- 著者
-
戸倉 和
比田井 洋史
平田 敦
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1998
レーザ光を水存在下で固体に照射すると固体表面で加熱されるばかりか,高温の水との反応や水が分解されて生じるラジカルと気体との反応が期待できる.本研究ではこのような反応を期待し,立方晶窒化ホウ素(cBN)の水熱加工を行なおうとするものである.そこで脱気した超純水,メタン,水素,酸素を溶存させ水,これにエキシマレーザ光(193nm),アルゴンイオンレーザ光,YAGレーザ光を照射して,ポリクロメータで活性種の発生状態を測定するとともに,写真により発光を観察した.その結果,水の構成元素ラジカルの生成を確認するとともに,メタンを溶存させた水では水面に膜が生成されることを見いだした.この膜の性質を調査し,粒径20nm程度の超微粒子から構成される網目構造の炭素膜であることがわかった.このことは炭素系超微粒子合成の道を開くものとして期待できる.これと平行して,大粒の単結晶cBNおよび窒化ケイ素に水中でエキシマレーザ光および可視光のアルゴンイオンレーザ光を照射した.窒化ケイ素では試料から離してエキシマレーザ光を照射しても表面にエッチング模様が現れた.これは上で述べた水の活性種によるものと考えられる.また,cBNにアルゴンイオンレーザを照射すると,アンモニアの発生が確認できるとともに,空気中での照射による形態とは異なる表面が得られた.これは高温で水との反応による化学作用と理解でき,水熱加工への展望が開けたものと理解できる.これら水雰囲気での一連の照射実験では飽和水蒸気中でのレーザ光照射も行った.エキシマレーザを飽和水蒸気圧下で照射した場合,照射容器であるアクリルが瞬時に曇ってしまった.これは生成された活性種によるアクリルとの化学反応が生じたものであり,レーザクリーニングへの知見を与えるものである.