1.3/-1.1)15cm(-0.3/0.1)130°屈曲位(4.2/1.5)2)130°の場合のみ有意差を認めた(p<0.05)3) BF平均1.6点、AF平均0点4)正座獲得までの期間119.8±59日であった。<BR>【理学療法】1)浮腫管理2)深屈曲位での伸展筋強化 3)下腿内旋可動域拡大4)膝関節伸展機構及び内外側支持機構、関節内靭帯に対しアプローチした。<BR>【考察】深屈曲可動域獲得には、治療期間の長期化と拘縮による膝関節全体の硬さが制限因子である。特異的所見はBF時の130°における周径増大と伸展力低下、下腿内旋制限の3点が挙げられた。格谷らは、正常な深屈曲キネマティックスは、内顆部の2から5mmのlift-off、外顆部の大腿骨外顆の後方移動と大腿脛骨関節の亜脱臼状態及び外側半月板の可動性、膝蓋骨の遠位大腿骨内顆顆間のはまり込み、脛骨内旋・四頭筋腱顆部接触・fad padによる除圧機構が存在すると報告している。理学療法は、浮腫除去、膝伸展力強化・皮膚・膝伸筋機構・内側・外側構成体の伸張性と滑走性・関節内靭帯(ACL/PCL)の長さの獲得、低負荷持続伸張により全例正座可能となった。特異的所見の改善は正常な深屈曲キネマティックスを可能としその運動学的特徴を考慮することが深屈曲可動域獲得に重要である。
著者
林 典雄 橋本 貴幸 鵜飼 建志 長田 瑞穂 篠田 信之
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.228-232, 2003-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3

自然歩行中のフットプリントより分類された, 正常足, 横アーチ低下足, 後足部回内足に対する舟状骨パッドの設置が, 努力下最速歩行時の歩幅に及ぼす影響について検討した. 舟状骨パッド非設置時の歩幅は, 単位身長あたり正常足で平均54.4±6.9%, 横アーチ低下足で平均52.5±2.7%, 後足部回内足で平均52.6±3.9%であった. 横アーチ低下足と後足部回内足は正常足に対しその割合は有意に低値であった (p<0.05%). 舟状骨パッドの設置により, 正常足では平均54.5±7.2%と歩幅の延長は認められなかったが, 横アーチ低下足は平均53.4±3.0%に, 後足部回内足では平均53.7±3.5%となり有意にその割合は増加した (p<0.05). また, その割合は正常足と有意差を認めなかった. 横アーチ低下足, 後足部回内反足等のアライメント異常を有する足部に対する舟状骨パッドは, 荷重に対する足部のアライメント不良を是正することによる屈曲モーメントの効率化と共に, 足部内在屈筋力の増大作用により, 歩幅が延長したと考えられた. しかしながら, 正常足に対する舟状骨パッドの設置ではその効果が乏しく, 処方に当たっては目的の明確化が必要である.
著者
橋本 貴幸 櫻庭 景植
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100032-48100032, 2013

【目的】 我々は、第45回から47回日本理学療法学術大会において、足部内在屈筋を中心とした足趾把持筋力値の測定方法の確立、トレーニング方法の確立、トレーニングによる筋力値向上効果、アーチ形成効果を報告している。本研究の目的は、確立したトレーニング実施前後の運動パフォーマンスの効果について検証することである。【方法】 身体に際立った既往歴のない健常男性12名の左右それぞれ、計24足を対象とした。平均年齢は、29.3±4.6歳、平均身長172.5±7.3cm、平均体重64.9±12.8kgであった。 足部内在屈筋の筋力トレーニング方法は、第46回本学会報告内容同様とし、期間は8週間、頻度は週3回の1日1回、回数は200回、負荷量は3kgで実施した。 運動パフォーマンスの検査項目は、歩行以上の負荷がかかる動的運動を目的に、上方への跳躍力と左右両下肢の同時運動として垂直跳、左右それぞれの前方への跳躍力および推進力として片脚幅跳、疾走力および両下肢の交互運動として50mダッシュタイムの3項目を設定した。計測時は、靴下および運動靴を使用し、各2期測定時は同様のものを着用した。 垂直跳の測定は、測定値0.1cm毎に表示可能な竹井機器工業株式会社制ジャンプ-MD計測器を使用し数値化した。計測は、2回実施しその平均値を採用した。 片脚幅跳は、文部科学省新体力テスト立ち幅跳と同様の計測方法に準じて、計測下肢の爪先から踵までの距離をメジャーにて計測した。計測は、左右それぞれを交互に2回実施し、その平均値を採用した。 50mダッシュタイムの計測として、スタートの合図は、同一検者がスタートラインより掛け声と腕折で実施し、被検者はスタンディングポジションからスタートしゴールラインに胴が到達するまでに要した時間を同一検者がストップウォッチにてタイム計測した。計測回数は2回実施しその平均値を採用した。 統計処理は、トレーニング前後の値を、対応のあるt-testを用い検討した。なお、統計学的有意水準は危険率5%未満とし、統計処理には、SPSS;Version14.0(SPSS JAPAN Inc.)を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科倫理委員会の承認(21-34号)を得たのち、全被検者に本研究の目的、内容について説明し、書面にて同意を得た。【結果】 垂直跳は、トレーニング前が平均54.6±7.3cm、トレーニング後が平均57.9±7.4cmとなり、トレーニング前後で有意な差(p<0.05)がみられた。 片脚幅跳において、左片脚幅跳は、トレーニング前が平均181.6±17.2cm、トレーニング後が平均196.1±13.9cmとなり、トレーニング前後で有意な差(p<0.01)がみられた。右片脚幅跳は、トレーニング前が平均178.7±15.8cm、トレーニング後が平均193.4±16.2cmとなり、トレーニング前後で有意な差(p<0.01)がみられた。 50mダッシュタイムは、トレーニング前が平均7.41±0.52sec、トレーニング後が平均7.08±0.45sec となり、トレーニング前後で有意な差(p<0.01)がみられた。【考察】 動的検査の3項目では、垂直跳高の増大、片脚幅跳距離の増大、50mダッシュタイムの短縮を認め、トレーニング後に運動パフォーマンスの向上が得られた。Rabitaらは、跳躍機能を高める要素は、筋腱構造と内在筋との硬さが重要であり、神経筋機能へのアプローチも重要と述べており、我々が報告している足部内在屈筋の足趾把持力値増大とアーチ形成に伴う足部の剛性を高められた結果であると推察された。Mannらは、全速力で走る場合、内在筋は体重負荷中常に活動していることを報告しており、負荷が高い条件下での足部内在屈筋活動性の向上が推察された。さらに、足関節底屈動作が頻繁に行われ負荷が高い・走、跳動作において、本トレーニングは底屈位での安定性とPIP・MP関節での駆出力を高められた結果、前方推進力および跳躍力の運動パフォーマンスが向上したと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 足部内在屈筋は、着目すべき強化部位である。足部内在屈筋筋力トレーニングは、立位・歩行およびそれ以上の負荷の高い運動パフォーマンス向上に有用である。
著者
橋本 貴幸 中安 健 吉田 幸代 立石 智彦 岡田 恒夫 杉原 勝宣 岡安 利夫 伊藤 万理 大西 弓恵 豊田 和典 村野 勇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.213, 2003

【はじめに】骨化性筋炎は、骨や関節周囲の軟部組織に外傷などの刺激が加わって起こる異常骨化現象である。主な症状は、疼痛と可動域制限で、症例によっては骨切除術を行うこともある。今回、外傷性左大腿血腫後、骨化性筋炎を呈し、膝関節屈曲可動域制限を生じた症例の理学療法を行う機会を得たので考察を踏まえ報告する。【症例紹介】17歳、男性、高校2年生、空手部所属現病歴:平成14年8月24日、部活動練習中、相手方のローキックを左大腿外側部に強打し受傷した。練習を継続していたが疼痛が強くなり8月31日近医受診し、関節穿刺にて4mlの血腫を認めた。同年9月18日紹介にて当院整形外科受診し、外傷性左大腿血腫後骨化性筋炎と診断された。x-p所見は、左大腿骨外側部に紡錘状の骨化像を認めた。CT所見では、左外側広筋に骨化像を認めた。【初診時理学的所見】跛行にて治療室来室、視診・触診では、大腿外側中央に熱感、腫脹、筋硬結、大腿全体に筋スパズムを認めた。疼痛検査では、屈曲、伸展時の運動時痛および大腿外側中央に圧痛を認めた。大腿周計は、膝上15cm、47.0/48.5cmで、膝上10cmでは、43.0/44.5cmと患側の筋萎縮を認めた。膝関節可動域(以下ROM)は、屈曲70°p、伸展0°、lag10°であった。徒手筋力検査は、可動範囲内で、屈曲3+、伸展4-であった。【経過】平成14年9月18日当院受診し、理学療法を開始した。頻度は週2回から3回の指示であった。9月20日ROM屈曲120°、9月24日部活動での筋力トレーニング中に再度受傷部に疼痛を伴いROM屈曲90°と逆戻りとなった。10月19日ROM屈曲155°、正座可能となり理学療法終了となった。【理学療法】I、水平面での股関節・内外転運動、II、外側広筋を狙った軽微抵抗運動、III、大腿直筋ストレッチング、IV、外側広筋クライオストレッチングを施行した。更に運動前には、icingを運動後には、RICE処置を徹底した。【考察】骨化性筋炎の治療は、薬物療法及び局所の熱感と炎症時期が治まる頃より理学療法を開始することが一般的であり、疼痛を伴う可動域訓練は、症状を悪化させる危険がある。今回、治療手順として、受傷周辺の軟部組織、主に二関節筋の軽い収縮とストレッチングを施行し、柔軟性を引き出した。これは、受傷部の疼痛に伴う周辺組織の防御性収縮に伴う二次的な可動域制限を排除する目的である。次に、CT所見で受傷が確認された外側広筋にクライオストレッチングを施行した。これは、冷却による無感覚化に伴う疼痛緩和、筋スパズムの軽減の効果が期待され、実際の可動域制限因子である外側広筋の伸張性を獲得する目的である。これら治療により、関節可動域の二次的制限因子を排除することで、一次的制限因子の治療が効果的に行えたこと、運動後のRICE処置による炎症反応を軽減できたことが加わり、骨化を助長することなく、早期に正常可動域に回復することができたと考えられた。