著者
櫻井 文教
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.99-105, 2019-03-25 (Released:2019-06-25)
参考文献数
36

1990年に米国にて、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に対して世界で最初の遺伝子治療が実施されてから、25年以上が経過した。この間、素晴らしい治療効果が観察された臨床例もあったが、期待されたほどの治療効果が得られた例は限られており、また重篤な副作用も報告されたことから、遺伝子治療は冬の時代を迎えた。しかし、その後の研究者の絶え間ない努力により、2012年のリポタンパクリパーゼ発現アデノ随伴ウイルスベクター(商品名Glybera)の承認を皮切りに、7種の遺伝子治療薬が相次いで承認され、いよいよ遺伝子治療は現実のものとなってきた。そこで本稿では、ウイルスを基盤とした遺伝子治療薬の開発の現状ならびに今後の展望について紹介する。
著者
水口 裕之 立花 雅史 櫻井 文教
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.421-428, 2022-11-25 (Released:2023-02-25)
参考文献数
25

非増殖型アデノウイルスベクターは、in vivoへの直接投与において優れた遺伝子導入活性を示すことから、病原体由来の抗原タンパク質を発現させることにより、新興・再興感染症に対するワクチンベクターとして積極的な開発が進められてきた。最近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンとして、欧米中露において迅速な実用化がなされた。本稿では、アデノウイルスベクターの特性、COVID-19に対するアデノウイルスベクターワクチンの特徴、およびアデノウイルスベクターワクチンの可能性について解説する。
著者
櫻井 文教 水口 裕之
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.24-30, 2023-01-25 (Released:2023-04-25)
参考文献数
24

がん細胞特異的に感染し、がん細胞を死滅させることで抗腫瘍効果を示す腫瘍溶解性ウイルスが、次世代の抗がん剤として大きな注目を集めている。2021年には、わが国においても腫瘍溶解性ヘルペスウイルスが承認(条件および期限付き承認)を受けた。一方で腫瘍溶解性ウイルスは、それ自体が自然免疫を活性化させるとともに、がん細胞よりDamage-associated molecular patterns(DAMPs)やがん抗原を放出させることで抗腫瘍免疫を活性化し、それが腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果に大きく寄与することが明らかとなってきた。また、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害剤などのがん免疫療法との併用が、高い相乗効果を示すことも報告されている。本稿では、腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍免疫活性化とがん免疫療法との併用療法について紹介したい。
著者
櫻井 文教 水口 裕之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1099-1103, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
13

B型肝炎ウイルス(HBV)の感染を原因とするB型肝炎は、最終的に肝硬変、肝癌へと進行することから、革新的治療薬の開発が求められている。しかし現在、HBVが感染可能な培養細胞はわずかであり、新規治療薬の開発ならびにHBV感染機構の解明に向けては、利便性の高いin vitro感染評価系の開発が急務である。一方でヒトiPS細胞由来肝細胞は、肝細胞に感染する病原体の感染評価系として適した特性を有している。本稿では、ヒトiPS細胞由来肝細胞のHBV感染評価系としての有用性について紹介する。