- 著者
-
武内 有城
- 出版者
- 日本臨床外科学会
- 雑誌
- 日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.7, pp.1909-1915, 2010 (Released:2011-01-25)
- 参考文献数
- 8
- 被引用文献数
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Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする組織固定剤で,皮膚の悪性腫瘍などのchemosurgeryに応用されている.今回,われわれは切除不能の進行乳癌で皮膚潰瘍から出血を繰り返した症例と進行肺癌の腹部皮膚転移の自壊による悪臭と浸出液,疼痛の著明な症例に使用し,有用であったので報告する.症例1は60歳代女性で,左乳癌潰瘍部(papillotubular carcinoma)からの出血後失神をきたし,緊急入院となった.乳癌は11×6×11cm,T4N3M1 Stage IVで,根治手術不能のためにホルモン化学療法を施行した.潰瘍からの出血が続くため,Mohsペーストを施行し,24時間で出血は止まり,1週間で完全壊死となり,約2週間で自己融解から自然脱落した.症例2は,60歳代男性で進行肺癌(squamous cell carcinoma,T2N2M1 Stage IV)の腹部の皮膚転移で悪臭と浸出液,疼痛が著明で,患者のQOL(quality of life)を低下させていたが,ペースト使用5日目で悪臭と浸出液は消失し,ペースト塗布と切除を繰り返して約4週間で腫瘍部は平坦化し,疼痛も軽減した.