著者
春山 純一 橋爪 光 鹿山 雅裕 長岡 央 仲内 悠祐 Haruyama Junichi Hashizume Ko Kayama Masahiro Nagaoka Hiroshi Nakauchi Yusuke
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:24332216)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-18-001, pp.1-8, 2018-06-20

将来の有人月面活動を目指した探査の重要課題の一つとして, 「月の極の水氷」の存否, その量の調査が挙げられる. 月の極に水氷が期待されるのは, 月に対して, いくつかの水の供給源が存在する可能性があり, 月面に供給された水が, 濃集し, かつまたは安定的に存在できる可能性が, 極低温域となる永久陰にあるからである. しかし, 隕石や彗星の落下衝突した際の衝撃加熱で失われることもあるだろう. 更に, 現在の永久陰は過去においては永久陰でなかった可能性が指摘されており, 地質学的に長期間永久陰となっていて水氷を集積できる場所は無いとも言われる. 実際, これまでの探査機による観測では, 水氷発見を報告するものがあるが, 月の極の水氷の存在について決定的証拠を出したといえるものがない. データや解釈を整理してみると, 数%もの「水氷」の存在というデータの解釈には多くの難点があるともいえる. 一方で, 太陽風起源の水素が月極域に打ち込まれ留まっている可能性もある. 最新の中性子分光計による計測結果だと, 最も濃集しているところ(40K以下の永久陰など)で470ppm程度と報告されているが, この水素濃集見積もりは(水の形を取るにしても)妥当なところではないかと思われる. 月は, 人類が宇宙へと活動の場を拡げていくときの橋頭堡で有り, その探査は重要不可欠である. だからこそ, 今後, 有人月面活動を目指した探査について議論, 企画していくうえで, 最新の科学的知見を十分に加味, 考慮した上で進めていくことが必要である.
著者
中安 英彦 塚本 太郎 南 吉紀 石本 真二 藤井 謙司 栗田 充 青木 良尚 麥谷 高志 鷲谷 正史 山本 行光 石川 和敬 冨田 博史 元田 敏和 二宮 哲次郎 濱田 吉郎 舩引 浩平 津田 宏果 牧 緑 小野 孝次 廣谷 智成 LIFLEXチーム Nakayasu Hidehiko Tsukamoto Taro Minami Yoshinori Ishimoto Shinji Fujii Kenji Kurita Mitsuru Aoki Yoshihisa Mugitani Takashi Washitani Masahito Yamamoto Yukimitsu Ishikawa Kazutoshi Tomita Hiroshi Motoda Toshikazu Ninomiya Tetsujiro Hamada Yoshiro Funabiki Kohei Tsuda Hiroka Maki Midori Ono Takatsugu Hirotani Tomonari LIFLEX Team
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-10-004, 2010-09-30

宇宙航空研究開発機構では,次世代の再使用宇宙輸送システムの様々なコンセプトについて検討してきたが,その中の有望なものの一つとしてリフティングボディ形状の往還システムがある.これは翼をもたず,胴体の形状によって揚力を発生するタイプの機体であり,構造の軽量化,高い容積効率,極超音速域での空力加熱特性の観点から優位性があるとされている.一方,リフティングボディ形状は揚抗比が小さく,また低速時の安定性/ 制御性が弱いため,ALFLEX(小型自動着陸実験1996)のような翼胴型の機体に比較して滑走路への進入/ 着陸時に困難がある.そこで,リフティングボディ形状の往還システムを実現するうえで最も重要な技術課題の一つとなっている自動着陸技術の蓄積を主目的とした飛行実験を,小規模で低コストな機体を用いて行うことを計画した.本報告では,飛行実験計画および実験システムの概要と,地上試験やヘリコプタを用いた懸吊飛行試験を含む開発のプロセスについて詳述する.
著者
井澤 克彦 市川 信一郎 Izawa Katsuhiko Ichikawa Shinichiro
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-07-025, 2008-02-29

フライホイールは衛星の姿勢制御に欠くことのできない機器であり、姿勢の喪失は電力、ミッションの喪失に直結することから、フライホイールには非常に高い信頼性が要求される。しかしながらフライホイールに関する重大な不具合がいくつかの衛星プロジェクトの開発段階と軌道上運用段階で発生しているのが現状であり、確実に動作するフライホイールが期待されている。一方、観測衛星をはじめとして、衛星の姿勢・指向制御要求が高精度化し、さらに高速でかつ大きな姿勢変更が求められるなど、フライホイールに対する要求(高出力トルク、振動擾乱の低減など)が近年高度化しつつある。これら高度化要求と前述の高信頼度要求を同時に満足することが求められている。上述背景のもと、宇宙航空研究開発機構では、2001年度より、当時、宇宙3機関(宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団)連携協力事業の一環として、高性能かつ高信頼性の次世代高性能フライホイールに関する研究(次世代玉軸受ホイールの研究、磁気軸受ホイールの研究)をスタートさせ(現在は宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部にて研究を継承している)、現在までに中・大型サイズのタイプM/Lの開発を完了している。本資料は宇宙用フライホイールの原理・設計を概説するとともに、高速回転ホイール開発研究で得た技術知見を整理したものである。
著者
木村 俊哉 高橋 政浩 若松 義男 長谷川 恵一 山西 伸宏 長田 敦 Kimura Toshiya Takahashi Masahiro Wakamatsu Yoshio Hasegawa Keiichi Yamanishi Nobuhiro Osada Atsushi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-04-010, 2004-10-25

ロケットエンジン動的シミュレータ(Rocket Engine Dynamic Simulator: REDS)とは、ロケットエンジンの始動、停止、不具合発生時などのエンジンシステム全体の過渡特性を、コンピュータを使って模擬し評価する能力を持った計算ツールである。REDSでは、ロケットエンジンの配管系を有限個の配管要素の連結(管路系)としてモデル化し、この管路系に対しボリューム・ジャンクション法と呼ばれる手法を用いて質量、運動量、エネルギーの保存方程式を時間発展的に解くことによって管路内(エンジン内)における、燃料、酸化剤、燃焼ガスの流動を計算する。ターボポンプ、バルブ、オリフィスなどの流体機器はボリューム要素やジャンクション要素にそれらの対応する作動特性を持たせることで動作を模擬する。燃料や酸化剤の物性については、ロケットエンジンの特殊な作動範囲に適応するよう別途外部で開発された物性計算コード(GASPなど)を利用するが、そのためのインターフェースを備える。燃焼ガスの物性計算については、熱・化学平衡を仮定した物性計算を行い、未燃混合ガスから燃焼状態、燃焼状態から未燃混合状態への移行計算も行う。ターボポンプの運動は、ポンプやタービンの特性を考慮したポンプ動力項、タービン動力項を加速項とする運動方程式を流れの方程式と連立して時間発展的に解くことによって求める。未予冷区間においては、配管要素と流体との間の熱交換を、熱伝導方程式を解くことによって求め、再生冷却ジャケットにおいては、燃焼ガスから壁、壁から冷却剤への熱伝達を考慮する。燃焼室、ノズル内においては、燃焼ガス流れの分布から熱流束の分布を考慮する。今回のバージョンでは、2段燃焼サイクルを採用した日本国の主力ロケットLE-7AおよびLE-7の始動、停止過程時における動特性を模擬することを目的にエンジンモデルを構築し、実機エンジン燃焼試験の結果と比較することでシミュレータの検証を行った。ただし、ボリューム要素の組み合わせは任意であり、エキスパンダーサイクルなどの新しいエンジンシステムに対しても適用が容易に出来る。計算の高速化のために2CPU以上用いた並列処理への対応を行い、ネットワークで接続した複数のPC(PCクラスタ)を用いた並列計算も可能である。
著者
歌島 昌由 Utashima Masayoshi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-05-008, 2005-11-30

世界のラグランジュ点ミッションについて。1978年8月打上げのNASAのISEE-3(International Sun-Earth Expiorer-3)により、ラグランジュ点を利用する新しいミッションの世界が開かれた。ISEE-3は太陽-地球系L1点のハロー軌道に投入された。太陽-地球系L1点は主に太陽観測に利用され、1995年12月に打ち上げられたESA/NASA共同ミッションのSOHO(Solar Heliospheric Observatory)が現在もハロー軌道から太陽観測を続けている。太陽-地球系のL2点においては、2001年6月に打ち上げられたNASAのWMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)が最初のミッションである。太陽-地球系のL2点は、その位置の特性から天文衛星に適した場所であり、今後もHerschel(ESA, 2007年打上げ予定)、Planck(ESA, Herschelと相乗り打上げ)、JWST(NASA, 2011年打上げ予定)、GAIA(ESA, 2011年打上げ予定)などの天文衛星の打上げが計画されている。日本の将来計画。日本においても、太陽-地球系L2点から観測する幾つかの天文衛星の検討が行なわれている。赤外線天文衛星SPICA(Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics)、高精度位置天文観測衛星JASMINE(Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration)、太陽系外地球型惑星探査衛星JTPF(Japanese Terrestrial Planet Finder)などである。JASMINEはサーベイ観測型ミッションであり、サイズの小さいリサジュ軌道が適しているが、SPICA、JTPFなどはポイント観測型ミッションであり、どちらかと言うとサイズの大きいハロー軌道が適している。2005年3月に発表されたJAXA長期ビジョン-JAXA2025-には、「月や地球重力圏界(ラグランジュ点)を太陽系に広がる人類活動のための新しい場として活用する「深宇宙港構想」の実現をめざす。」という記述が盛り込まれている。ラグランジュ点軌道の保持の方法。太陽-地球系L1、L2点周りの軌道は、発散時定数が約23日の不安定軌道であるため、少なくとも数ヶ月間隔の精密な軌道保持制御が必須である。しかしながら、姿勢制御系などからの大きな外乱がなければ、年間1m/s程度のΔVで軌道保持できる。これを実現するため、正確な摂動モデルの下でΔVゼロの基準軌道を前もって設計しておき、それに追従する様に数ヶ月間隔で保持制御が行なわれている。欧米での基準軌道の設計法。欧米では円制限三体問題の3次以上の解析解を求め、それを初期軌道として、各半周軌道の位置萌速度のmatching条件を満たす解を数値的に求める事で、ΔVゼロの基準軌道を設計している。この方式はSOHOに対して初めで適用された。本報告のハロー基準軌道の設計法。上記の欧米の方法は高次解析解を必要とする難点があるため、本報告では、非線型計画問題の解法の1つである逐次2次計画法(SQP法; Sequential Quadratic Programming)を使い、高次解析解を求める事なく、ΔVゼロのハロー基準軌道を設計する方法を示す。摂動としては、地球公転軌道の離心率の影響と月潮汐力を考慮した。この他の摂動として、太陽輻射圧と惑星潮汐力があるが、輻射圧はほぼ一定の加速度であり惑星潮汐力は小さいので、本報告の手法は実際の太陽系モデルにも適用できると考えられる。なお、本報告は、2005年2月に発行された「太陽-地球系L2点周りのリサジュ基準軌道の設計」のハロー軌道版である。
著者
高橋 孝 上田 裕子 平野 聡 邑中 雅樹 Runtao Qu 小堀 壮彦 Takahashi Takashi Ueda Hiroko Hirano Satoshi Muranaka Masaki Runtao Qu Kobori Takehiko
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-04-017, 2005-01-31

It is aimed that a simulation framework of Spacecraft Simulation Environment (SSE) can be commonly applied not only to Full Software Simulations (FSS) but also to Processor-In-the-Loop Simulations (PILS) and to Hardware-In-the-Loop Simulations (HILS), while various spacecraft simulators are generally tailor-made at individual phases of development. Prior to the actual implementation of SSE, the framework for FSS and PILS was designed, and its advantage to spacecraft simulations using an experimental system was demonstrated. In this study, implemented was an experimental system for PILS, and feasibility of the framework using the system was demonstrated. Real-time tasks working on microITRON communicate with the rest of spacecraft simulator through Java-based middleware Hirano's Object Request Broker (HORB) via distributed communication interfaces (I/Fs) written in Java. These I/Fs are designed to be commonly applied to both FSS and PILS. Also implemented was a tool called Java-microITRON Bridge GENerator (JBGEN) to automatically generate Java-microITRON communication programs from the I/Fs. Furthermore, MemorySaving HORB is developed in order to avoid communication latency.
著者
津田 宏果 飯島 朋子 野田 文夫 Tsuda Hiroka Iijima Tomoko Noda Fumio
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-09-001, 2009-07-31

ヒューマンエラーに対抗する有効手段として、航空機乗員に対してCRM訓練が実施されている。訓練の妥当性を検証し、訓練内容を改善していくためには訓練による効果を継続・調査することが必要である。一方、航空機乗員においてどのようなCRMスキルが発揮され、また欠如されているかを把握することも、安全な運航を達成するために重要である。JAXAではCRMスキルを実践的なものとして定着化させるため、CRMを実践するための乗員の行動指標(指標として明確に示される具体的な行動)を開発してきたが、本研究ではこの行動指標を用いて、乗員のCRMスキル行動を計測する手法を提案・開発した。開発した計測手法は数回の改良を重ね、最後に模擬LOFTを通して評価を行った。
著者
元田 敏和 塚本 太郎 南 吉紀 濱田 吉郎 Motoda Toshikazu Tsukamoto Taro Minami Yoshinori Hamada Yoshiro
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-10-007, 2010-11-30

リフティングボディ形状の機体は,宇宙往還機の候補の一つとして考えられている.翼胴形状の航空機に比べて再突入時の空力加熱に比較的強い構造であること,より大きなペイロード容積を確保できること,ロケット先端のフェアリング内に収まりやすい形状であることなど有利な点が多い.揚力を利用して飛行するため,カプセル形状に比べればより柔軟な飛行制御が可能となる.その一方で,揚抗比が極めて小さく,飛行性能は通常の航空機に比べ劣り,低速での飛行制御が困難である.特に滑走路への着陸では,低速であるが精度の高い飛行制御が要求される.この技術課題の克服に向け,小型模型を用いたリフティングボディ飛行実験(LIFLEX)が計画された.飛行実証においては,着陸性能を確保する飛行制御系が技術開発の中心となる.実際に想定される外乱や機体モデル誤差などの様々な不確定要因の存在下において,求められる着陸性能を確保する必要がある.本稿では誘導制御系設計の概要について触れた後に,数値シミュレーションによるシステム評価と設計の改善について述べる.まず様々な不確定要素を組み込んだシステムを,数値シミュレーションにより評価した.次に,非線形システムの設計パラメタを直接最適化するために開発した手法を用い,不確定性に対するロバスト性を改善した.さらに今後の開発の参考資料とするため,小型模型実験機である本実験機固有の設計条件を見直し,より一般のシステムに適用可能な条件を用いて,システムを評価した.
著者
木元 一広 Kimoto Kazuhiro
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-15-003, pp.1-15, 2015-12-15

Redmineはさまざまな業務に利用できる優れたチケット管理システムで,近年注目されているOSSの一つである.JAXA スーパーコンピュータ活用課では,2014年のJSS2 SORAスーパーコンピュータ導入を機にRedmineをベースにしたCODAシステムを構築・運用している.本稿では,Redmineの利用事例としてCODAを紹介する.合わせて,Redmineを一層効果的に活用するため,CODAの構築・運用経験から見いだされた定義や設定,運用の工夫を紹介する.