著者
歌島 昌由 Utashima Masayoshi
出版者
宇宙開発事業団
雑誌
宇宙開発事業団技術報告 = NASDA Technical Memorandum (ISSN:13457888)
巻号頁・発行日
pp.1冊, 1995-03-24

本レポートは、1992年7月より「フォボス探査研究会」(仮称)で検討した解析資料をまとめた。「フォボス探査研究会」は、日本の惑星探査の柱の一つとして、惑星の小衛星(火星のフォボスやダイモンなど)や小惑星などの小天体の観測を掲げて進むべきとの考えを持つ研究者達で構成された私的な研究会である。フォボス探査計画の概要は、以下の通りである。(1)H-2ロケットで打ち上げて、火星周回の長楕円軌道に投入する。(2)ダイモスをフライバイで観測する。(3)長楕円軌道をフォボス軌道とほぼ同じ略円軌道に変換する。(4)フォボス周回軌道(フォボス・ランデブー軌道)を実現して、約1火星年に渡りフォボス観測を行なう。(5)フォボス表面に接近して詳細な観測を行ない、その後、着地して現場観測を行なう。(6)可能ならば、サンプル・リターンを行なう。本レポートでは、(4)のフォボス・ランデブー軌道の設計・解析と、(5)の一部であるフォボス近傍観測軌道の設計・解析について記す。
著者
歌島 昌由 Utashima Masayoshi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-05-008, 2005-11-30

世界のラグランジュ点ミッションについて。1978年8月打上げのNASAのISEE-3(International Sun-Earth Expiorer-3)により、ラグランジュ点を利用する新しいミッションの世界が開かれた。ISEE-3は太陽-地球系L1点のハロー軌道に投入された。太陽-地球系L1点は主に太陽観測に利用され、1995年12月に打ち上げられたESA/NASA共同ミッションのSOHO(Solar Heliospheric Observatory)が現在もハロー軌道から太陽観測を続けている。太陽-地球系のL2点においては、2001年6月に打ち上げられたNASAのWMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)が最初のミッションである。太陽-地球系のL2点は、その位置の特性から天文衛星に適した場所であり、今後もHerschel(ESA, 2007年打上げ予定)、Planck(ESA, Herschelと相乗り打上げ)、JWST(NASA, 2011年打上げ予定)、GAIA(ESA, 2011年打上げ予定)などの天文衛星の打上げが計画されている。日本の将来計画。日本においても、太陽-地球系L2点から観測する幾つかの天文衛星の検討が行なわれている。赤外線天文衛星SPICA(Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics)、高精度位置天文観測衛星JASMINE(Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration)、太陽系外地球型惑星探査衛星JTPF(Japanese Terrestrial Planet Finder)などである。JASMINEはサーベイ観測型ミッションであり、サイズの小さいリサジュ軌道が適しているが、SPICA、JTPFなどはポイント観測型ミッションであり、どちらかと言うとサイズの大きいハロー軌道が適している。2005年3月に発表されたJAXA長期ビジョン-JAXA2025-には、「月や地球重力圏界(ラグランジュ点)を太陽系に広がる人類活動のための新しい場として活用する「深宇宙港構想」の実現をめざす。」という記述が盛り込まれている。ラグランジュ点軌道の保持の方法。太陽-地球系L1、L2点周りの軌道は、発散時定数が約23日の不安定軌道であるため、少なくとも数ヶ月間隔の精密な軌道保持制御が必須である。しかしながら、姿勢制御系などからの大きな外乱がなければ、年間1m/s程度のΔVで軌道保持できる。これを実現するため、正確な摂動モデルの下でΔVゼロの基準軌道を前もって設計しておき、それに追従する様に数ヶ月間隔で保持制御が行なわれている。欧米での基準軌道の設計法。欧米では円制限三体問題の3次以上の解析解を求め、それを初期軌道として、各半周軌道の位置萌速度のmatching条件を満たす解を数値的に求める事で、ΔVゼロの基準軌道を設計している。この方式はSOHOに対して初めで適用された。本報告のハロー基準軌道の設計法。上記の欧米の方法は高次解析解を必要とする難点があるため、本報告では、非線型計画問題の解法の1つである逐次2次計画法(SQP法; Sequential Quadratic Programming)を使い、高次解析解を求める事なく、ΔVゼロのハロー基準軌道を設計する方法を示す。摂動としては、地球公転軌道の離心率の影響と月潮汐力を考慮した。この他の摂動として、太陽輻射圧と惑星潮汐力があるが、輻射圧はほぼ一定の加速度であり惑星潮汐力は小さいので、本報告の手法は実際の太陽系モデルにも適用できると考えられる。なお、本報告は、2005年2月に発行された「太陽-地球系L2点周りのリサジュ基準軌道の設計」のハロー軌道版である。
著者
歌島 昌由
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.19-23, 2003 (Released:2003-11-14)
参考文献数
5

電気推進系による宇宙太陽発電システム(SSPS:Space Solar Power Systems)の軌道間輸送の新しい制御法を提案する.この方法では, SSPSをクリスマス島などの赤道に近い場所から打ち上げ, 軌道変換中の推力方向のピッチ角とヨー角を共にゼロに固定し, 軌道変換の後半において推力オフ期間を近地点中心に最適に設ける.この方法は, SSPSのような大型の宇宙機にとって, 推力方向制御のための質量の大きなモーメンタムホィールが不要という利点がある.
著者
歌島 昌由 川口 淳一郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.50, no.580, pp.210, 2002 (Released:2003-09-02)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

The stability of the orbits around the sphere of influence of the secondary body in the circular restricted three-body problem is discussed. This orbit is called “Pseudo Orbit” here. Though there exists a stability limit for the inclination of the pseudo orbit, the whole story of the instability was not resolved. In this paper, it is shown at first that the out-of-plane motion of the pseudo orbit causes disturbances in the in-plane motion by the method of virtual energy. Then, it is shown that the disturbances are governed by the Mathieu’s equation which has the periodic coefficient, and the rigorous mathematical property of the instability of the pseudo orbit is presented.
著者
歌島 昌由
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.4-45, 2005-11

世界のラグランジュ点ミッションについて 1978 年8 月打上げのNASA のISEE-3 (International Sun-Earth Explorer-3)により、ラグランジュ点を利用する新しいミッションの世界が開かれた。ISEE-3 は太陽-地球系L1 点のハロー軌道に投入された。太陽-地球系L1 点は主に太陽観測に利用され、1995 年12 月に打ち上げられたESA/NASA 共同ミッションのSOHO (Solar Heliospheric Observatory)が現在もハロー軌道から太陽観測を続けている。太陽-地球系のL2 点においては、2001 年6 月に打ち上げられたNASA のWMAP (Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)が最初のミッションである。太陽-地球系のL2 点は、その位置の特性から天文衛星に適した場所であり、今後もHerschel (ESA, 2007 年打上げ予定), Planck (ESA, Herschel と相乗り打上げ), JWST (NASA, 2011年打上げ予定), GAIA (ESA, 2011 年打上げ予定)などの天文衛星の打上げが計画されている。日本の将来計画 日本においても、太陽-地球系L2点から観測する幾つかの天文衛星の検討が行なわれている。赤外線天文衛星SPICA (Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics), 高精度位置天文観測衛星JASMINE (Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration), 太陽系外地球型惑星探査衛星JTPF (Japanese Terrestrial Planet Finder)などである。JASMINE はサーベイ観測型ミッションであり、サイズの小さいリサジュ軌道が適しているが、SPICA, JTPF などはポイント観測型ミッションであり、どちらかと言うとサイズの大きいハロー軌道が適している。2005 年3 月に発表されたJAXA 長期ビジョン . JAXA 2025 . には、『月や地球重力圏界(ラグランジュ点)を太陽系に広がる人類活動のための新しい場として活用する「深宇宙港構想」の実現をめざす。』という記述が盛り込まれている。ラグランジュ点軌道の保持の方法 太陽-地球系L1、L2 点周りの軌道は、発散時定数が約23 日の不安定軌道であるため、少なくとも数ヶ月間隔の精密な軌道保持制御が必須である。しかしながら、姿勢制御系などからの大きな外乱がなければ、年間1m/s 程度のΔV で軌道保持できる。これを実現するため、正確な摂動モデルの下でΔV ゼロの基準軌道を前もって設計しておき、それに追従する様に数ヶ月間隔で保持制御が行なわれている。欧米での基準軌道の設計法 欧米では円制限三体問題の3 次以上の解析解を求め、それを初期軌道として、各半周軌道の位置・速度のmatching 条件を満たす解を数値的に求める事で、ΔV ゼロの基準軌道を設計している。この方式はSOHO に対して初めて適用された。本報告のハロー基準軌道の設計法 上記の欧米の方法は高次解析解を必要とする難点があるため、本報告では、非線型計画問題の解法の一つである逐次2 次計画法 (SQP 法; Sequential Quadratic Programming)を使い、高次解析解を求める事なく、ΔV ゼロのハロー基準軌道を設計する方法を示す。摂動としては、地球公転軌道の離心率の影響と月潮汐力を考慮した。この他の摂動として、太陽輻射圧と惑星潮汐力があるが、輻射圧はほぼ一定の加速度であり惑星潮汐力は小さいので、本報告の手法は実際の太陽系モデルにも適用できると考えられる。なお、本報告は、2005 年2 月に発行された『太陽-地球系L2 点周りのリサジュ基準軌道の設計』のハロー軌道版である。