著者
窪田 和雄 松沢 大樹 藤原 竹彦 伊藤 健吾 渡辺 弘美 小野 修一 伊藤 正敏 山浦 玄嗣 滝田 公雄 佐々木 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.503-509, 1985-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
21

脳は老化に伴ない, 神経細胞を減じ, 体積が減少し, 脳室, 脳溝が拡大してゆく. 我々はこの過程をCTスキャンで定量的に解析し, 脳は加齢に伴ない著明に萎縮するだけでなく, 個人差が非常に大きくなることを明らかにしてきた. 今回脳萎縮の個人差を生ずる要因を明らかにするために, 喫煙が脳萎縮に及ぼす慢性効果について調べた.神経学的に, またCTスキャン上異常のない40歳から69歳までの喫煙者159人, 非喫煙者194人について, 脳萎縮を測定した. コンピューターを使用し, CT像を構成している画素を数え, 頭蓄内の脳実質の割合を求め, 更に若い健常者の脳に比べて何%萎縮したかを示す脳体積指数 (Brain Volume Index) を求めた. BVIは加齢に伴ない低下するだけでなく, 喫煙者において, 50歳~54歳, 55歳~59歳では危険率0.1%以下で, 65歳~69歳では危険率5%で非喫煙者よりも有意に低く, これらの年代では喫煙者の脳萎縮が非喫煙者よりも進んでいることを示した. また非喫煙者では男女差は見られなかった. 喫煙量に対する依存関係を50歳代男性で調べたところ, 喫煙者各群は非喫煙者よりも有意にBVIは低下し, 喫煙指数が多くなるにつれBVIは低下する傾向があったが, 喫煙者各群に有意差はなかった. また喫煙者では血清トリグリセライド (p<0.002) 及び収縮期血圧 (p<0.05) が非喫煙者よりも有意に高かった.脳血流が喫煙者では減少しているという我々の先の報告と合わせ, 喫煙は慢性的に動脈硬化を促進し, 動脈硬化や血圧の上昇その他の要因とともに脳血流を低下させ, 加齢に伴なう神経細胞の喪失を助長し, 脳萎縮を促進させると考えた.
著者
武田 俊平 松沢 大樹 山田 健嗣
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.437-443, 1987-09-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

神経学的異常のない10歳から88歳までの男536人, 女529人に対し頭部CT検査を行ない頭蓋腔容積と脳脊髄液腔容積を測定し脳萎縮指数BAI (脳脊髄液腔容積/頭蓋腔容積×100%) を算出し脳萎縮の加齢性変化を調べた. BAIは男女共25-34歳群が最小でそれ以降加齢の進行と共に指数函数的に増加した: 男; logBAI=-0.260+0.0150×年齢, r=0.707, n=493, p<0.001; 女; logBAI=-0.434+0.0162×年齢, r=0.757, n=504, p<0.001. 従ってBAIは男では20.1年, 女では18.5年で倍加する事になる. 同様に神経学的に異常のない19歳から88歳までの男197人, 女238人に対しゼノン133吸入法を用いて局所脳血流量rISIを測定し加齢性変化を調べた. 女では60歳代から有意にrISIの低下が始まり80歳にいたるまで加齢の進行に伴い略々直線的に低下したのに対し, 男では50歳代からrISIが有意に低下し始め60歳代にいたるが, それ以降80歳代にいたるまでは有意の低下を示さなくなり一定の閾値の存在がうかがえた. そこで一定の閾値 (rISI) 以下の脳血流量を示す脳局所が脱落して萎縮すると仮定して, 各年代において萎縮した脳体積と一致するrISIの度数分布を計算して閾値となるrISIを算出した所, 50歳代から70歳代において男で約32, 女で約37と各々一定した値が得られた. 従ってrISIは全体として正規分布をしながら, 平均として加齢に伴い直線的に低下するとすると, 一定の閾値以下の脳血流量を示す脳組織は加齢に対し略々指数函数的に増加するので, 脳萎縮が指数函数的に進行する結果となる.
著者
武田 俊平 川合 宏彰 松沢 大樹
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.497-503, 1986-09-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
16
被引用文献数
2

神経学的に異常のなかった男192名, 女196名の脳血流量と脳血管抵抗をXe-133吸入法に依り測定し, 加齢との関係を調べた. 脳血流量は2コンパートメントモデルに於ける速い成分 (F1) とイニシャルスロープインデックス (ISI) で表わした. F1, ISI共に男では40歳台, 女では60歳台から有意に低下が始まった. 女では年齢に比例してF1, ISIの低下が高齢に到るまで続いたのに対し, 男では50歳台までは年齢に比例して低下したが, 60歳台以降プラトーになり, F1で40ml/100g脳組織/分, ISIで35付近に閾値の存在が示唆された. 脳血管抵抗は男女共50歳台から有意に増加し始め, 高齢に到るまで一貫して年齢に比例して増加した.