- 著者
-
武田 俊平
松沢 大樹
山田 健嗣
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.5, pp.437-443, 1987-09-30 (Released:2009-11-24)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
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神経学的異常のない10歳から88歳までの男536人, 女529人に対し頭部CT検査を行ない頭蓋腔容積と脳脊髄液腔容積を測定し脳萎縮指数BAI (脳脊髄液腔容積/頭蓋腔容積×100%) を算出し脳萎縮の加齢性変化を調べた. BAIは男女共25-34歳群が最小でそれ以降加齢の進行と共に指数函数的に増加した: 男; logBAI=-0.260+0.0150×年齢, r=0.707, n=493, p<0.001; 女; logBAI=-0.434+0.0162×年齢, r=0.757, n=504, p<0.001. 従ってBAIは男では20.1年, 女では18.5年で倍加する事になる. 同様に神経学的に異常のない19歳から88歳までの男197人, 女238人に対しゼノン133吸入法を用いて局所脳血流量rISIを測定し加齢性変化を調べた. 女では60歳代から有意にrISIの低下が始まり80歳にいたるまで加齢の進行に伴い略々直線的に低下したのに対し, 男では50歳代からrISIが有意に低下し始め60歳代にいたるが, それ以降80歳代にいたるまでは有意の低下を示さなくなり一定の閾値の存在がうかがえた. そこで一定の閾値 (rISI) 以下の脳血流量を示す脳局所が脱落して萎縮すると仮定して, 各年代において萎縮した脳体積と一致するrISIの度数分布を計算して閾値となるrISIを算出した所, 50歳代から70歳代において男で約32, 女で約37と各々一定した値が得られた. 従ってrISIは全体として正規分布をしながら, 平均として加齢に伴い直線的に低下するとすると, 一定の閾値以下の脳血流量を示す脳組織は加齢に対し略々指数函数的に増加するので, 脳萎縮が指数函数的に進行する結果となる.