著者
山川 路代 JIVACATE Therdchai 藤井 一幸 飛松 好子
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.281-290, 2008

<b>目的</b><br>&nbsp;開発途上国では感染症など緊急性の高い疾患ばかりが注目され、その対応に追われているため、リハビリテーションを積極的に展開するまでには至っておらず、障害者がリハビリテーションを受けにくい現状にある。リハビリテーションのアプローチのうち、アウトリーチ型は都市部の施設で働くリハビリテーション専門職が施設から出向いて障害者の家を訪問したり、設備のない村を巡回してサービスを提供するものであり、医療基盤の乏しい国や地域では有効な方法の一つとされる。タイでは足部切断を含めて下肢切断者は約 5、6万人おり、障害者全体の 8%を占めている。義足製作は病院や医療施設のワークショップで主に行われているが、ワークショップやそこに勤務するテクニシャンの数が少ないため、国内では幅広く義足を提供するために、アウトリーチ型アプローチであるモバイルユニットが実施されている。そこで、義足提供モバイルユニットのフィールド調査により現状把握を行い、その活動の有効性について検討することを目的とした。<br><b>方法</b><br>&nbsp;2006年 10月、タイ北部の都市チェンライで開催されたタイ義肢財団による義足提供モバイルユニットに同行し、活動の参与観察を行った。また、活動に参加したスタッフから財団の概要や活動内容、参加スタッフ数やその所属などについてヒアリングを実施した。参加した切断患者の受付台帳からは職業や切断原因、製作する義足の種類、義足使用状況などに関する情報を入手した。<br><b>結果</b><br>&nbsp;調査した義足提供モバイルユニットは、医師やテクニシャンを含む総勢 75人のスタッフが現地に赴き、義足製作機材を全て現地に持ち込んで実施された大規模な活動だった。活動中にテクニシャン 54人が製作した義足総数は製作期間 4日間で 177人分 204本だった。参加した切断患者に農民など安定収入のない者や無職者が 8割、地雷を切断原因とする者が 2割含まれていた。また、全体の 3割が義足を初めて製作し、その 2割は切断してから義足を入手するまでに 6年以上を要していた。この結果、義足が地方の貧しい切断患者に提供されていることが分かった。また、テクニシャンはタイ国内各地から集結し、都市部の専門家から義足製作技術を学んでいた。<br><b>結論</b><br>&nbsp;義足提供モバイルユニットはタイの現状を考慮し、地方の技術者を養成し、切断患者に義足を幅広く提供するために有効なアプローチであると思われた。
著者
坂本 望 大谷 拓哉 新小田 幸一 前島 洋 吉村 理 飛松 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.45-51, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
24

認知症高齢者の易転倒が認知機能の低下によるものか,運動機能低下によるものか明らかにするために,認知症高齢者の外乱に対する反応を調べた。対象は認知症を有する高齢者(認知症群)10名と認知症を有さない高齢者(対照群)7名であった。外乱は移動速度100mm/s,移動距離50mmの床面の前方向への水平移動とした。この外乱を予告なしに5回加えた時の,足圧中心と前脛骨筋,大腿直筋の筋電図のアナログ信号を2000Hzでサンプリングし,A/D変換を行った。足圧中心データから足圧中心移動距離,足圧中心応答時間,筋電図データから各筋の潜時,潜時から500ms間(0-500ms間),及びその後の500ms間(500-1000ms間)における各筋の%筋電図積分値を算出した。足圧中心移動距離,500-1000ms間の前脛骨筋%筋電図積分値において,認知症群は対照群と比較し,有意に小さい値を示した。一方,足圧中心応答時間,各筋の潜時,0-500ms間における前脛骨筋,大腿直筋,500-1000ms間における大腿直筋の%筋電図積分値において2群間に有意差は認められなかった。これらの結果から,認知症群は対照群と比較し,外乱に対する反応への遅延を引き起こしていないことが明らかとなった。しかし,足圧中心を移動させず,少ない前脛骨筋の活動量で立位保持を行っていた。
著者
中村 隆 山﨑 伸也 中川 雅樹 田中 亮造 高橋 剛治 飛松 好子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.194-197, 2016-07-01 (Released:2017-07-15)
参考文献数
7

四肢切断者のリハビリテーションと義肢の適応に関する症例報告である.57歳,男性.電撃性紫斑病による四肢末梢の虚血性壊死により,両前腕,両下腿の切断に至る.リハビリテーションでは移動の確保や義肢の自己装脱着といった課題が顕在化し,義肢の改良とデバイスの活用が必要であった.本症例は我々が経験した同疾病による3例目の症例であったが,過去2例と比較して訓練の遂行に問題はなく,両側能動義手(手先具 : フック)とライナーを使用した下腿義足の適応となった.皮膚状態に問題がなかったこと,両前腕切断と両下腿切断であったこと,先行2症例の経験を踏まえた適切な義肢を選択したことが,順調な結果に至った理由と考えられた.
著者
王 治文 張 〓 外里 冨佐江 飛松 好子 岩谷 力
出版者
東北文化学園大学
雑誌
リハビリテーション科学 : 東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科紀要 (ISSN:13497197)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-22, 2007-03

社会的不利は障害を受けた個人が従来の役割を果すことに制限を受けることと考えられる.社会的不利の測定が重要であるにも関わらず,台湾では信頼性と妥当性が確認された尺度はない.この研究の目的は広く用いられる社会的不利の尺度Craig Handicap Assessment and Reporting Technique-Short Form (CHART-SF)の信頼性を繰り返してストにより検証することである.我々はCHARTの原作者の許可を得,CHART-SFとその採点法を中国語に翻訳し逆翻訳と確認作業を行った.信頼性の検証は再テスト法を用い,21名の脊髄損傷者に電話インタビューで行われた.分析はピアソンの積率相関係数と対応のあるt検定を使用した.結果では,社会統合領域以外CHART-SFのすべての領域において1回目と2回目のテスト間の相関係数は0.80以上であり,すべての項目回答において有意な相関があり有意な差はなかった.この結果からCHART-SF中国語版は社会的不利を測定するための信頼できる尺度であることを検証した.
著者
飛松 好子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.60-68, 2000-01-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
8
著者
坂本 望 大谷 拓哉 新小田 幸一 前島 洋 吉村 理 飛松 好子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.45-51, 2007-04-20
被引用文献数
1

認知症高齢者の易転倒が認知機能の低下によるものか,運動機能低下によるものか明らかにするために,認知症高齢者の外乱に対する反応を調べた。対象は認知症を有する高齢者(認知症群)10名と認知症を有さない高齢者(対照群)7名であった。外乱は移動速度100mm/s,移動距離50mmの床面の前方向への水平移動とした。この外乱を予告なしに5回加えた時の,足圧中心と前脛骨筋,大腿直筋の筋電図のアナログ信号を2000Hzでサンプリングし,A/D変換を行った。足圧中心データから足圧中心移動距離,足圧中心応答時間,筋電図データから各筋の潜時,潜時から500ms間(O-500ms間),及びその後の500ms間(500-1000ms間)における各筋の%筋電図積分値を算出した。足圧中心移動距離,500-1000ms間の前脛骨筋%筋電図積分値において,認知症群は対照群と比較し,有意に小さい値を示した。一方,足圧中心応答時間,各筋の潜時,0-500ms間における前脛骨筋,大腿直筋,500-1000ms間における大腿直筋の%筋電図積分値において2群間に有意差は認められなかった。これらの結果から,認知症群は対照群と比較し,外乱に対する反応への遅延を引き起こしていないことが明らかとなった。しかし,足圧中心を移動させず,少ない前脛骨筋の活動量で立位保持を行っていた。