著者
成田 真紀 福田 眞人 平井 勝利 氏原 暉男
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.59-64, 1998-09-30

本論文はケシ(Papaver spp.)の起源と伝播やその栽培や利用について精査し,また薬物の一つで法的には麻薬として扱われている阿片(あへん:けしの液汁が凝固したもの及びこれに加工を施したもの[医薬品として加工を施したものを除く]をいう)について論考したものである。原料となるケシの植物学的記載や日本への伝来・栽培の歴史的変遷についても言及し,更に阿片の医薬品あるいは薬物としての利用及び法的規制の歴史についても考察を試みた。本稿では(1)ケシの原産地と植物学的記載(2)阿片の医薬あるいは薬物としての特性に関する歴史的考察(3)日本でのケシ栽培と阿片の歴史という三項目を立て,今までのケシと阿片の起源と伝播に関する研究を取りまとめ,先行研究ではいまだ解明されていない日本の阿片について史実を明らかにすることを研究の目的としている。
著者
南 峰夫 豊田 美和子 井上 匡 根本 和洋 氏原 暉男
出版者
信州大学農学部
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-49, 1998 (Released:2011-03-05)

トウガラシ果実中の辛味成分であるカプサイシノイド含量の経時的変化を明らかにするために,C.annuumとC.frutescens-chinense complexの各2系統を供試し,開花後20日おきに果実を収穫し,カプサイシノイド含量を測定した。開花後20日目からカプサイシノイド3成分(capsaicin,dihydrocapsaicin,nordihydrocapsaicin)が検出され,含量の系統間差,種間差が認められた。登熟ステージ(開花後日数)により含量は大きく変化し,経時的変化のパターンには系統間差が認められた。したがって,カプサイシノイド含量の評価にあたっては,果実の登熟ステージのばらつきを考慮した果実サンプリング法が必要と考えられた。また,いずれの系統も果実の成熟期とは無関係に開花後40日目前後に最大含量を示したことから,カプサイシノイド含量の最大値を評価するためには,開花後40日目頃の果実を収穫,測定することが必要と結論した。カプサイシノイド3成分の組成比に系統間差がみられたが,登熟ステージによる変化は認められなかった。
著者
氏原 暉男 森本 昇司 小野 珠乙 南 峰夫 池橋 宏
出版者
信州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1998

ミャンマー東部の山岳国境地帯はケシの栽培地帯として有名で,アヘン生産の原料となるケシ栽培を根絶することが重要課題となっているが,十分な成果が上がっていない.これは現地の自然および社会的条件に合致したケシに代わる換金作物が導入,確立されなかったからである.ケシは現地農民の唯一の収入源であり,ケシと同等以上の収入が得れれる代替作物の開発普及が不可欠である.このような観点から,平成10年8月から9月にかけて約2週間にわたり,シャン州コーカン地域のケシ栽培地帯の拠点の一つであるターシェータン村を中心に農家の経営実態と農作物の栽培状況などを調査した.さらに具体的な換金作物,薬草あるいは動物資源などについて,視察と聞き取り調査を実施した.その結果,シャン州の平地部では中国の雑種イネ品種を導入した先進的な稲作が行われているのに対して,ケシ栽培地帯の山岳地域では焼き畑が行われ,主にトウモロコシが栽培されていた.明らかに地域格差が認められ,ケシ栽培に頼らざるを得ない状況が認められた.そこで具体的に収入源となる可能性が有る代替作物あるいは動物製品について調査した.山岳地域から市場までの道路事情が悪く,特に雨期には通行止めもしばしばである.従って,果樹,野菜など保存がきかず,重量のある生ものは除外された.少量で価格が高く,保存がきくものとして薬草が考えられるが,聞き取り調査では有望な薬草は見つからなかった.一方,この地域は有名な茶の産地で,半発酵のコーカン茶は調製法などの工夫,向上により換金作物として可能性がある.また,山岳地帯の環境に適した作物としてソバについて日本産品種を試作した結果,十分な収量と品質が認められた.現地農民はソバの栽培経験を持っており,日本の需要家との価格交渉,およびヤンゴンまでの輸送法を確保できれば代替作物として可能性があることが明らかとなった.
著者
南 峰夫 氏原 暉男 根本 和洋
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.37-43, 1998-09

ネパールにおいて、1984年以来、植物遺伝資源の収集と聞き取り調査を行ってきた。作物別の収集点数とその標高分布から、ネパールの農業における新大陸起源の作物の占める位置について考察した。新大陸作物は栽培の歴史が短いにもかかわらず、ネパールの農業において重要な位置を占めていた。トウモロコシはイネに次ぐ栽培面積と生産量を持つ丘陵地帯の最も重要な穀類となっており、多くの在来系統と、多様な作付体系が成立していた。バレイショはイモ類生産量の70%を占め、他作物の栽培が困難な標高3500m以上まで栽培されており、高地における重要な主食作物になっていた。さらにトウガラシはネパールの食生活に欠かせないものとなっている。これら収集した新大陸作物(トウモロコシ、インゲンマメ、アマランサス、トウガラシ)の在来系統の諸特性を栽培調査したところ、多様な変異が認められ、遺伝資源として有用であることを確認した。