著者
森山 英樹 増子 潤 金村 尚彦 木藤 伸宏 小澤 淳也 今北 英高 高栁 清美 伊藤 俊一 磯崎 弘司 出家 正隆
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-9, 2011-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
63
被引用文献数
5

【目的】本研究の目的は,理学療法分野での運動器疾患ならびに症状を対象としたストレッチング単独の有用性や効果を検証することである。【方法】関連する論文を文献データベースにて検索した。収集した論文の質的評価を行い,メタアナリシスあるいは効果量か95%信頼区間により検討した。【結果】研究選択の適格基準に合致した臨床試験25編が抽出された。足関節背屈制限,肩関節周囲炎,腰痛,変形性膝関節症,ハムストリングス損傷,足底筋膜炎,頸部痛,線維筋痛症に対するストレッチングの有効性が示され,膝関節屈曲拘縮と脳卒中後の上肢障害の改善効果は見出せなかった。【結論】現時点での運動器障害に対するストレッチングの適応のエビデンスを提供した。一方,本結果では理学療法分野でストレッチングの対象となる機能障害が十分に網羅されていない。ストレッチングは普遍的治療であるからこそ,その有用性や効果を今後実証する必要がある。
著者
森山 英樹 増子 潤 金村 尚彦 木藤 伸宏 小澤 淳也 今北 英高 高柳 清美 伊藤 俊一 磯崎 弘司 出家 正隆
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-9, 2011-02-20
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,理学療法分野での運動器疾患ならびに症状を対象としたストレッチング単独の有用性や効果を検証することである。【方法】関連する論文を文献データベースにて検索した。収集した論文の質的評価を行い,メタアナリシスあるいは効果量か95%信頼区間により検討した。【結果】研究選択の適格基準に合致した臨床試験25編が抽出された。足関節背屈制限,肩関節周囲炎,腰痛,変形性膝関節症,ハムストリングス損傷,足底筋膜炎,頸部痛,線維筋痛症に対するストレッチングの有効性が示され,膝関節屈曲拘縮と脳卒中後の上肢障害の改善効果は見出せなかった。【結論】現時点での運動器障害に対するストレッチングの適応のエビデンスを提供した。一方,本結果では理学療法分野でストレッチングの対象となる機能障害が十分に網羅されていない。ストレッチングは普遍的治療であるからこそ,その有用性や効果を今後実証する必要がある。
著者
高位 篤史 吉田 安奈 山崎 文香 河田 真之介 西川 彰 今北 英高
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab0457, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 呼吸運動は胸腔の拡大運動によって行われており、中でも主要な呼吸筋として横隔膜が挙げられる。横隔膜は左右の横隔神経によってそれぞれ支配され、吸息運動における主動作筋として働く。また、安静時1回換気量の約70%を横隔膜が担うとされている。さらに、片側横隔神経切除により対側横隔膜の筋活動が増加すると言われている。そこで、本研究では横隔膜を支配している横隔神経の片側および両側を切除することで、横隔膜筋活動と呼吸機能との関係についてより詳細に把握することを目的とした。【方法】 10週齢のWistar系雄ラット8匹を使用した。ケタラールおよびセラクタールの混合液を腹腔内投与にて麻酔した後、頚部腹側にパルスオキシメータ(プライムテック社製)を装着し、末梢血酸素飽和度(SpO2)を測定した。また、頚部腹側を切開した後、気道挿管したシリコンチューブおよび気流抵抗管を差圧トランデューサー、コントロールボックス(日本光電社製)に接続し、呼吸流速を測定した。測定した呼吸流速波形から、画像解析ソフトを用いて1回換気量、平均呼吸流速、1回換気時間を算出した。また、左右両側の横隔膜に直径0.03mmのワイヤー電極を装着し、TRIAS筋電計(バイオメトリクス社製)を用いて横隔膜の筋電図を測定した。測定は、安静時、片側横隔神経切除時、両側横隔神経切除時について実施した。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は畿央大学動物実験倫理委員会の承認を得て、畿央大学動物実験管理規定に従い実施した(承認番号22-1-I-220421)。【結果】 1回換気量は、安静時に比べ片側神経切除で約15%、両側神経切除で約30%の有意な減少が認められた。平均呼吸流速は、吸気では安静時に比べ片側神経切除後20%低下、両側神経切除後55%低下と有意な差が認められた。呼気では安静時に比べ片側神経切除後15%低下、両側神経切除後40%低下と有意な差が認められたが、吸気流速の方で低化率が大きかった。1回換気時間は、吸気では安静時に比べ片側神経切除で約20%、両側神経切除で約60%の増加が認められた。呼気では安静時に比べ両側神経切除で約30%の増加が認められた。また、呼吸流速波形は両側神経切除によって波形の平低化が観察された。片側横隔神経切除後における非切除側横隔膜の筋活動は、安静時に比べ約40%増大した。末梢血酸素飽和度(SpO2)は、安静時に比べ片側神経切除で約4%低下、両側神経切除で約9%低下と低下傾向がみられたが、有意な差は認められなかった。【考察】 横隔膜は左右の横隔神経によって支配されることから、片側横隔神経を切除した結果、1回換気量や吸気時の呼吸流速は低下し、それに伴い換気時間は増加した。さらに、非切除側の横隔膜においては筋活動量が増加した。以上のことから、片側横隔膜の機能が消失するともう一方の横隔膜で大きく代償することにより、換気量の大幅な低下を抑えることができると考えられる。両側の横隔神経を切除し、横隔膜の機能を完全に停止させた結果、1回換気量は大きく低下し、末梢血酸素飽和度は約9%低下した。このことは、生命を維持させるために肋間筋等の呼吸補助筋が強く活動したことによるものと考えられるが、横隔膜の機能を代償するほどの能力はなく、すべての測定項目において低換気の状態を示した。また、両側横隔神経切除により呼吸流速波形において平低化が観察され、横隔膜が呼吸活動における速度の変化に大きく関与していることが示唆された。このことから、横隔膜の障害によって、特に運動時など、十分な換気が必要となる際に努力性呼吸に対応することができなくなり、種々の身体活動における呼吸適応という側面でも重要な役割を担っているものと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 理学療法士が呼吸分野に関わることは少なくなく、呼吸器疾患に限らず開胸・開腹術前後の呼吸理学療法など、理学療法としての重要性は広範囲にわたる。本研究は、呼吸活動に非常に大きく貢献している横隔膜について、その役割を基礎的な側面からより明確にするものである。今後、横隔膜の機能的知見についてさらに理解を深めるとともに、呼吸理学療法における治療法や運動指導について考察する際の一助となると考える。
著者
渡邉 誠 金村 尚彦 今北 英高 森山 英樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.675-678, 2005-07-10

はじめに 末梢神経障害に対するリハビリテーションは,末梢神経損傷後の再生時にmisdirectionの問題が存在するために,知覚再教育としての知覚のリハビリテーションが必要となる. 末梢神経損傷後の知覚再教育は30 cpsと256 cps音叉の振動刺激および動的触覚のある部分が手掌まで回復してきた段階で開始するのが一般的である.Dellon1)は,末梢神経損傷後の知覚回復に関して,痛覚,動的触覚,静的触覚,振動覚の順に回復が認められたと報告している.この初期の回復段階,30 cpsや動的触覚は,皮膚機械受容器の一つであるマイスナー小体によるものとされる.マイスナー小体が初期に回復する理由として,複数の神経線維により神経支配されるため,神経再支配が起こりやすいと考えられている.機械受容器に関しては,立川ら2)は,日本ザルの前肢を用いた両側固有指神経切除後のマイスナー小体の形態的変化について,Navarroら3)は,坐骨神経の挫滅または切断後1~7週でのマウスfoot padへの感覚と神経再生の時間的順序を報告している.知覚障害に対するリハビリテーションの観点から,末梢神経と機械受容器の変性および再生過程の解明が進みつつある. 本研究の目的は,機械受容器の一つであるマイスナー小体に焦点を当て,ラット前肢の神経切断直後からのマイスナー小体の変性過程を形態および組織学的に検討することにある.とくに,このマイスナー小体の層板細胞より産生される非特異的コリンエステラーゼの分布域を調べることで,神経切断によるマイスナー小体の酵素活性領域の経時的変化を検討した.
著者
廻角 侑弥 久保 峰鳴 福本 貴彦 今北 英高 藤井 唯誌 稲垣 有佐 田中 康仁
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.779-783, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
20

〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行能力と自己効力感の関連性を検討することとした.〔対象と方法〕対象は膝OA患者67名とした.測定項目は,10 m歩行速度,Timed up and go test(TUG),自己効力感,疼痛,膝関節伸展筋力,足趾把持力,痛みの破局的思考とし,関係性を分析した.〔結果〕10 m歩行速度とTUGはそれぞれ,自己効力感,膝関節伸展筋力,足趾把持力,痛みの破局的思考との間に有意な相関関係を認めた.また,10 m歩行速度とTUGに影響する因子として,自己効力感と膝関節伸展筋力が抽出された.〔結語〕膝OA患者の歩行能力には歩行に対する自己効力感が影響することが示唆された.
著者
廻角 侑弥 久保 峰鳴 幸田 仁志 福本 貴彦 今北 英高 藤井 唯誌 稲垣 有佐 田中 康仁
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.61-65, 2020-07-22 (Released:2020-08-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1

[目的]人工膝関節全置換術後患者の杖歩行が自立するまでの日数(歩行自立日数)に影響を及ぼす要因を術前項目より検討した。[対象]片側の人工膝関節全置換術を施行した99名とした。[方法]測定項目は歩行自立日数,自己効力感,痛みの破局的思考,安静時痛,歩行時痛,膝関節屈曲可動域および伸展可動域,等尺性膝伸展筋力,歩行速度とした。統計解析はピアソンの相関係数を用いて歩行自立日数との関係性を分析し,また歩行自立日数を目的変数,他項目を説明変数とした重回帰分析を行った。[結果]歩行自立日数は,自己効力感(r=-0.40),痛みの破局的思考(r=0.27),等尺性膝伸展筋力(r =-0.24),歩行速度(r=-0.25)との間に有意な相関関係を認めた。重回帰分析の結果,歩行自立日数に影響を及ぼす要因として自己効力感のみが抽出された。[結語]人工膝関節全置換術後の杖歩行の自立には筋力や歩行速度だけでなく,自己効力感が影響すると示唆された。
著者
粕渕 賢志 福本 貴彦 藤田 浩之 前岡 浩 今北 英高
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CaOI1019, 2011

【目的】<BR> 近年,手根中央関節の動きは,常にダーツスロー・モーション方向であると解明されてきた.ダーツスロー・モーションとは橈背屈から掌尺屈方向への動きである.日常生活では手関節の組み合わされた動きが必要となり,ダーツスロー・モーションで日常生活にあまり不自由をきたさないといわれている.また橈骨遠位端骨折後では,日常生活動作能力と関節可動域(以下 ROM)には関連がなく,握力のみ関連があるとの報告が多い.しかし,今までの報告ではダーツスロー・モーション面のROMを評価しているものはない.従って本研究の目的は,橈骨遠位端骨折後患者のダーツスロー・モーション面のROMが日常生活動作能力に関連があるかを調査することとした.<BR><BR>【方法】<BR> 対象は,当院通院中の橈骨遠位端骨折後患者15名(男性7名,女性8名).平均年齢62.4±16.0歳であった.評価項目は身体機能と日常生活動作能力を評価した.身体機能は患側の掌屈,背屈,橈屈,尺屈,回内,回外のROMと,ダーツスロー・モーションである橈背屈,掌尺屈のROMを自動運動,他動運動にて二回ずつ測定し平均値を求めた.ダーツスロー・モーション面ROMは専用のゴニオメーターを作成し測定した.今回作成したダーツスロー・モーション面用ゴニオメーターは検者内・間とも信頼性が0.90を越え,高い再現性が得られることを確認してから使用した.測定したROM結果より,掌背屈,橈尺屈,回内外,ダーツスロー・モーション面の全可動域を求めた.また各ROMの健側との比率を求めた.日常生活動作能力はDASH(The Disability of the Arm, Shoulder and Hand)スコアの日本手の外科学会版を用いて評価した.統計学的解析はDASHスコアと,各ROM,健患比の相関を求めた.各相関はPearson相関係数を求め,危険率を0.05未満で有意とした.<BR><BR>【説明と同意】<BR> 本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認(H21-15)を得て行った.被験者に対し研究の説明を行い,同意を得られた者のみデータを採用した.<BR><BR>【結果】<BR> DASHスコアと橈背屈ROMの自動運動(r = 0.596, p < 0.05),他動運動(r = 0.628, p < 0.05),自動運動の健患比(r = 0.604, p < 0.05),他動運動の健患比(r = 0.756, p < 0.01)に相関がみられた.またDASHスコアとダーツスロー・モーション面ROMの自動運動(r = 0.628, p < 0.05),他動運動(r = 0.648, p < 0.01),自動運動の健患比(r = 0.522, p < 0.05),他動運動の健患比(r=0.671,p<0.01)に相関がみられた.その他の項目とは相関は認められなかった.<BR><BR>【考察】<BR> DASHスコアと橈背屈ROM,ダーツスロー・モーション面ROMに相関が認められた.掌屈,背屈,橈屈,尺屈,回内,回外のROMと,掌背屈,橈尺屈,回内外のROMがDASHスコアと相関が認められなかったことは,先行研究と同様の結果であった.今回ダーツスロー・モーション面ROMと相関が得られたことから,橈骨遠位端骨折後ではダーツスロー・モーションが日常生活に最も重要であり,特に橈背屈方向の動きが日常生活に影響を与えていると考えられる.またダーツスロー・モーション面のROMが大きいほどDASHスコアも高値であったことより,橈骨遠位端骨折後の回復過程をダーツスロー・モーション面ROMの評価をすることにより把握することができると考えられる.また手関節背屈40°~50°の角度からのダーツスロー・モーションは,橈骨手根関節の動きは少なくなり手根中央関節の運動のみとなる.よって橈骨遠位端骨折後のリハビリテーションの際に,ダーツスロー・モーションは骨折部にストレスをかけずに早期から手を動かすことができるかもしれないといわれている.これらのことからも橈骨遠位端骨折後には早期からダーツスロー・モーションのROM訓練を行うことが有意義な理学療法に繋がると考えられる.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 橈骨遠位端骨折では日常生活動作能力を向上させるには,ダーツスロー・モーション面ROMの改善が必要であるということが示された.またダーツスロー・モーションは理学療法において,治療,評価のどちらにも重要であると示唆された.
著者
金村 尚彦 今北 英高 白濱 勲二 森山 英樹 坂 ゆかり 新小田 幸一 木藤 伸宏 吉村 理
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A0521, 2005

【目的】 <BR>我々が行った先行研究では,荷重除去を行った後に,長期に重力下でラットを自由飼育しても,一度変性した機械受容器は正常な受容器までに回復しないのではないかという結果を得た.本研究では,受容器の変性を防止することはできるのかという観点から,荷重運動による影響を比較検討した.<BR><BR>【方法】 <BR>10週齢のWistar系雄性ラット30匹を実験に供した. 4週間懸垂中のラットに対し,時間は1日に1時間,頻度は週5日懸垂を除去し,ケージ内で自由飼育した群を運動群(EXC4W群),その対照群は自由飼育群,4週間飼育した群(CON4W群),4週間懸垂のみを行った群(SUS4W群)を各々10匹とした.懸垂の方法はMoreyの変法で行った.<BR> 飼育期間が終了した後,ラットにペントバルビタールナトリウムを腹腔内投与し,脱血により安楽死させた.靱帯はZimnyらのGairns塩化金染色変法に従って染色を行った.組織標本は光学顕微鏡にて観察し,機械受容器の種類とその数について検討した.<BR>受容器の総数(靭帯体積比)については,一元配置分散分析,多重比較はFisher's PLSD法,定型受容器と非定型受容器の割合については,χ<SUP>2</SUP>検定および多重比較Ryan法を用いた.有意水準は5%以下とした. <BR> この研究は,広島大学医学部附属動物実験施設倫理委員会の承認のもとに行った.<BR><BR>【結果】 <BR>すべての群において,パチニ小体,ルフィニ終末,ゴルジ様受容器,自由神経終末の4タイプの神経終末を認めた.SUS4W群,EXC4W群では,定型受容器 以外に非定型受容器(パチニ小体,ルフィニ終末)を観察した.総数については,CON4W群に比べSUS4W群,EXC4W群に比べSUS4W群(p<0.01)が有意に減少していた.CON4W群とEXC4W群においては有意な差を認めなかった.定型受容器では, CON4W群よりSUS4W群,EXC4W群よりSUS4W群(p<0.01)において有意に減少していた.非定型受容器では, CON4W群よりSUS4W群,EXC4W群よりSUS4W群,CON4W群よりEXC4W群(p<0.01)が有意に増加していた.<BR><BR>【考察】 <BR>長期の荷重除去において機械受容器は,形態学において正常な個数までは回復せず,回復しても変性した受容器の増加を認めたが,荷重運動を行うことにより,受容器の数の減少を防止し非定型受容器の増加を抑制することが可能であるのではないかと考えられた.しかし運動群においても,非定型受容器が観察されていることから,受容器の変性を防止するには靭帯へのより適切な力学的刺激が必要であると考えられる.廃用性筋萎縮の改善だけではなく,機械受容器の変性の防止を考慮した神経・筋協調システムを考慮した運動療法の必要性が実感される.
著者
熊澤 浩一 幸田 仁志 坂東 峰鳴 山野 宏章 梅山 和也 粕渕 賢志 福本 貴彦 今北 英高
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0536, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】フォワードランジ(以下,FL)とは,片脚を前方へ踏み出し,踏み出した脚の膝と股関節を曲げることで,姿勢を変えて体重を前脚にかける運動である。FLによって下肢の筋力,柔軟性,バランスの総合的な評価とトレーニングを行うことができ,スポーツ選手から高齢者まで幅広く用いられる。臨床現場において,膝前十字靭帯損傷など下肢運動器疾患を有する人を対象にFLを行う際では,踏み出し時に加わる膝関節への負荷を考慮して,前後に脚を広げた状態を開始肢位として行う場合もある。しかしながら,FLに関する先行研究では踏み出しの有無による膝関節への負荷軽減効果については分析されていない。そこで,本研究の目的は,膝関節への機械的ストレスの指標とされる外部膝関節モーメントを用いて,FL時の踏み出しの有無が膝関節へ及ぼす影響を検討することとした。【方法】対象は,下肢に整形外科疾患の既往のない男性12名(年齢20.8±2.0歳,身長171.6±7.6cm,体重63.9±7.6kg)とした。測定には,三次元動作解析装置(Vicon社)と床反力計(AMTI社)を用いた。対象者は利き足(ボールを蹴る足)を前脚とした踏み出し有りと無しのFLを各3回ずつ実施した。その際,踏み出し及び前後開脚幅は棘果長の80%,足幅は上前腸骨間距離,前脚足尖方向は前方と規定した。踏み込みの速度を統一するためにメトロノームを用い,2秒で踏み込み,2秒で開始肢位に戻るよう指示した。また,FL時は可能な限り前脚に体重をかけ,前脚踵が床から離れない範囲で足尖方向に膝を屈曲させた。動作中の外部膝関節屈曲モーメントと外部膝関節内外反モーメントを体重で除して正規化し,3回計測した平均値のピーク値を解析対象とした。統計学的解析には,踏み出しの有無の違いによる各モーメントの差異について対応のあるt検定を用いた。なお,有意水準は5%とした。【結果】外部膝関節内外反モーメントは,全例内反モーメントを示した。踏み出し有りのFLでは,外部膝関節屈曲モーメント0.89±0.19Nm/kg,外部膝関節内反モーメント0.65±0.23Nm/kgであった。踏み出し無しのFLでは,外部膝関節屈曲モーメント0.75±0.19Nm/kg,外部膝関節内反モーメント0.65±0.13Nm/kgであった。踏み出し無しでのFLは踏み出し有りと比較して,外部膝関節屈曲モーメントが有意に減少しており(p<0.05),外部膝関節内反モーメントには有意な差がなかった(p=0.89)。【結論】踏み出し無しのFLは,踏み出し有りと比較して膝関節へ加わる外部膝関節屈曲モーメントを軽減できるが,外部膝関節内反モーメントは軽減されないことが示された。踏み出し有りのFLは,外部膝関節内反モーメントを増加させることなく,外部膝関節屈曲モーメントを加えることができる。臨床では,踏み出し無しのFLが一様に膝関節への機械的ストレスを軽減するものでは無いことを念頭におき,運動方法を選択する必要があろう。