- 著者
-
氏原 暉男
森本 昇司
小野 珠乙
南 峰夫
池橋 宏
- 出版者
- 信州大学
- 雑誌
- 国際学術研究
- 巻号頁・発行日
- 1998
ミャンマー東部の山岳国境地帯はケシの栽培地帯として有名で,アヘン生産の原料となるケシ栽培を根絶することが重要課題となっているが,十分な成果が上がっていない.これは現地の自然および社会的条件に合致したケシに代わる換金作物が導入,確立されなかったからである.ケシは現地農民の唯一の収入源であり,ケシと同等以上の収入が得れれる代替作物の開発普及が不可欠である.このような観点から,平成10年8月から9月にかけて約2週間にわたり,シャン州コーカン地域のケシ栽培地帯の拠点の一つであるターシェータン村を中心に農家の経営実態と農作物の栽培状況などを調査した.さらに具体的な換金作物,薬草あるいは動物資源などについて,視察と聞き取り調査を実施した.その結果,シャン州の平地部では中国の雑種イネ品種を導入した先進的な稲作が行われているのに対して,ケシ栽培地帯の山岳地域では焼き畑が行われ,主にトウモロコシが栽培されていた.明らかに地域格差が認められ,ケシ栽培に頼らざるを得ない状況が認められた.そこで具体的に収入源となる可能性が有る代替作物あるいは動物製品について調査した.山岳地域から市場までの道路事情が悪く,特に雨期には通行止めもしばしばである.従って,果樹,野菜など保存がきかず,重量のある生ものは除外された.少量で価格が高く,保存がきくものとして薬草が考えられるが,聞き取り調査では有望な薬草は見つからなかった.一方,この地域は有名な茶の産地で,半発酵のコーカン茶は調製法などの工夫,向上により換金作物として可能性がある.また,山岳地帯の環境に適した作物としてソバについて日本産品種を試作した結果,十分な収量と品質が認められた.現地農民はソバの栽培経験を持っており,日本の需要家との価格交渉,およびヤンゴンまでの輸送法を確保できれば代替作物として可能性があることが明らかとなった.