著者
吉村 大輔 吉村 理江 水谷 孝弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.469-477, 2023 (Released:2023-05-22)
参考文献数
27

Helicobacter pylori(Hp)の感染率の低下を反映し従来稀とされたHp未感染胃癌の増加が報告されている.自験例の解析ではHp未感染胃癌は(1)噴門部(食道胃接合部)腺癌,(2)胃底腺領域とくにU,M領域に好発する胃型形質の低異型度腺癌,(3)胃角前庭部の胃底腺と幽門腺境界領域に好発する印環細胞癌,(4)幽門腺領域に好発ししばしば腸型形質を呈する分化型腺癌,に分類可能であった.噴門部腺癌の多くが進行癌であったのに対して,その他の領域は大部分がESDによる治療が可能であった早期癌で,その進行が緩徐である可能性も示唆された.Hp未感染胃においては部位,腺領域ごとの癌の好発部位と形態および組織型の特徴をふまえた観察が効率的と考える.
著者
加藤 浩 神宮司 誠也 高杉 紳一郎 岩本 幸英 吉村 理 新小田 幸一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.178-184, 2002 (Released:2018-09-25)
参考文献数
24
被引用文献数
4

本研究の目的は,股関節疾患患者の中殿筋を対象に,従来の静的表面筋電図周波数解析に加え,新たに歩行時の動的表面筋電図周波数解析を行い,その結果を筋組織学的レベルから検証することである。当院で手術を受けた股関節疾患患者11症例を対象とした。手術直前に100・50%MVCにおける等尺性股関節外転運動を行わせ,中殿筋筋腹部を電極部位とした静的な表面筋電図測定を行った。又,10m自由歩行を行わせ,動的な表面筋電図測定を行った。そして,wavelet変換を用いた静的・動的表面筋電図周波数解析を行った。手術中に中殿筋筋生検を行いATPase染色による筋線維のタイプ分類(typeI及びtypeII)を行った。さらに画像解析ソフトによる筋線維横断面の形態計測を行った。50%MVC時のパワースペクトルとtypeII線維数の間には,正の相関が認められた。また,歩行時の立脚期初期のパワースペクトル変化は,typeII線維の線維径とtypeII線維横断面の総面積比率が関与していた。wavelet変換を用いた静的・動的周波数解析は,筋線維組成比やtypeII線維の萎縮といった組織学特徴を推測する有効な手段になりうるものと思われた。
著者
吉村 理希 岩尾 洋英 金森 健彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会年次大会講演予稿集 2017 (ISSN:13431846)
巻号頁・発行日
pp.23E-4, 2017 (Released:2020-01-23)

Fuji Television has developed the equipment “SDI-Hyper” which can be transmitted the carrier of one transponder (36MHz) or IP at high speed (960Mbps) via HD circuit. This equipment is useful in site diversity of SNG and transmission of 4K, file.
著者
秋信 真太郎 冨吉 政貴 吉村 理希
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.162-168, 2020 (Released:2019-12-24)
参考文献数
4

衛星回線および運用の高効率化を実現したSNGシステムを開発した.多チャネル化による周波数効率の改善とSNGとしては初めて回線をIPネットワーク化したことで,IP伝送装置との連携等,利便性が大幅に向上した.また,一部の帯域にTDMA方式を採用し,車載局と固定局間のIP双方向通信を実現し,耐災性に優れた連絡回線(IP電話)を構築した.さらにこの回線を用いることで,衛星回線を通じて車載局からインターネット接続が可能となり,大災害発生時に公衆回線が利用できない場合でも,車載局が情報ハブとして機能することで報道制作等における利便性が大きく向上した.また運用面では,システムによる自動化を導入したことで大幅な効率化も実現した.
著者
こまたん 畑中 優美 吉村 理子
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.49-68, 2016-11-01 (Released:2017-11-03)
参考文献数
7
被引用文献数
4

神奈川県大磯町高麗山で2015年4月18日~10月10日まで野外のアオバトの鳴きの声を録音して鳴き声の解析を行った。併せて保護アオバトの鳴き声を録音して鳴き声に個体差があるのかを検討した。1)アオバトの鳴き声にはオアオ鳴きとポポポ鳴きの二種類があるのを確認した。調査地でのオアオ鳴きは5月2日の鳴き声初認~10月10日の最終調査日まで聞かれ、ポポポ鳴きは5月2日のオアオ鳴き初認日~8月7日まで聞かれた。2)アオバトの標準的な鳴き声は句1~句10で構成されるソング(オアオ鳴き)であることが分かった。参考に鳴き声をカタカナ表示すると『オオゴアッゴ(句1)、オー(句2)、オー(句3)、オアオ(句4)、オアオ(句5)、アオアーオ(句6)、オーアー(句7)、アーオアオ(句8)、オアオ(句9)、オー(句10)』という鳴き声に聞こえる。3)野外アオバトの全鳴き声の句1~句10の全鳴き声の周波数範囲(ソング内最低周波数最小値~ソング内最高周波数最大値)617Hz~1242Hz。平均値は714Hz~1066Hzであった。4)ソング内最低周波数に該当する句は、句2で全体の96.7%が句2に集中している。5)ソング内最高周波数に該当する句は、句6が全体の61.1%、句8が22.2%で合わせると83.3%を占めてほぼこの二つの句に集中している。6)ソング内最低周波数が上昇するとソング内最高周波数も上昇するという相関関係にあり平均値ではソング内最低周波数713Hzに対してソング内最高周波数は1072Hzで周波数上昇幅は359Hzであった。7)全鳴き声の句1~句10までの各句長さの範囲は0.38~3.42秒。平均値は0.88~2.38秒であった。8)各ソング内長さの最小値に該当する句は、句5が32.2%、句9が35.6%、句10が22.2%でこの3つで90.0%を占めている。該当する句の長さの範囲は0.38~1.07秒。9)各ソング内長さの最大値に該当する句は、句1が36.7%、句7が45.6%の2つで82.3%を占めている。該当する句の長さの範囲は1.76~3.42秒。10)全鳴き声のソング長さの範囲は18.29~25.39秒。平均値は22.33±1.42秒(SD)であった。11)保護アオバトの各句最高周波数も行徳12オスの句10の1ヶ所を除いてすべて野外アオバトの鳴き声の周波数範囲内にあった。12)保護アオバトの各句の長さ(時間)も野外アオバトの鳴き声の長さの範囲内にあった。13)保護アオバトの鳴き声は個体ごとに声紋の形が違うことが分かった。14)各句最高周波数の野外アオバト全数各句の標準偏差と保護アオバト各句の標準偏差の平均値を比較すると野外アオバト全数の各句は1.9~3.9倍バラツキが大きい。15)ソング長さの野外アオバト全数標準偏差と保護アオバト標準偏差の平均値を比較すると野外アオバト全数ソング長さは3.5倍バラツキが大きい。16)保護アオバト3個体は年を経ても鳴き声の最高周波数や長さの計測値のバラツキは小さく、声紋の形状変化においても大きな経年変化はなかった。17)ソング長さと句2の最高周波数の組み合わせで作成された散布図から、ソング長さと句2の最高周波数の最大値-最小値の幅(分布の範囲)の各最大値を利用して作成された分散範囲枠を当てはめると同一個体をおまかにクラス分けをすることが出来る。18)個体間の差異があること、個体間の差異よりも個体内の差異が小さいこと、個体の鳴き声は年を経ても大きくは変化しないことからアオバトの鳴き声を個体識別に使用することが可能である。
著者
加藤 浩 神宮司 誠也 岩本 幸英 新小田 幸一 吉村 理
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.426-432, 2004-12-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4

本研究の目的は股関節疾患患者の歩行時における骨盤の動揺性について,中殿筋の動的EMG周波数特性(MPFR),筋組織形態,最大外転筋力からその関連性を検討することである。手術治療目的で入院した股関節疾患患者13症例と健常者10例を対象とした。手術直前に等尺性の最大外転筋力の計測,次に中殿筋筋腹部に電極,上前腸骨棘に反射マーカーをそれぞれ貼付し,10 m自由歩行を行わせた時の表面筋電図計測(wavelet周波数解析)と,三次元動作解析装置を用いた骨盤傾斜角,骨盤回旋角,骨盤側方移動距離の計測を行った。手術中に中殿筋筋生検を行いATPase染色による筋線維タイプの分類を行った。さらに画像解析ソフトによりtype I,type II線維の筋線維径の計測を行った。結果,MPFRとtype II筋線維径,日整会歩行能力点数の間には正の相関関係が認められた。骨盤傾斜角,骨盤回旋角は健常群と比較して有意に正常から逸脱していた。重回帰分析の結果,前額面での骨盤傾斜角に関して,量的側面から外転筋力,質的側面からMPFRがその規定因子として重要であることが示され,MPFRは前額面での正常からの逸脱をより強く反映するパラメータであることが示された。
著者
坂本 望 大谷 拓哉 新小田 幸一 前島 洋 吉村 理 飛松 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.45-51, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
24

認知症高齢者の易転倒が認知機能の低下によるものか,運動機能低下によるものか明らかにするために,認知症高齢者の外乱に対する反応を調べた。対象は認知症を有する高齢者(認知症群)10名と認知症を有さない高齢者(対照群)7名であった。外乱は移動速度100mm/s,移動距離50mmの床面の前方向への水平移動とした。この外乱を予告なしに5回加えた時の,足圧中心と前脛骨筋,大腿直筋の筋電図のアナログ信号を2000Hzでサンプリングし,A/D変換を行った。足圧中心データから足圧中心移動距離,足圧中心応答時間,筋電図データから各筋の潜時,潜時から500ms間(0-500ms間),及びその後の500ms間(500-1000ms間)における各筋の%筋電図積分値を算出した。足圧中心移動距離,500-1000ms間の前脛骨筋%筋電図積分値において,認知症群は対照群と比較し,有意に小さい値を示した。一方,足圧中心応答時間,各筋の潜時,0-500ms間における前脛骨筋,大腿直筋,500-1000ms間における大腿直筋の%筋電図積分値において2群間に有意差は認められなかった。これらの結果から,認知症群は対照群と比較し,外乱に対する反応への遅延を引き起こしていないことが明らかとなった。しかし,足圧中心を移動させず,少ない前脛骨筋の活動量で立位保持を行っていた。
著者
吉村 理 前島 洋 小林 隆司 峯松 亮 佐々木 久登 田中 幸子 金村 尚彦 白濱 勲二 上田 健人 上田 千絵 渡辺 誠 矢田 かおり 宮本 英高 森山 英樹 加藤 浩 河元 岩男
出版者
広島大学大学院保健学研究科
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.73-77, 2001

頚髄損傷の評価では,頚髄の損傷の程度と損傷高位が重要である.米国脊髄損傷協会は,脊髄損傷の障害の評価法を発表し,脊髄損傷の神経学的および機能的分類のための国際基準として現在国際的に使用されている.しかし可能性に挑戦するリハビリテーションとしては,より詳細な高位分類が必要である.Zancolli分類は頚髄損傷四肢麻痺の上肢機能を細かく分類し,リハビリテーションからみても車椅子ADLが自立する可能性のあるC6を細かく分けているのは有用である.しかしマット上基本動作,移乗・移動などの動作が自立するか否かの判断に重要な肩甲帯筋群の評価がない.従来肘伸展筋である上腕三頭筋はC7髄節筋であるが,Zancolli分類ではC6髄節残存群のサブグループとしているのは混乱をまねく.そこでZancolli分類を改良し,損傷高位別の機能到達目標を決定するための評価表を作成し,ADLが自立する可能性について検討した.改良Zancolli分類でみるとC6BⅡが車椅子ADL自立の境界レベルである.
著者
金村 尚彦 今北 英高 白濱 勲二 森山 英樹 坂 ゆかり 新小田 幸一 木藤 伸宏 吉村 理
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A0521, 2005

【目的】 <BR>我々が行った先行研究では,荷重除去を行った後に,長期に重力下でラットを自由飼育しても,一度変性した機械受容器は正常な受容器までに回復しないのではないかという結果を得た.本研究では,受容器の変性を防止することはできるのかという観点から,荷重運動による影響を比較検討した.<BR><BR>【方法】 <BR>10週齢のWistar系雄性ラット30匹を実験に供した. 4週間懸垂中のラットに対し,時間は1日に1時間,頻度は週5日懸垂を除去し,ケージ内で自由飼育した群を運動群(EXC4W群),その対照群は自由飼育群,4週間飼育した群(CON4W群),4週間懸垂のみを行った群(SUS4W群)を各々10匹とした.懸垂の方法はMoreyの変法で行った.<BR> 飼育期間が終了した後,ラットにペントバルビタールナトリウムを腹腔内投与し,脱血により安楽死させた.靱帯はZimnyらのGairns塩化金染色変法に従って染色を行った.組織標本は光学顕微鏡にて観察し,機械受容器の種類とその数について検討した.<BR>受容器の総数(靭帯体積比)については,一元配置分散分析,多重比較はFisher's PLSD法,定型受容器と非定型受容器の割合については,χ<SUP>2</SUP>検定および多重比較Ryan法を用いた.有意水準は5%以下とした. <BR> この研究は,広島大学医学部附属動物実験施設倫理委員会の承認のもとに行った.<BR><BR>【結果】 <BR>すべての群において,パチニ小体,ルフィニ終末,ゴルジ様受容器,自由神経終末の4タイプの神経終末を認めた.SUS4W群,EXC4W群では,定型受容器 以外に非定型受容器(パチニ小体,ルフィニ終末)を観察した.総数については,CON4W群に比べSUS4W群,EXC4W群に比べSUS4W群(p<0.01)が有意に減少していた.CON4W群とEXC4W群においては有意な差を認めなかった.定型受容器では, CON4W群よりSUS4W群,EXC4W群よりSUS4W群(p<0.01)において有意に減少していた.非定型受容器では, CON4W群よりSUS4W群,EXC4W群よりSUS4W群,CON4W群よりEXC4W群(p<0.01)が有意に増加していた.<BR><BR>【考察】 <BR>長期の荷重除去において機械受容器は,形態学において正常な個数までは回復せず,回復しても変性した受容器の増加を認めたが,荷重運動を行うことにより,受容器の数の減少を防止し非定型受容器の増加を抑制することが可能であるのではないかと考えられた.しかし運動群においても,非定型受容器が観察されていることから,受容器の変性を防止するには靭帯へのより適切な力学的刺激が必要であると考えられる.廃用性筋萎縮の改善だけではなく,機械受容器の変性の防止を考慮した神経・筋協調システムを考慮した運動療法の必要性が実感される.
著者
加藤 浩 神宮司 誠也 高杉 紳一郎 岩本 幸英 吉村 理 新小田 幸一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.178-184, 2002
参考文献数
24
被引用文献数
6

本研究の目的は,股関節疾患患者の中殿筋を対象に,従来の静的表面筋電図周波数解析に加え,新たに歩行時の動的表面筋電図周波数解析を行い,その結果を筋組織学的レベルから検証することである。当院で手術を受けた股関節疾患患者11症例を対象とした。手術直前に100・50%MVCにおける等尺性股関節外転運動を行わせ,中殿筋筋腹部を電極部位とした静的な表面筋電図測定を行った。又,10m自由歩行を行わせ,動的な表面筋電図測定を行った。そして,wavelet変換を用いた静的・動的表面筋電図周波数解析を行った。手術中に中殿筋筋生検を行いATPase染色による筋線維のタイプ分類(typeI及びtypeII)を行った。さらに画像解析ソフトによる筋線維横断面の形態計測を行った。50%MVC時のパワースペクトルとtypeII線維数の間には,正の相関が認められた。また,歩行時の立脚期初期のパワースペクトル変化は,typeII線維の線維径とtypeII線維横断面の総面積比率が関与していた。wavelet変換を用いた静的・動的周波数解析は,筋線維組成比やtypeII線維の萎縮といった組織学特徴を推測する有効な手段になりうるものと思われた。
著者
島津 篤 吉村 理湖 藤本 千晴 高橋 綾華
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究において、軸索伸長のガイダンス因子として知られていたセマフォリン(Semaphorin; Sema) 3Aは、歯髄組織内および歯槽骨において広く分布していることが判明した。また歯髄細胞自身がSema3Aとその受容体を発現し、その周辺に局在するマクロファージはSema3A受容体のみを発現することが明らかとなり、歯髄細胞が分泌したSema3Aは、自身に対してオートクライン的に、マクロファージに対してはSema3Aを介して直接的あるいは間接的に制御している可能性が明らかとなり、Sema3A発現細胞を制御することによって、マクロファージの作用を制御できる可能性が示唆された。
著者
坂本 望 大谷 拓哉 新小田 幸一 前島 洋 吉村 理 飛松 好子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.45-51, 2007-04-20
被引用文献数
1

認知症高齢者の易転倒が認知機能の低下によるものか,運動機能低下によるものか明らかにするために,認知症高齢者の外乱に対する反応を調べた。対象は認知症を有する高齢者(認知症群)10名と認知症を有さない高齢者(対照群)7名であった。外乱は移動速度100mm/s,移動距離50mmの床面の前方向への水平移動とした。この外乱を予告なしに5回加えた時の,足圧中心と前脛骨筋,大腿直筋の筋電図のアナログ信号を2000Hzでサンプリングし,A/D変換を行った。足圧中心データから足圧中心移動距離,足圧中心応答時間,筋電図データから各筋の潜時,潜時から500ms間(O-500ms間),及びその後の500ms間(500-1000ms間)における各筋の%筋電図積分値を算出した。足圧中心移動距離,500-1000ms間の前脛骨筋%筋電図積分値において,認知症群は対照群と比較し,有意に小さい値を示した。一方,足圧中心応答時間,各筋の潜時,0-500ms間における前脛骨筋,大腿直筋,500-1000ms間における大腿直筋の%筋電図積分値において2群間に有意差は認められなかった。これらの結果から,認知症群は対照群と比較し,外乱に対する反応への遅延を引き起こしていないことが明らかとなった。しかし,足圧中心を移動させず,少ない前脛骨筋の活動量で立位保持を行っていた。