著者
田中 幸子 平岩 和美 武本 秀徳 岡崎 満樹 大塚 和宏 霜井 哲美
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0556-G0556, 2005

【はじめに】理学療法士を目指し胸膨らませて入学して初めに学ぶことは,理学療法士教育の第1ページとなる重要な意味を持つ。しかし,実際には1年前期のカリキュラムは専門分野が少なく,基礎分野がほとんどの時間を占める。本校ではできるだけ早い時期に専門分野に触れられるよう,生活環境論を1年生で教えてきた。今回アンケートをもとに,1年生で取り組む利点と今後の課題を紹介したい。<BR>【経過】生活環境論は1年生前期に行われた。その内容は講義形式とグループ発表形式で構成した。グループは,日本社会が抱える生活環境・居住環境・子供の生活環境・障害者の生活環境・女性の生活環境・高齢者の生活環境・介護保険・生活習慣病と生活環境,の中から希望を募りグループ割をした。発表は1時限(90分)に2グループとし,その中に質疑応答も含めた。発表終了時には各グループの発表に対して無記名にてアンケートを取り,グループへのコメントを記入させた。コメント部分は切り取って発表者に渡し,フィードバックし,最後に発表者の感想を提出させまとめとした。<BR>【対象と方法】対象は本校理学療法学科1年生全員。アンケート調査を生活環境論の授業終了後に無記名で行った。回収率は100%であった。調査は2年間,同様に行われた。アンケートの内容は授業開始前にどれくらいキーワードを知っていたか,グループ活動に費やした時間と場所,積極的に参加できたか、についてであった。<BR>【結果と今後の課題】1年生で授業を受ける前に知っていた言葉は,バリアフリー(99%),QOL(47%),ADL(27%),ユニバーサルデザイン(27%)の順であった。このことより1年生から生活環境論に対する学習レディネスはあると言えよう。授業に積極的に参加できましたか,との問いには,「はい(55%),いいえ(5%),どちらでもない(35%)」,と半数以上が積極的に参加できたと答えた。1回のグループ学習の準備に要した時間は11時間以上38%,6-10時間29%,1-5時間33%であった。<BR> 1年生から生活環境論を学ぶ意義としては,以下のことがあげられる。日常生活(活動)に制限が生ずるとき,患者に原因があるとする医学モデルの考え方と生活環境に原因があるとする社会モデルの考え方があるが,理学療法の講義はほとんどが,医学モデルとなっている。早い時期に社会モデルの考え方を知ることは幅広い視野にたった理学療法士育成に役立つ。1年生で教えることの課題としては疾患についての知識が乏しく,各論が理解しにくいことがあげられるが,これは後に「日常生活活動」(3年次)を教える教師が1年次の生活環境論も担当することによって,卒業までに理解できるように設定し,解決している。<BR> 今後さらに学生が積極的に学習に取り組める授業を模索していきたい。